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【2022年最新】蓄電池市場の最新動向とメーカーランキング|今後の見通しも

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蓄電池は、カーボンニュートラル実現の重要な基盤として注目が集まっています。自動車などのモビリティを電動化するための最重要技術であり、5G通信基地局やデータセンターなどのバックアップ電源にも用いられています。このように蓄電池はデジタル社会を支える重要な基盤であり、今後ますます市場拡大が見込まれています。

当記事では次世代を担う重要技術である蓄電池について、国内外市場の最新動向や今後の見通しをご紹介します。蓄電池の最新動向を把握したい方は、ぜひご一読ください。

蓄電池はカーボンニュートラル実現ニーズの高まりとともに注目を集める技術

蓄電池は電化社会における重要なエネルギー貯蔵手段であり、カーボンニュートラル社会の実現に向けて注目度が増しています。再生可能エネルギーを主力電力化するには、電力の需給調整を担う蓄電池の配備が欠かせません。また、自動車や電車などのモビリティを電動化するためにも蓄電池は必須です。

さらに蓄電池は、5G通信基地局やデータセンターなど重要設備のバックアップ電源としても活用されています。このように、蓄電池はデジタル社会を支える重要なインフラであると考えられます。

蓄電池は、現在液系リチウムイオン電池が主流となっています。しかし、液系リチウムイオン電池は発煙や火災のリスクがあり、近年でも火災事故が頻発しているため、安全対策が重要な課題の一つに挙げられます。他にも蓄電池には、エネルギー密度不足や経年による劣化、充電に長い時間を要する点などが課題と考えられています。

液系リチウムイオン電池はガソリンなどと比べると、はるかにエネルギー密度が低いため、ガソリン車並みの走行距離を実現するには改善が必要です。また蓄電池は充放電を繰り返すため劣化が進みやすく、社会インフラとして活用するためには長寿命化が欠かせません。加えて充電に長い時間がかかることも、普及への足かせとなっています。

これらの課題を克服するために、現在、全個体リチウムイオン電池の研究開発が進められています。全個体リチウムイオン電池は安全性が高く、急速充電が可能です。エネルギー密度も高く幅広い温度域で活用できるため、電化社会の実現に全個体リチウムイオン電池は欠かすことができません。

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、全個体リチウムイオン電池の研究開発が加速されています。

蓄電池市場の最新動向

蓄電池は車載用・定置用・小型民生用の各分野において、市場規模の拡大が見込まれています。とりわけ車載用電池は、EV等の普及に伴い急速に市場が拡大中です。ここでは、蓄電池市場の最新動向を国内市場と世界市場に分けてお伝えします。

国内市場

日本国内では、定置用蓄電池の市場規模が急拡大しています。東日本大震災を契機に非常用電源の確保や電力不足の解消を目的とした、家庭用蓄電池に対する補助金制度が導入され、市場が拡大されました。制度終了に従い需要が若干落ち着いたものの、現在は太陽光発電による余剰電力買取期間の満了に伴って再び需要が拡大しています。

産業分野では、再生可能エネルギーに必須の系統用蓄電池や、データセンター・5G通信基地局のバックアップ電源としての需要が拡大しており、今後もその需要は高まると予測されています。

車載用蓄電池も、EV等の普及に従い急激に市場を拡大しています。なかでもパナソニックは、トヨタ自動車や米テスラにバッテリーを供給するなど、国内外の市場を牽引中です。

車載用蓄電池の世界市場に目を向けると、日本は技術的優位性から初期市場を確保したものの、市場の拡大に伴いシェアが低下し、現在は中国・韓国に抜かれる結果となっています。そこで、従来の技術開発支援に加えて、社会実装や設備投資支援を強化する目的で、経済産業省による蓄電池産業戦略が策定されました。

蓄電池産業戦略によって国内製造能力を高め、2030年までに国内製造基盤として、現行の5倍以上の年1億5,000万kWhを目指しています。世界市場においては、日本企業全体で現行の10倍以上に当たる年6億kWhの製造目標を据えています。

他国製蓄電池の発火事故などの影響で安全性の高い日本製蓄電池へのニーズが高まるなか、日本メーカー各社は生産性や価格競争力の向上が喫緊の課題となっています。

世界市場

世界市場においても国内市場と同様、定置用蓄電池の需要が急拡大しており、2022年における市場規模は2兆円以上と推定されています。

なかでも再生可能エネルギー向け系統用蓄電池の需要拡大が目覚ましく、市場規模拡大に寄与しています。カーボンニュートラル実現に向けて、系統用蓄電池の需要は今後ますます大きくなると予想され、2035年には現行の5.5倍となる見込みです。

