INNOVATION

オープンイノベーションの必要性は?メリットとデメリットを解説

SHAREこの記事をシェアする

オープンイノベーションは、企業が自社のリソースのみならず外部から必要な資源を調達することで、イノベーションを加速させ競争力を高めます。企業の枠組みを超えた協業や共創による、新しいアイデアや技術を生み出しイノベーションの多様化ももたらします。

今回は、政府が成長戦略として掲げているオープンイノベーションの必要性、メリットや成功事例について詳しく解説します。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは、改革や刷新(イノベーション)を達成するために、自他問わず柔軟にリソースを活用して新しい市場機会の創出を目指す取り組みです。現UCバークレービジネススクールの教授である、「ヘンリー・チェスブロウ氏」が2003年に提言しました。

ITの発達・普及によって、自社のリソース(ヒト・モノ・カネ)だけでは利益を確保し続けることが難しくなりました。

また、東京商工リサーチの調査によると、日本企業の平均寿命は23.3年とされ、自社を存続させるためには時代の変化に適応する手法が求められています。

IBMやP&Gなどの有名企業が成功しているケースも多く、オープンイノベーションの活用が近年注目されるようになりました。

オープンイノベーションの特徴

商品開発や技術改革、研究開発や組織改革において、自社以外の組織や機関などが持つ知識や技術を合わせて技術革新を図ることがオープンイノベーションの特徴です。

【オープンイノベーションの特徴】

     
  • 人材
  • アイデア・知的財産
  • 研究
  • 市場

人材

オープンイノベーションによって、所属機関の枠を超えて優秀な人材を集めることができます。また、自社の人材が外部機関の優秀でバラエティ豊かな人材と触れ合うことで、人材教育、育成につなげることができます。

さらに、自社にはないアイデアやノウハウを吸収することで、新たなイノベーション創出のきっかけが生まれるでしょう。

アイデア・知的財産

オープンイノベーションの活用によって、自社に無いアイデア、技術、ノウハウを得られるようになります。

獲得したノウハウや技術を蓄積し、組織全体でアイデアをシェアする環境を整えることで、新しいアプローチでの課題改善や、自社の理想実現に活かせるでしょう。

さらに、オープンイノベーションでは知的財産(ライセンスや特許など)の権利譲渡や、開放が推奨されています。そのため、自社だけでは発見できなかった知的財産の活かし方が見つかる可能性も高まります。

研究

研究開発には多くの時間やコストがかかります。大きなコストをかけられない中小企業企業や、自社だけでリソースが足りない事も課題となっています。

外部との協業や既に研究済みの結果や知識を活用することで、開発期間を短縮しスピーディに商品やサービスを提供できる可能性が高まります。

市場

オープンイノベーションは自社の技術を活用するためのネットワーク構築にも貢献します。既存のネットワークとは別の顧客にアプローチできたり、イノベーションを起こし競争力を高めたりすることで市場シェアの拡大にもつながります。さらには視点を変えることで全く違う市場へ参入できるチャンスも広がります。

オープンイノベーションとクローズドイノベーションの違い

自社内の人材だけで技術開発をするクローズドイノベーションに対し、オープンイノベーションは外部の優秀な人材を使って開発するところに違いがあります。

ちなみに、新しい技術を購入して自社で開発することはオープンイノベーションではありません。

以下に、オープンイノベーションとクローズドイノベーションの違いをまとめます。

比較項目 オープンイノベーション クローズドイノベーション
イノベーションの発生場所 自社と外部 自社のみ
顧客のスタンス イノベーションを生み出す協業者 受動的、受け身
外部資本の関与 積極的に活用する あまり活用しない
知的財産 外部に開放する 外部に開放しない

オープンイノベーションの必要性

オープンイノベーションへの注目が高まっている理由は、プロダクトライフサイクルのスピードが早まり、技術革新が加速する現代において、時代の変化に素早く対応した製品・サービスが求められることにあります。

