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グリーンケミストリーとは?12原則や具体例・SDGSとの関係をわかりやすく解説!

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環境問題への意識の高まりに伴い、医薬品、化粧品、プラスチックなど、多様な分野でグリーンケミストリーが注目されています。

グリーンケミストリーとは「環境や人体にやさしい化学」のことで、廃棄物の少ない化学合成プロセスの設計や、安全性の高い化学物質の開発などが例に挙げられます。

本記事では、グリーンケミストリーの定義や歴史的背景、グリーンケミストリー12原則の内容や、SDGsとの関わりについて解説します。

グリーンケミストリーとは何か?

グリーンケミストリーの定義や重要性、歴史的背景について分かりやすく解説します。

グリーンケミストリーの定義と基本理念

グリーンケミストリーとは「化学物質のライフサイクル全体において、人体や環境への負荷を低減しようとするコンセプトと、そのための技術の総称」で、一言でいえば「環境や人体にやさしい化学」です。

持続可能な社会の実現のため、安全で持続可能、かつ環境に優しい方法によって化学物質や化学製品を製造することを目指し、「地球環境との共生」、「社会的要請への充足」、「経済の合理性」を基本理念としています。

近年、環境意識への高まりによりグリーンケミストリーの研究が進んでおり、グリーンな触媒や溶剤、溶媒、反応装置など、環境にやさしい化学合成プロセスのための様々な研究が行われています。

グリーンケミストリーが注目される理由

グリーンケミストリーが注目される背景について解説します。

日本では1950年代から1960年代に四日市ぜんそくや水俣病をはじめとする多くの環境汚染や公害が発生しました。また、海外でも経済発展に伴い、大気汚染や土壌汚染、水質汚染など様々な環境問題が起こり、化学技術が生み出す弊害への問題意識が高まりました。

こういった経緯から環境や人体への負荷が低い化学物質の開発や、化学合成プロセスの改善が求められるようになったこと、また猛暑や干ばつなど地球温暖化の影響を身近に感じるようになり、人々の環境問題に対する意識が急速に高まったことにより、グリーンケミストリーが注目されるようになりました。

さらに、グリーンケミストリーはSDGs(持続可能な開発目標)とも非常に親和性が高い分野です。2015年にSDGsが採択されて以来、グリーンケミストリーはますます注目を浴びるようになりました。

グリーンケミストリー12原則

グリーンケミストリーの基本指針であるグリーンケミストリー12原則について解説します。

グリーンケミストリー12原則とは

グリーンケミストリー12原則とは、米国の科学者で大統領府の行政担当でもあったポール・アナスタスによって提唱された、グリーンケミストリーの基本方針です。

12原則を1つずつ説明します。

     
  • 廃棄物は「出してから処理」ではなく、出さない
    廃棄物はそもそも出さないようにします。廃棄前の保管中に内容物が化学反応を起こしたり、漏洩してしまったりすると、火災や爆発、土壌汚染などが起こり得ます。
  • 原料をなるべく無駄にしない合成をする
    最終物質までの全プロセスにおいて、無駄が出ないよう、化学物質を最大限まで活用する合成法を設計しましょう。エネルギー消費や汚染物質の排出を抑えることができます。
  • 人体と環境に害の少ない反応物・生成物にする
    これは水俣病や四日市ぜんそく、地球温暖化の例などからも明白でしょう。人体と環境への負荷が少ない合成法の設計が求められます。
  • 機能が同じなら、毒性のなるべく少ない物質をつくる
    化学合成は、毒性のある化学物質の使用や残存を最小限に抑え、なるべく安全性が高くなるように設計する必要があります。
  • 補助物質はなるべく減らし、使うとしても無害なもの使う
    補助物質とは、化学合成に使う溶媒や分離剤のことです。有機合成において廃棄物の大半を占めるのは溶媒であるため、環境や人体に負荷の低いものを選び、使用量を減らす必要があります。
  • 省エネルギーを心がける
    エネルギー資源の枯渇や、地球温暖化への影響から、なるべく省エネルギーな反応を設計すべきです。
  • 原料は枯渇資源ではなく再生可能な資源から得る
    バイオマス(再生可能な生物由来の有機資源)の利用など、原料には再生可能なものを選択する必要があります。
  • 途中の修飾反応はできるだけ避ける
    保護基の着脱、一時的修飾など、不必要な化学修飾は最小限にする必要があります。これにより副産物の増加を抑えることができます。
  • できる限り触媒反応を目指す
    たとえば、高温、高圧で行っていた化学反応を、触媒を用いることでより低い温度、圧力で行うことができます。これによりエネルギーの有効利用が可能です。
  • 使用後に環境中で分解する 製品を目指す
    化学製品は、使用後に無害な物質に分解され、残留しないように設計する必要があります。
  • プロセス計測を導入する
    プロセス計測とは、反応をリアルタイムに計測・監視することです。最適な反応条件を維持することで、余分な試薬を使わずに済み、爆発などの化学事故が起こる前に気づくことができます。
  • 化学事故につながりにくい物質を使う
    化学合成で使用する物質は、爆発や火災など、化学事故の可能性を最小限に抑えるように選択する必要があります。