車載用蓄電池の急激な需要拡大も見逃せません。EV等の普及に伴い、2015年に42.9GWhだった出荷容量ベースは、2020年には145.5GWhまで拡大しています。今後のEV市場拡大に従い、2035年には現行の約14.2倍に当たる2070.3GWhにまで急拡大する見込みです。

車載用蓄電池における世界シェアの推移を見てみると、2015年の初期市場において、日本は技術力の高さから40.2%もの市場シェアを獲得していました。しかし中国や韓国がシェアを拡大し、日本の市場シェアは2020年時点で21.1%まで低下しています。定置用蓄電池も同様に、2015年に27.4%だった日本の市場シェアは、2020年には4.5%まで市場シェアを落としています。

今後も需要の拡大が見込まれる蓄電池の安定供給のためには、サプライチェーン全体の維持・強化が重要です。日本も材料等の品質的優位性で一定のシェアを維持しているものの、中国勢が積極投資によって価格だけでなく品質面でも猛追しています。世界市場における日本のシェアを維持・拡大するには、生産性と価格競争力の向上が欠かせません。

また持続可能な電池エコシステムの実現には、電池のリユースやリサイクルを推進し、循環型システムを構築する必要があります。使用済み蓄電池の回収力強化、中古蓄電池の性能評価、リサイクル基盤の構築などが喫緊の課題です。世界各国でリユース・リサイクルに関する取り組みが実施されており、日本政府はグリーンイノベーション基金事業等でリサイクル関連技術の確立に向け、企業への支援を行っています。

蓄電池の主要メーカー

日本国内では、さまざまな企業が蓄電池を製造・販売しています。ここでは、国内市場で人気の高い主要メーカーを業務用と家庭用に分けてご紹介します。

業務用蓄電池メーカー

業務用蓄電池は産業用蓄電池とも呼ばれ、商業施設・オフィスビル・工場などの非常用電源として用いられています。近年では、データセンターや5G通信基地局などのバックアップ電源としても用いられ、デジタル社会の基盤としても非常に重要視されています。

さらに、再生可能エネルギーの活用にも蓄電池は欠かせないため、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、今後ますますの蓄電池に注目が集まると考えられます。

ここからは、業務用蓄電池を開発・製造・販売している主要10社をご紹介します。

  • パナソニック

日本最大規模の家電メーカーであるパナソニックは、業務用蓄電池も製造・販売しています。パナソニックが推進している「創蓄連携システム」は、パワーコンディショナーを一体化することで、太陽光発電システムで発電した電力を効率的に蓄電池に蓄えることが可能です。

  • シャープ

大手家電メーカーであるシャープも、蓄電池と太陽光発電システムの連携に強みを持っています。なかでも、省エネ大賞を受賞した「スマート蓄電池システム」では、太陽光発電システムと蓄電池を連携させることで、効率的な電力運用が実現可能です。

  • 日本電気

NECとして知られる日本電気も、リチウムイオン電池を開発・製造しています。コンピュータやネットワークに強みがあるNECは、AI技術やIoT機器と組み合わせたトータルソリューションを提供しており、脱炭素を実現する重要技術として蓄電池を打ち出しています。

  • オムロンソーシアルソリューションズ

オムロンのグループ企業であるオムロンソーシアルソリューションズは、発電した電力を蓄えるためのパワーコンディショナーに強みがあります。太陽光発電システムなどの「創エネ製品」と、発電した電力を効率良く備蓄する「蓄エネ製品」を多数製造・販売しています。

  • 京セラ

京セラは太陽光発電システムを長年開発・製造しているメーカーで、発電した電力を最大限活用できるようリチウムイオン蓄電システムも販売しています。

  • ニチコン

コンデンサの開発・製造・販売を行うニチコンは、長寿命かつ安全性の高い蓄電池の開発に成功しました。性能の高さは国内外で認められており、京セラにOEM供給も行っています。

  • エリーパワー

エリーパワーは2006年に創業した、リチウムイオン電池による蓄電システムを開発・製造・販売する専業メーカーです。歴史は浅いものの、高い安全性と性能を評価されニチコンに電池を納入しています。

  • 村田製作所

村田製作所は15年以上の長寿命が期待できる、オリビン型リン酸鉄リチウムイオン二次電池(FORTELION)を搭載した蓄電システムを開発しました。複数の蓄電池モジュールを接続でき、用途に合わせて電圧や容量をカスタマイズ可能です。