消費者のニーズは年々多様化し、逆に差別化は難しくなる一方です。今後はますます一つの商品、事業だけでは勝負が難しい時代になっていき、デジタル技術を活用した新しい組み合わせオープンイノベーションが必要とされるでしょう。

【オープンイノベーションの必要性】

     
  • プロダクトライフサイクルの短期化
  • デジタル技術の進化
  • 消費者ニーズの多様化

プロダクトライフサイクルの短期化

プロダクトライフサイクルが短期化していることが、オープンイノベーションを必要とする要因の1つに挙げられます。

プロダクトライフサイクルとは、事業が開始されてから減退していくまでの流れを指します。

プロダクトライフサイクルが短くなっている理由は、顧客や市場のニーズの変化が速いことや、技術革新のスピードが速く、製品の技術が陳腐化しやすいことなどを理由としています。

IT技術の発展やグローバル化によって、市場における技術開発が激化しています。

引用:経済産業省│市場の変化に応じて経営革新を進め始めた製造企業

消費者ニーズの多様化

インターネットの発達や、今後予測されるWeb3の時代では消費者の価値観が大きく変わることが想定されます。

消費者の価値観と共にニーズも変化していくため、これまでとは異なった価値観を持った消費者の需要に対して素早く対応する必要があります。

デジタル技術の進化

デジタル技術が進化したことで、複数のサービスや商品を結合させ、新たなサービスを作りやすい時代になりました。

例えば、自動車と人工知能(AI)を連携させることで、気象情報や渋滞情報、ビッグデータからオススメのルートや観光地を提案してくれます。

複数の事業を一社で展開している巨大企業でない限り、複数のサービスを結合させるのは容易ではなく、オープンイノベーションの必要性が高まります。

オープンイノベーションのメリット

オープンイノベーションは、低コストで素早く新規事業を展開したり、他社技術を取り入れられたりといったメリットがあります。
自社だけのリソースでは実現できなかった事業を展開できることは、大きなメリットと言えます。

【オープンイノベーションのメリット】

     
  • 低コストで新規事業を展開できる
  • 事業推進スピードが上がる
  • 新たな技術を導入できる

低コストで新規事業を展開できる

低コストで新規事業を展開できることが、オープンイノベーションを活用するメリットとして挙げられます。

新規事業の起ち上げには、新しい技術の開発やマーケティングなどのコストが多く発生します。
もともと技術やノウハウを所有している企業と連携すれば、事業起ち上げ時のコスト低減が期待されます。

事業推進スピードが上がる

事業の推進速度が上がることもメリットと言えます。事業の起ち上げやトラブルの解決など、複数の機関でアイデアを出し合うため、素早く問題を解決できるでしょう。

自社にはない情報量も増えることで、消費者のニーズを把握するまでの期間も短縮でき、ビジネスチャンスを活かす機会も増えるでしょう。

新たな技術を導入できる

複数企業と事業を進める中で、自社にはない新しい技術を導入できます。新たに学んだ技術や知識は、プロダクトに落とし込めるだけでなく、マーケティングや営業などのノウハウも、関わった組織や従業員にも蓄積されていきます。

