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イノベーションエコシステムとは?現状や目標を国内事例とともにわかりやすく解説

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産官学にわたる多様な組織が一体となって、新しい技術やイノベーションを生み出すサイクルを「イノベーションエコシステム」といいます。国内のみならず、海外企業との連携も含まれるイノベーションエコシステムは、海外に比べて国内ではまだまだ発展途上です。
この記事では、イノベーションエコシステムの日本の現状や、事例について詳しく解説します。

イノベーションエコシステムとは

イノベーションエコシステムとは、多様な組織が協働することで新たな付加価値を創出し、イノベーションを生み出すシステムを指します。

またエコシステムとは、本来「生態系」を意味する化学用語です。現代において、ITや経営の分野で「複数企業や人物が結びつくことで循環し、共創・共栄していくしくみ」という意味でも使用されるようになりました。

経済産業省では、日本が目指すべきイノベーションエコシステムとは、以下のように定義しています。

①事業会社とベンチャーによる価値共創によって新たな付加価値を創出。
②さらに、大学・国研の【知】が産学「融合」によってシームレスかつ迅速に市場へと繋がる。
③これらの結果、グローバルに通用するサービスを創出。その利益や人材を還流。
これらがシームレスに繋がり、自律的かつ連続的にイノベーションが生み出されるシステムのこと。

【引用】新たなイノベーションエコシステムの構築の実現に向けて

知識集約型社会に変遷し、デジタル化の中で市場変化スピードが益々増加する中で、従来のイノ ベーションモデルは機能不全となり日本企業のプレゼンスは低下しています。多くのイノベーションは情報・人材・資金・制度いくつかの組み合わせで実現します。

米国を中心に各国がスタートアップ企業を核に、新たなイノベーションエコシステムを構築しつつあります。

イノベーションエコシステムの現状

国内のイノベーションが起こりにくいことを背景として、以下のことが指摘されています。

  • 顧客ニーズ獲得のための市場変化への対応遅れ
  • 研究開発費用を収益につなげられていない
  • 企業の中長期的な研究開発への意識低下
  • ⼈材や資⾦の流動性が低い
  • グローバルネットワークからの孤⽴

1. 顧客ニーズ獲得のための市場変化への対応遅れ

グローバル化が進み、市場が成熟することによって顧客のニーズは多様化しています。さまざまな新製品が誕生していますが、IT化によって製品ごとに機能の差は少なくなり、製品単体の性能だけで価値を⽣み出すことは難しくなっています。

そのため国内企業は、新たな顧客ニーズを獲得するため、移り行く市場の変化の対応に追われています。

2. 研究開発費用を収益につなげられていない

国内企業は、⾃前主義からの脱却が懸念されており、研究開発投資が事業化や企業の収益へとつなげられていないのが現状です。課題解決には、事業の構想段階から、研究開発、市場獲得、開拓まで一気通貫のイノベーションエコシステムの構築が必要となります。

3. 企業の中長期的な研究開発への意識低下

⺠間企業において、商品化まで3〜5年を超える中⻑期の研究開発投資に対して、取り組む意識が低い傾向にあります。したがって、中長期の研究開発には、国が⽀援する必要が⾼まっています。

4. ⼈材や資⾦の流動性が低い

日本の研究における⼈材と資金の流動性は、米国と比較して⾮常に低くなっています。人材が、民間企業、自治体、大学などの組織を超えて活躍することが求められています。

5. グローバルネットワークからの孤⽴

日本は、⼈材や資⾦等の⾯において、グローバルネットワークから孤⽴しているという恐れがあります。

イノベーションエコシステムが必要な理由

日本に、イノベーションエコシステムが必要な理由は、主に以下の2点があげられます。

  • 社会課題、環境変化
  • オープンイノベーションとの関係

それぞれ解説します。

社会課題、環境変化

イノベーションエコシステムが必要とされる理由は、IT技術の発達によってあらゆるプロダクトやサービスが、1つの企業だけでは成立しなくなったことに起因しています。事業モデルを確立するための技術が複雑化した現代において、企業が単体で行う商品開発や販売が難しくなりました。