  • 日立産機システム

日立のグループ企業である日立産機システムは、エネルギーソリューションとして産業用蓄電システムを製造・販売しています。電池の接続数に応じて、用途に合わせた幅広い容量選択が可能です。

  • TAOKE ENERGY

2018年創業の、産業⽤リン酸鉄リチウムイオン蓄電池システムを開発・製造・販売を行うメーカーです。世界的な蓄電池メーカーであるCATL社と協業し、高品質で安全性の高い蓄電池システムを提供しています。

家庭用蓄電池メーカー

災害時の非常用電源や発電電力の有効活用に、家庭用蓄電池の需要が拡大しています。特に、2011年に発生した東日本大震災の後は、国による補助金の影響もあり急激に市場規模が拡大しました。

最近では、太陽光発電による余剰電力買取期間の満了に伴い災害の備えとしての蓄電池需要はやや下降したものの、発電した電力を有効活用するため蓄電池の需要がさらに高まっています。ここでは、家庭用蓄電池を開発・製造・販売している主要10社をご紹介します。

  • パナソニック

電池の開発・製造に長い歴史を持つパナソニックは、家庭用蓄電池においても高いシェアを獲得しています。ラインナップが豊富な「創蓄連携システム」によって、効率的な創電・蓄電が可能です。

  • シャープ

太陽光発電システムと蓄電池の国内トップシェアを誇るシャープは、「クラウド蓄電池システム」を開発しました。クラウド上のCOCORO ENERGYと呼ばれるサービスと連携することで、AIが効率的に蓄電池をコントロールします。

  • オムロンソーシアルソリューションズ

パワーコンディショナーに強みを持つオムロンソーシアルソリューションズは、太陽光発電と組み合わせることで効率的な創電・蓄電を実現しています。コンパクト設計の蓄電池は、どのようなご家庭にも設置できるでしょう。

  • 京セラ

2019年度にグッドデザイン賞を受賞した「Enerezza」は、世界初のクレイ型リチウムイオン蓄電池を採用することで、長寿命と高い安全性を実現しています。3つの定格容量が用意されているため、用途に合わせて選択可能です。

  • ニチコン

家庭用蓄電池システム国内累計販売台数トップのニチコンは、電気を蓄え上手に使うテクノロジーとして「トライブリッド蓄電システム」を推進しています。太陽光発電・蓄電池・電気自動車を連携させることで、昼間に蓄えた電力を夜間に電気自動車へ給電することが可能です。

  • 村田製作所

村田製作所が提供する「All-in-One蓄電池システム」は、国内製造による高い安全性と15年の長期保証にこだわったコンパクトな蓄電システムとなっています。1台で売電・節電・非常時の電源供給に対応可能です。

  • 住友電工

非鉄系金属メーカーである住友電工は、家庭用蓄電池システムの開発・製造・販売も行っています。同社が提供する「POWER DEPO」は、小型軽量でどのようなご家庭にも簡単に導入可能です。

  • 伊藤忠商事

総合商社である伊藤忠商事は、次世代エネルギービジネスとして蓄電池も取り扱っています。同社が提供する「Smart Star」は、AIが天候に合わせて充放電を自動管理することで、効率の良い電力供給を実現可能です。また、太陽光発電によって減少した二酸化炭素排出量に合わせてポイントが還元されるため、さらにお得に蓄電池を活用できます。

  • 長州産業 

給湯機メーカーとして1980年に創業した長州産業は、コンパクト設計で設置場所を選ばない蓄電システム「Smart PV」を販売しています。充実した保証制度によって、長期間安心して使用することが可能です。

  • ダイヤゼブラ電機

ダイヤゼブラ電機へ商号変更した田淵電機は、パワーエレクトロニクス事業ブランド「EneTelus」より、蓄電ハイブリッドシステム「EIBS7」を販売しています。大容量・ハイパワーで、突然の停電にも安心して対応可能です。

蓄電池業界の今後の見通し

蓄電池を取り巻く環境は大きく変化しており、車載用蓄電池を中心に急速な市場拡大が見込まれています。2050年カーボンニュートラル実現に向け、技術的重要度は飛躍的に向上するでしょう。

一方、特定国への依存や価格競争の激化など、課題も浮き彫りになっています。ここでは、蓄電池業界の今後の見通しについてご紹介しましょう。

経済産業省の取り組み

日本の蓄電池産業は、研究開発能力・技術力・安全性の高さなどのプラス要因があります。一方のマイナス要因には、天然資源の乏しさ、国内市場の小ささ、産業政策と国家戦略の欠如などが挙げられます。