このように、グリーンケミストリー12原則は、持続可能な化学と化学工業のあり方を目指すための行動指針です。

グリーンケミストリーの評価指標

グリーンケミストリーの評価指標の例としてE-ファクターが挙げられます。

E-ファクターとは、化学プロセスの省資源性を示す指標で、副生成物の重量を生成物の重量で除して得られる値です。

E-ファクター=[副生成物量(kg)/生成物量(kg)]

化学物質の合成プロセスでは、目的の化合物が得られるまでに様々な副産物、すなわち廃棄物が出ます。

Eファクターが小さいほど廃棄物が少なく、グリーンな反応と言えます。

グリーンケミストリーとSDGs

SDGs(持続可能な開発目標)は、気候変動や貧困など、世界のさまざまな問題を解決するために設定された、2030 年までの世界共通目標です。

前述したように、グリーンケミストリーは資源問題や地球温暖化問題、環境汚染問題への解決策となり得るものであり、SDGsと非常に高い親和性を持っています。

グリーンケミストリーの3要素である「地球環境との共生」、「社会的要請への充足」、「経済の合理性」はSDGsでも度々強調されている概念であり、両者の考え方には多くの共通点があります。

グリーンケミストリーは、上記3要素をバランスよく実現することでSDGsに貢献する化学技術です。

グリーンケミストリーの具体例

グリーンケミストリーの例として、原料や触媒、溶媒に環境にやさしい物質を使うことが挙げられます。具体例をみてみましょう。

再生可能資源(バイオマス)を原料とする合成

私たちの身の回りの製品の多くは石油から作られています。しかし、石油などの化石資源は埋蔵量に限りがあり、地球温暖化の原因となる二酸化炭素も発生します。そのため近年は、バイオマス(再生可能な生物由来の有機資源)を原料に用いた合成が注目されています。

その代表例として、バイオマスプラスチックが挙げられます。

バイオマスプラスチックは、サトウキビやトウモロコシなど、植物由来の原料を利用して作られるプラスチックで、包装材や食品容器、レジ袋等への活用が広がっています。

従来の石油由来プラスチックは、焼却時にCO2が発生するという問題を抱えていました。

バイオマスプラスチックも焼却時にCO2は発生しますが、その量は原材料の植物が成長過程で吸収するCO2の量とイコールであるため、実質排出総量はプラスマイナスゼロとなります。

プラスチックは現代では必要不可欠な素材ですが、バイオマスプラスチックでの代替により環境負荷を低減できるでしょう。

回収・再利用可能なグリーン触媒の開発

従来の化学合成プロセスでは、金属触媒が使用されてきましたが、金属触媒は高価な上、多くが毒性を示し、廃棄も難しいなどのデメリットがありました。

そのような背景から、金属触媒の代替として有機触媒が注目を集めています。

有機触媒の長所は、毒性のある金属元素を含まないことや、安価なこと、安全性が高いこと、有害な廃棄物を出さないことなどです。

有機触媒の例として有名なのは、1971年に最初に発見された有機触媒であるL-プロリンです。タンパク質を構成するアミノ酸の一つで、とてもシンプルな構造をしています。

