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PCBの早期処理を環境省が呼びかけ!低濃度・高濃度別の処分期限

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PCBとは、人体に悪影響を及ぼす恐れのある有害物質です。国内では1970年代に輸入・使用が禁止されましたが、技術の遅れですぐに廃棄処理できませんでした。古い工場やビルに残存するケースも多く、保有者は適切に処理しなければ、罰則を受けるかもしれません。

「自社で保有する工場やビルに残っていないか不安」、「どのように処理を進めればいいか分からない」という事業者もいるでしょう。

この記事では、PCB廃棄物が問題となった経緯や、PCB廃棄物の種類、見分け方、処理の方法・期限について解説します。

PCBとは

PCB(Poly Chlorinated Biphenyl)とはポリ塩化ビフェニルのことで、人工的に作られた、油性物質です。

PCBは「水に溶けにくい」「燃えにくい」「電気の絶縁性が高い」といった特徴があるため、主に工場やビル、学校向けの製品に使用されていました。例えば、変圧器やコンデンサー、潤滑油、印刷用インク、シーリング材などです。

人体への影響や環境汚染といった理由から、1970年代以降、生産および輸入、使用が禁じられました。しかし、当時の日本国内ではPCBを処理する技術や施設がなく、自治体が保管状況を把握しながら「持ち主が保管し続ける」という対応をとったのです。

その後、1990年代にようやくPCBの処理技術が開発されました。しかし、保管開始から20年近く経過していたこともあり、行政は保管状況を正確に管理できておらず、PCB廃棄物の紛失が明らかとなったのです。

そこで、2001年に「PCB特別措置法(ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法)」施行されました。PCB特別措置法により、PCB廃棄物を処理する施設が全国5箇所で整備され、現在でも環境省を主体として処理を進めている段階です。

PCBの毒性

PCBの毒性は、人体への影響も含んでいます。PCBの「脂肪に溶けやすい」という性質から、中長期にわたって体内に蓄積することで、さまざまな症状をもたらすと報告されています。

PCBの毒性が問題視されたきっかけは「カネミ油症事件」です。1968年(昭和43年)、食用油の製造に熱媒体として使用したPCBの混入により、西日本の広域にわたり「ライスオイル(米ぬか油)」による食中毒が発生。色素沈着や吹出物、目やに、全身の倦怠感やしびれ、食欲不振などの症状が蔓延しました。

また、PCBは以下のような影響を懸念されています。

  • 皮膚症状
  • 発がん性の疑い
  • 肝機能障害
  • 神経系・免疫系への影響
  • 胎児への影響

PCBなどの有害物質は、母親のへその緒に残留しやすいともいわれます。母親の体内に残ったPCBが、へその緒を通じて胎児にまで影響を及ぼす恐れもあるでしょう。

PCB廃棄物の種類

PCBの管理体制が過去にずさんだったことから、「自社で所有する古い工場やビルにPCB廃棄物があるかもしれない」と懸念される事業者もいるはずです。

ここからは、PCB廃棄物の具体的な種類について解説します。

PCB廃棄物は、主に「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」に分けられます。この分類に基づいて、委託する処理先が法律で定められています。

高濃度PCB廃棄物

高濃度PCB廃棄物は、「PCB濃度が0.5%(=5000ppm)を超えるもの」です。代表的な製品は、「高圧変圧器」や「高圧コンデンサー」、「安定器」などが当てはまります。

高圧変圧器・変圧器内の約60%をPBCが占めている。50kVAの場合には、およそ115kgのPCBが含まれている場合がある。
高圧コンデンサー・コンデンサー内はすべてPCBで満たされている。100kVAの場合には、およそ35kgのPCBが含まれている場合がある。
安定器・コンデンサーを内蔵する安定器の場合、巻紙の間に数十gほどのPCB油が含浸されている場合がある。