したがって現代においては、一つの会社だけではなく、複数の企業がお互いに協業することが必要となってきました。互いの強みを生かすことで、サービスの向上が期待でき、さらなる発展につながると言えます。

このことから、企業同士で利益に貢献できるようなイノベーションエコシステムが必要とされているのです。

オープンイノベーションとの関係

オープンイノベーションとは、自社以外の機関や組織から知識や技術を取り込み、製品開発や研究開発、技術改革や組織改革を実現し、自前主義からの脱却を図ることを意味します。

イノベーションエコシステムを推進することで、オープンイノベーションを創出することが可能となります。

イノベーションエコシステムによるオープンイノベーション

イノベーションエコシステムを実現することで、オープンイノベーションを創出します。

ここでは、以下について解説します。

  • 事業会社とベンチャーによる価値共創
  • 産学官の「融合」
  • グローバルに通用するサービスを創出

事業会社とベンチャーによる価値共創

事業会社とベンチャーによって価値を共創することで、オープンイノベーションによって目指すゴール「企業の枠にとらわれないこと、事業の促進や創出」につながります。

実現のためには、事業会社はベンチャーと連携し、「事業会社側のイノベーション経営」、および「ベンチャーエコシステムの構築」を推進する必要があります。

マークアップ率の低位や、新製品・新サービス創出数の減少などの課題が指摘される中、イノベーション経営の実現のため、以下のような取り組みをしています。

  • イノベーションマネジメントISOの活用による意識改革
  • 研究開発税制、OI税制によるインセンティブ付与
  • 契約ガイドライン、JOIC等によるイノベーションインフラ整備

ロールモデルとなるスタートアップの創出や成長を支える環境整備として、ベンチャーエコシステムの構築が推進されています。

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産学官の「融合」

ものづくりにおいて、産(企業)、学(大学)官(政府)が融合・連携することが求められます。それにより、次の産業の担い手となるスタートアップの育成につながり、スタートアップ・エコシステムの構築を加速させる必要があります。

グローバルに通用するサービスを創出

今後、日本の国際競争力を向上させるため、スタートアップ・エコシステムの強化が急務となっています。スタートアップ・エコシステムとは、「グローバルにインパクトを生み出せる起業家や、スタートアップ・イノベーション企業が自律的、かつ連続的に生み出される仕組みを指します。

これにより、世界で勝てるスタートアップを、国内で次々と創出させる必要があります。

日本が目指すべきイノベーションエコシステム

日本が目指すべきイノベーションエコシステムは、以下にあげる4つがあります。

  • 日本におけるエコシステムのジレンマ
  • 価値共創の好循環の形成
  • 「知」のシームレスかつ迅速な移転
  • グローバル市場環境の整備

日本におけるエコシステムのジレンマ

デジタル化が進み、市場変化のスピードが増加する中で、従来のイノベーションモデルは機能していなく、日本企業の存在感は低下しているというジレンマがあります。

米国を中心に、各国がスタートアップ企業と新しいイノベーションエコシステムを構築しつつある中、日本企業は市場ニーズへの対応や、デジタル化の対応などに遅れをとっています。

価値共創の好循環の形成

事業会社とベンチャーによる価値共創に向け、イノベーション経営を実現するためには、「両利きの経営」を実現する必要があります。

※関連記事:両利きの経営の要約まとめ|深化・探索とは?成功・失敗事例などわかりやすく解説!

「知」のシームレスかつ迅速な移転

「知」のシームレス(途切れのない)、かつ迅速な移転(共有)を実現するためには、以下にあげる2点が重要です。

  • 現状において、低下が懸念されている研究開発力の向上
  • 企業が市場へ付加価値を提供することに適した環境の整備

それにより、「理系人材の減少」「研究環境の悪化」などを原因とした、研究力低下の改善を目指します。

また、大学と企業の共同研究から市場への提供までを、スムーズかつ効率的に実現できるよう、ビークル(伝達方法)などの現状の環境整備見直しを図ります。

グローバル市場環境の整備

大企業と地域の中核企業、および大学や支援機関が連携することにより、グローバル市場の環境整備を推進します。

具体的には、ローカルに潜在する技術シーズ(新規事業開発を進める上で必要な技術)を収益につなげるため、グローバルに展開させるための「グローバルエコシステム」を整備していくことが必要です。