リチウムイオン電池の価格は年平均20%減となっており、減少傾向はしばらく継続すると見られています。世界市場で日本のシェアを拡大するためには、価格競争力の向上が喫緊の課題です。

そこで、経済産業省は自動車・蓄電池における目標として「グリーン成長戦略」を策定しました。自動車においては、2035年までに乗用車の新車販売における電化率100%を目標に据えています。蓄電池では、大規模化・研究開発・蓄電ビジネス創造を支援し、2030年までのできるだけ早期に生産能力の向上を目標に掲げました。

さらに、次世代蓄電池の研究開発を促進するために、2兆円規模の「グリーンイノベーション基⾦事業」を造成し継続支援する方針です。

そのほかの取り組みとしては、「省エネ型電⼦デバイス材料の評価技術の開発事業」「電気⾃動⾞⽤⾰新型蓄電池技術開発事業」「クリーンエネルギー⾃動⾞導⼊促進補助⾦事業」などが挙げられます。

競争が激化する世界市場で勝ち残るためには、官民一体となって戦略的取り組みを実行する必要性が増しています。

各国が国を挙げて蓄電池業界を支援

続いて、各国の蓄電池に対する政策支援を見てみましょう。

まず、アメリカは2021年6月8日、サプライチェーン⼤統領令に基づく100⽇レビューの結果を公表し「リチウムイオンバッテリー国家計画」を発表しました。リチウムイオンバッテリー国家計画では、以下の点をリチウムバッテリー・サプライチェーン・ビジョンとして策定しています。

  • 2030年までの10年間で⽶国とパートナー国による安全な材料と技術から成るサプライチェーンを構築し、⻑期的な⽶国の競争⼒と公正な雇⽤を創出する
  • サプライチェーンの構築により脱炭素化を可能にし、社会的正義を前進させ、国家安全保障の要件を満たす

続いて、欧州は2017年10月、欧州委員会・欧州投資銀行・EU加盟国の支援の下、500社程度の関心企業が集まり「EUバッテリーアライアンス」を設立しました。ギガファクトリー等を設立することで、アジアをはじめとした他国への依存を低減し、EU圏内に競争力のある電池産業の創出を目指しています。

近年シェアを伸ばしている韓国は2021年7月8日、2030年に2次電池の分野で世界トップを目指す「K-バッテリー発展戦略」を発表しました。主要電池メーカー3社と素材・部品メーカーは、2030年までに研究開発と設備投資に合計40兆ウォン(約3.9兆円)投資する⽅針です。

世界の主要生産拠点である中国は、製造業の強化を⽬指す「中国製造2025」において重点項⽬の1つに省エネ・新エネ⾃動⾞を位置付け、EV産業および蓄電池産業に巨額の産業補助⾦を投⼊しました。一例を挙げると、最⼤⼿電池メーカーであるCATL社に対して、2020年下半期に上半期と⽐較して、76%増の11億元(約200億円)の補助⾦を給付しています。

このように、世界各国が国を挙げて蓄電池産業を支援しており、世界市場は今後一層競争が激化すると予測されます。世界市場で日本が生き残るためには、日本も官民一体となって戦略的取り組みを行う必要があります。

まとめ

日本を含めた世界各国における蓄電池業界は、カーボンニュートラル実現に向けて発展し続けており、また今後も市場拡大が見込まれます。現在の市場動向は各国共通で拡大傾向にあり、その要因として日本独自で広がりを見せるのが、災害における非常用電源としての需要拡大です。これ以外の要素としては「再生可能エネルギー・バックアップ電源・電気自動車」の3点が、蓄電池の需要と市場拡大を後押ししているといえるでしょう。

また、日本における蓄電池主要メーカーは数多く存在します。各メーカーを比較すると、注力しているポイントはそれぞれ異なります。検討する際は、電池寿命の長さ・安全性の高さ・電力サイクルの効率重視に加えて、価格の安さ・保証制度の充実など、重要視する項目を決めておくと良いでしょう。

しかし、市場拡大が進む一方で各国は蓄電池産業に伴う課題を抱えており、そのための独自施策を講じています。日本の課題は大きく分けて「シェア率の安定と強化・持続可能な電池エコシステム(資源循環の仕組み)強化」の2点です。またその対策として、国内における開発支援や取り組み強化の動きが高まっています。各国が実施する支援がどのような結果をもたらすのか、蓄電池業界における今後の動向に注目が集まります。

PEAKSMEDIA編集チーム

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