高濃度PCB廃棄物は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)で処理を行います。

低濃度PCB廃棄物

低濃度PCB廃棄物は、「PCB濃度が0.5%(=5000ppm)以下のもの」です。代表的な製品は、微量PCB汚染廃電気機器等(柱上トランス、OFケーブル等)や橋梁等の塗膜、感圧複写紙、汚泥などが当てはまります。

低濃度PCB廃棄物は、「無害化処理認定施設」と「都道府県知事等が許可する施設」で処理を行っています。

所有機器にPCBが含まれているか確認する方法

こうした分類があるものの、所有機器にPCBが含まれているかを判断するのは難しいかもしれません。環境省は、以下のような見分け方を推奨しています。

高濃度PCB廃棄物の見分け方

電気工作物本体の鉄板から、製造者名・表示記号名などを確認しましょう。

環境省は、高濃度度PCB廃棄物に該当する機器の製造業社名と表示記号を一覧表にまとめています。変圧器・コンデンサー・計器用変成器・リアクトル・放電コイル・ブッシング・溶接機、各種と照らし合わせて判断してください。
ただし、一覧表に記載されていないケースもあるため注意が必要です。一覧表以外の製造業者が製造している可能性もあるため、機器に使用している絶縁油の種類がわからなければ、製造業者へ問い合わせましょう。

低濃度PCB廃棄物の見分け方

絶縁油を採取し、専門機関に依頼して分析しましょう。分析によりPCB濃度が0.5mg/kgを超える場合は、低濃度PCB廃棄物と判断できます。

もし、電力用コンデンサーのように絶縁油を採取できない形状となっている場合は、物理的に破壊しなければなりません。

確認時の注意点

PCB廃棄物を見分ける際には、安全面で以下2点に注意しましょう。

  • 「電気主任技術者」や「電気管理技術者」、「電気保安法人」などに相談し、年次点検などと合わせて確認作業が行えるようにする
  • 電気室・キュービクルなど高電圧の危険な部分に触れるため、確認作業は電気取扱者が実施する

確認作業の準備を怠ると、装置のトラブルで停電が懸念されたり、高圧電流で感電死傷事故が発生したりする恐れもあります。万が一に備え、柔軟な準備をしておきましょう。

PCBは廃棄物処理が必要|期限内に処理しないと罰則が

PCB廃棄物は、PCB特別措置法によって処理期限や方法を定められています。もし、正しく処理しなかった場合、以下のような罰則を科される可能性があります。

違反行為罰則
PCB廃棄物の保管や処分状況を届けなかった、虚偽の届出をした6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
高濃度PCB廃棄物の処分期限を守らず、改善命令に違反した3年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金
PCB廃棄物を譲り渡した(譲り受けた)3年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金
事業継承などについて届けなかった、虚偽の届出をした30万円以下の罰金

【一部を除き終了】高濃度PCB廃棄物の処理方法と期限

高濃度PCB廃棄物は、製品によって期限が分けられています。

変圧器やコンデンサーなどは、「JESCO 東京PCB処理事業所」に依頼し、令和4年(2022年)3月31日までの処分となっていました。

安定器や汚染物などは、「JESCO 北海道PCB処理事業所」に依頼し、令和5年(2023年)3月31日までに処分する必要があります。ただし、北海道(室蘭)事業エリア以外では、すでに処分期間を終えています。

【北海道(室蘭)エリア】
北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県

低濃度PCB廃棄物の処理方法と期限

低濃度PCB廃棄物は、無害化処理認定施設などに依頼して、令和9年(2027年)3月31日までに処分しなければなりません。

まだ数年あるものの、期限直前には処分の依頼が集中することも予想されるため、早めに手続きを進めることが大切でしょう。

万が一期限後にPCB廃棄物の所有がわかったら

もし期限後にPCB廃棄物を所有していることがわかったとしても、処分することはできません。

特に高濃度PCB廃棄物を処理できるのは、JESCO社に限られます。期限以降、JESCO社は操業を終えるため、所有者自身で処理しなければならず、そのための施設や設備に多額の費用が必要となります。