海外で成功しているエコシステムの共通点

海外で成功しているエコシステムに共通しているのは、産官学において「人材」、「知識」、「情報」、「資金」が循環していることです。イノベーションの創出に向け、ステークホルダーの方向性が揃うことによって、合理的に経済や経営が動いている環境と言えます。

結果的に、イノベーションエコシステムと大学などの基礎研究が独立せずに、表裏一体の関係になっていることが特徴です。

国内のイノベーションエコシステム

ここでは、国内におけるイノベーションエコシステムの政策や、地域の取り組みについて紹介します。

日本の政策、目指す姿

日本の目指すべき姿は、さらなるイノベーションエコシステムを推進し、組織の枠を超えて新しいアイデアや技術を創出すべきでしょう。

とは言え、グローバルに見ればイノベーションエコシステムの推進が遅れている日本ですが、地方都市で独自のエコシステムが構成されつつあります。その中で、さまざまなアイデア、プロダクトや技術、人材を取り込みたいという狙いから、海外企業との協業を模索するエコシステムも増えてきています。

地域ごとのエコシステム活動の事例

①関西(京阪神の連携)

  • OSAKA INNOVATION HUB
  • ナレッジキャピタル等
  • 阪大 京大 神大等

「大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム」
https://www.kansai.meti.go.jp/E_Kansai/page/20220104/04.html

2021年10月、「京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション」が、文部科学省が実施する大学発新産業創出プログラムに採択されました。スタートアップ地域の中核となる機関や大学の支援を目的とし、起業活動支援・アントレ教育・起業環境整備・エコシステム形成活動を統合的に進めています。それにより、「アントレプレナーシップ人材の裾野の拡大」および「連続的な大学発スタートアップの創出」を目指しています。

2020年7月、内閣府の「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略外部リンク 新しいウィンドウで開きます」のグローバル拠点都市に、「大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム」が選定されました。 これらの拠点に対し政府は、国の補助事業や規制緩和、海外展開への支援を積極的に行っています。

京阪神それぞれが、産官学からなるコンソーシアムを創り出し、スタートアップを設立する数の増大、ユニコーンと呼ばれる企業の評価額を1000億円を超えるようなスタートアップの創出を目標としています。

②IT企業が集積しつつある「福岡」

  • 「東アジアのビジネスハブ」

https://tomoruba.eiicon.net/articles/1616

福岡市は、九州エリアの中核都市として、韓国・中国に近いという立地を活かして「東アジアのビジネスハブ」を目指しています。若手人材の流入と新産業の育成を狙い、スタートアップやIT企業の誘致を強化しています。人材確保のしやすささや、オフィス賃料の安さ、また行政の手厚い支援が引き金となり、年間で50社近いペースで企業の誘致に成功しています。

  • 「スタートアップ法人減税」規制緩和事例

また福岡市は、国家戦略特区(※)「グローバル創業・雇用創出特区」という側面を持ち、さまざまな規制緩和を行なってきました。

「スタートアップビザ」では外国人の創業を支援し、「スタートアップ法人減税」にてスタートアップの法人税を軽減する仕組みを国内で初めて導入しました。

※国家戦略特区: 「世界で一番ビジネスをしやすい環境」の形成を目的として、地域・分野を限定し、大胆な制度・規制緩和、税制面での優遇措置をする規制改革制度

③自動車関連ビジネスの集まる「名古屋」

2019年に中部経済連合会と連携し、イノベーション拠点「NAGOYA INNOVATOR’S GARAGE」を開設した。中部圏でのイノベーションエコシステムのプラットフォームとして、新事業・新産業創出を図るための場としてさまざまな活動を展開しはじめている。

それにより、1年後には法人会員が約90社、個人会員が約70人と多くの会員を集めています。

まとめ

日本はイノベーションエコシステムの推進により、産官学の共創によってグローバルに通用するサービスを提供し、利益や人材を還流できる未来へと目指しています。実現のためには、組織を超えて企業と地域や大学が協業し、国の支援を受けながら新しい技術やアイデアを創出する必要があります。

PEAKSMEDIA編集チーム

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