最先端の技術や独学では得られない実践的な現場のノウハウは、その後の新たな事業展開に役立つでしょう。

オープンイノベーションのデメリット

技術が流出するリスクや、自社の開発力や利益率が低下するなどのデメリットもあります。

自社の力が衰退する可能性もあるため、オープンイノベーションだけに頼り切ってしまわないよう注意が必要です。

【オープンイノベーションのデメリット】

     
  • 技術が他社に流出する
  • 自社の開発力が低下する

技術が他社に流出する

他社と共同でプロダクトを開発するため、自社の技術が流出するリスクが伴います。

外部機関とシェアする技術や情報などは、具体的な範囲を事前に決定した上で契約する、従業員に対するコンプライアンスの教育を強化することも重要です。

自社の開発力が低下する

協業社同士がリソースを提供し合うのがオープンイノベーションですが、他社へ依存しすぎてしまい、自社だけでの開発力低下につながる可能性があります。

他社のアイデアや技術を取り入れ、ノウハウとして蓄積し、自社の開発力向上につなげることも必要です。

オープンイノベーションを取り巻く環境

世界だけでなく国内においても、オープンイノベーションを活用する多様な取り組みが行われています。

世界の取り組み

米国では、ベンチャー企業とのオープンイノベーションにおいて、単なる連携にとどまらずM&Aも盛んに行われています。

米通信機器メーカー大手のcisco(シスコ)は、スタートアップへの出資やM&Aなど、 協業関係を築いて積極的に外部資源を活用し、 研究環境を持たず新技術の開発や市場でのシェアを獲得しています。

欧州では、一般市民をまき込んだユーザ中心の新たなオープンイノベーションモデルを模索しており、
製品開発のプロセスでの調査対象や、製品案検討段階の実証実験、パイロット実験において顧客との相互フィードバックを重要視した取組も進んでいます。

日本の取り組み

成長戦略の重要な取り組みとして、日本政府も目的別に3つへ分類したオープンイノベーションを推進しています。

     
  • アイデアの創出や事業構想を目的としたオープンイノベーション
  • 技術開発を目的としたオープンイノベーション
  • 社会への実装や市場獲得を目的としたオープンイノベーション

同時に、企業や大学、スタートアップの連携、それらを支えるための環境整備へ政府が積極的に取り組んでいます。

オープンイノベーションの成功事例

ここでは、オープンイノベーションの活用によって、成功した企業の事例を紹介します。
各社の成功事例をもとに、自社の成功イメージを持つことが重要です。

【オープンイノベーションの成功事例】

     
  • LEGO
  • BASF

LEGO

デンマークの玩具メーカーであるLEGOは、オープンイノベーションにの代表例としてもよく名前が挙げられます。1990年代の業績悪化を機にイノベーションに対する調査を社内外で実施しました。

その結果から「イノベーションにつながる突飛な発想は、社外から生まれてくる」と考えました。そこで、社外からアイデアを募るWebサイト「LEGO Ideas Site」を開設したのです。

具体的には、LEGO製品のファンが制作した作品を投稿してもらい、特に人気を集めた作品を商品化するというサービスです。

ファンとの”共創”の場を設けたLEGOは、業績を回復しました。

BASF

BASFは、ドイツに本社を置く世界最大の化学メーカーの1つです。主な事業内容は、原料化学品、合成樹脂、農業化学品、医薬品、塗料などで幅広い産業で使用されています。

BASFは、持続可能な社会の実現に貢献することを目標に掲げており、環境に配慮した製品やサービスの開発に取り組んでいます。

BASFは”共創”をテーマに世界が直面する社会課題の解決策を、多様なパートナーと協働で考案するオープンイノベーションプラットフォーム 「Creator Space」を開設しました。

Creator Spaceでは、BASFの製品や技術を活用して、新しい製品やサービスを開発するアイデアを募集しています。大学・研究機関、政府、企業、起業家・ベンチャー企業など多種多様な外部パートナーと連携し、オンラインおよびリアルな議論の場を設けています。

まとめ

オープンイノベーションとは、外部機関と連携することで自社にないノウハウや技術を取り入れ、新しい技術やサービスの創出、新規ビジネスの早期起ち上げに貢献します。オープンイノベーションにより得た技術やノウハウは組織や従業員に蓄積されるので、その後自社の財産にもなります。

この記事をきっかけに、オープンイノベーションの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

PEAKSMEDIA編集チーム

PEAKS MEDIAは製造業の変革やオープンイノベーションを後押しする取材記事やお役立ち情報を発信するウェブサイトです。

際立った技術、素材、人、企業など多様な「 PEAKS 」を各企画で紹介し、改革を進める企業内イノベーターを1歩後押しする情報をお届けします​。

SHAREこの記事をシェアする