万が一、高濃度PCBを見つけた場合は、関係窓口に相談するなど速やかな対応が求められるでしょう。

PCB廃棄物処理の流れ

PCB廃棄物処理の流れは、以下のステップで進めます。

1.PCBが含まれているかを確認する

先ほど触れた通り、安全面に配慮しつつも、確認作業を進めましょう。

2.法律に基づき届け出る

PCB廃棄物の所有者(または保管事業者)は、PCB特別措置法や電気事業法に基づき、保管や処理の状況について届け出なければなりません。

  • 変圧器やコンデンサーなどの所有者:産業保安監督部長
  • 照明器具の安定器などの所有者:都道府県知事(または市長)
  • PCB廃棄物の保管事業者:都道府県知事(または市長)

3.PCB廃棄物を収集・運搬してもらう

PCB廃棄物の「収集運搬業許可」を取得する業者に依頼します。契約後、マニフェスト(伝票)の交付と保存(5年間)を行い、搬出の立ち合いも必要です。

【中小企業向け】PCB廃棄物処理の支援

PCB廃棄物の処理では、処理や収集運搬に費用が発生します。企業によっては費用負担が大きくなるでしょう。
中小企業がPCB廃棄物を処理する場合は、「中小企業者等軽減制度」によって軽減措置や補助金を受けられます。

対象となる中小企業

対象となる中小企業の条件は、主に「大企業などの子会社ではない」会社です。

業種ごとにも条件があり、例えば製造業では「資本金または出資の総額が3億円以下」かつ「常時使用する従業員数が300人以下」となっています。

対象となる費用

軽減制度の対象は、以下の2つです。

  • 変圧器やコンデンサーなどの高濃度PCB廃棄物にかかる処理費用
  • JESCO社が許可した収集運搬事業者が、保管場所からJESCOまでの収集運搬に係る費用

(※積込みや積下し、運搬で必要となる高濃度PCB廃棄物の修繕・補修も含む)

ただし、ドラム缶やペール缶などの購入代金や、助成金の申請手続きを代行する費用については対象外です。

軽減率

軽減率はエリアごとに決まっています。

関西や北九州の事業エリアでは、処理費用の44%、収集運搬費用の0%が軽減されます。北海道を含む残りの事業エリアでは、処理費用の70%、収集運搬費用の70%が軽減されます。

助成限度額

助成の限度額も定められています。中小企業では、以下の限度額を参考にしてください。

【収集運搬(積込み・積下し含む)】

高濃度PCB廃棄物の種類助成限度額
トランス類(台)364,000 円/台
コンデンサー類(台)175,000 円/台
PCB油類(一式)175,000 円/台
安定器・汚染物など(ドラム缶)105,000 円/台
安定器・汚染物など(ペール缶)102,000 円/台

(※高濃度PCB廃棄物が2種類以上ある場合は、その種類ごとの助成限度額を合算する)

【漏えい防止装置】

70,000円/台・式

まとめ

PCBは、皮膚症状や肝機能障害などさまざまな影響をもたらす危険な物質です。1970年に国内で輸入や使用が禁じられたものの、1990年代に処理技術が発達するまで処分することができませんでした。その期間中に適切に管理されなかったPCB廃棄物が各地に残存していると懸念されています。

現在では、環境省が主体となって、PCB特別措置法に基づき処理を進めています。PCB廃棄物を保管・所有している事業者は、速やかに処理を進めなければなりません。特に高濃度PCB廃棄物は、廃棄期限が北海道(室蘭)事業エリアを除いてすでに終了しています。

もしPCB廃棄物を不適切に放置すれば、罰則の対象となるだけでなく、処理に多額の費用負担を強いられるかもしれません。中小企業に対して実施されている支援制度も活用しながら、PCB廃棄物の処理を進めていく必要があります。

自社で保有している倉庫やビルにPCB廃棄物が残存している可能性がある場合は、現状をチェックし、速やかな対応が求められるでしょう。

PEAKSMEDIA編集チーム

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