プロリンは主に不斉アルドール反応に有効で、安価で毒性もなく、理想的な触媒の1つです。

省資源・省エネルギーな化学合成プロセスの設計には触媒の利用は欠かせませんが、現代では触媒自体にもグリーンなものを使用することが求められています。

グリーン溶媒中での反応開発

有機化合物の合成には、有機溶媒を用いることがこれまでの常識でした。

しかし、有機溶媒の多くは人体や環境に対して有害であり、焼却廃棄により二酸化炭素も発生します。

そこで有機溶媒に替わるグリーンな溶媒として注目されているのが「水」です。

水は環境や人体に対して無害であり、低コストで経済的にも理想的なため、近年は水を溶媒とする有機反応開発が積極的に行われています。

研究例としては、水中で有効に機能する触媒として、Lewis酸-界面活性剤一体化触媒(LASC)の開発などがあります。

触媒としての水の利用は、有機化合物の水への溶解度の低さなど、課題もありますが、水の性質を利用したユニークな反応を実現できる可能性もあり、今後もその発展が見逃せません。

グリーンケミストリーの課題と今後の展望

グリーンケミストリーは持続可能な発展のために不可欠な分野ですが、その発展には課題もあります。グリーンケミストリーの課題や今後の展望について解説します。

グリーンケミストリーの課題

グリーンケミストリーの発展には、技術的、社会的に多くの障壁があります。

技術的課題としては、グリーンケミストリー12原則に示される条件をバランスよく満たす化学技術の開発が容易ではないことです。

たとえば、人体や環境への負荷が少ない化合物を開発したとしても、合成プロセスで大量の廃棄物が出たり、反応に高エネルギーが必要であったりするようであれば本末転倒です。

このように、12原則は互いに関連しており、1項目を達成すれば良いという単純なものではありません。

生成物のグリーンさだけでなく、廃棄物の量、溶媒や触媒による環境負荷、廃棄時のCO2排出量など、多面的に見てバランスのとれた技術開発が必要なのです。

また、社会的な課題としては、環境にやさしい化学技術を開発しても、なかなか実用化が進まないことが挙げられます。

たとえば、ある物質の合成に対し、より環境負荷の低い合成方法や反応装置を開発したとしても、企業がそれを利用するために新たな投資をして現行のインフラを入れ替えるということは、コスト面の問題からなかなか実現しません。

このように、グリーンケミストリーの発展には様々な課題があります。

このような問題を乗り越えるためには、政府によるグリーンケミストリー分野への投資拡大だけでなく、よりグリーンな方法で製造された化学製品を選択するなど、私たち一人一人の行動変容も求められます。

今後の展望

今後、異常気象の増加などにより、世界的に環境規制が厳しくなると考えられ、グリーンケミストリーの需要はますます増加すると予想されます。

環境意識の高まりから、グリーンケミストリーへの投資も増えていくでしょう。

私たちが安心して生活できる社会を持続するためには、グリーンケミストリーの開発・利用を今まで以上に促進し、環境負荷を軽減していくほかにありません。

これまでも、研究者たちの努力により多くの化合物製造プロセスがグリーンなものに改善されてきましたが、今後はそのような一層取り組みが強まることでしょう。

まとめ

グリーンケミストリーとは「環境や人体にやさしい化学」のことです。

グリーンケミストリーの普及は、資源問題や温暖化問題、公害問題などの解決につながります。

環境にやさしい化学技術を生み出すため、科学者は日夜努力していますが、その実用化の推進には私たち1人1人の環境への意識も大切です。

本記事をきっかけに、身の回りの化学製品のグリーン度に目を向けてみてはいかがでしょうか。

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PEAKSMEDIA編集チーム

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