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「グレシャムの法則」の意味とは?身近な例を交えてビジネスシーンでの活用を解説

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「グレシャムの法則」をご存知でしょうか。日常生活ではあまり耳にしない言葉かもしれませんが、ビジネスシーンにおいて利用されるケースがあります。

グレシャムの法則に陥ると的確な経営判断ができなくなったり、優秀な社員が会社を離れてしまったりというような、組織にとって悪影響を及ぼす可能性があります。

今回は、グレシャムの法則の意味や、ビジネスシーンにおいてこの法則に陥らないため、具体的にどうするべきかを詳しく解説します。

グレシャムの法則の意味

グレシャムの法則とは、経済学における法則の1つです。貨幣の額面的な価値と実質的な価値に差が生じた場合、実質的な価値が高い貨幣は駆逐され、実質的な価値の低い貨幣が市場に流通してしまう現象を指します。

一言で表すと「悪貨は良貨を駆逐する」となります。

読み方は「あっかはりょうかをくちくする」であり、悪貨と良貨が同時に流通すれば、市場には悪貨ばかりが流通することを指しています。

グレシャムの法則の由来

グレシャムの法則の由来は、イギリスの財政家グレシャムが提唱したことから名付けられました。

「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉の「良貨」とは、金や銀の含有率が高い硬貨を意味し、「悪貨」とは金や銀の含有率が低く、混ぜものが多い硬貨を指しています。

例えば、金の含有率が90%の金貨Aと、金含有率40%の金貨Bがあったとし、どちらも同じ価値であるとします。

この場合、人々が貯め込むことが想定されるのは金貨Aです。なぜなら、仮に貨幣価値が下がった場合でも、金そのものに価値があるためです。

金貨Aと金貨Bがもし同時に流通している状況においては、人々は金貨Bを手放すようになるため、市場には金貨Bばかりが流通するという考え方です。

これと似たような事態が、16世紀頃のヨーロッパで実際に起こりました。当時、イギリスの財政家だったトーマス・グレシャムがこの状況を「グレシャムの法則」と名付けたのです。

グレシャムの法則の例文

ここで、グレシャムの法則の例文を2つ紹介します。

1:仕事に対して、やる気のないメンバーが加わった結果、チーム全体の活気が下がってしまった。悪貨に良貨が駆逐されるとはこのことだ。

企業や組織において、モチベーションの低い人が多くなると、やる気のある人材はモチベーションが下がってしまいます。最悪、やる気のある人が辞めてしまう場合もあるでしょう。

2:競合の1社が、質と値段を下げた商品を販売するようになたため、業界ではどの企業も値段が安く質の悪い商品ばかりになった。悪貨に良貨が駆逐されたのだ。

消費者はまず、価格の安さに目が行きがちです。従って商品の価格を下げることで注目が集まり、その商品の売上が上がります。他の企業もそれを真似することで売上増加を図ろうとしますが、どの商品も質が下がってしまうという例です。

グレシャムの法則の身近な例

グレシャムの法則「悪貨に良貨が駆逐される」を使用する際の例文を見てきました。ここでは、さらに身近な例について紹介します。

音楽や映画の違法アップロード

グレシャムの法則の身近な例として、音楽や映画の違法アップロードはなくならないというケースがあります。

音楽CDや漫画などを安価で販売したり、インターネットへアップロードしたりする違法行為です。一旦広まってしまうと、正規の音楽や漫画が売れなくなり、違法な商品が出回るというものです。

消費者は、製品としては同じ内容のため、どうしても安価な商品へ手を出してしまいがちです。そのため、このような違法行為が次々と行われるのです。

江戸時代に流通しなかった慶長小判

江戸時代に発行された慶長小判は、なかなか流通しなかったという事例もあります。

慶長小判とは、1601年に江戸幕府の誕生に合わせて発行された小判です。金の含有率の高い小判でしたが、財政難を解消するなどの目的で、幕府は1965年に元禄小判へ改鋳します。

その際、慶長小判と同じような大きさで元禄小判を作成したのですが、金の含有率を下げた小判であったため、当時の人々は慶長小判をため込んだと言われています。

まさに、グレシャムの法則「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉が生まれた状況そのものと言えるでしょう。

グレシャムの法則の英語表現

「悪貨は良貨を駆逐する」を英語にすると「Bad money drives out good (money).」となります。

ちなみに「drive out」、は「駆逐する、追い出す、排斥する」という意味があります。

よく似た表現で、「雑草はすぐ伸びる=憎まれっ子世にはばかる」があり、英語では「Ill weeds grow apace. 」と、表されます。

グレシャムの法則|ビジネスシーンでの例

グレシャムの法則は、よくビジネスシーンでも用いられる法則です。その理由は~だから。ここでは~~を紹介します。

組織構造の一例

グレシャムの法則は、ビジネスシーンにおいて「経営戦略」や「組織構造」に用いられます。

会社はさまざまな役職で階層が分かれており、会社を経営する上部の組織と、実際に業務を実行する下部組織によって構成されています。各組織それぞれに仕事と役割があり、分業化されている状態となっています。

経営者は、経営判断や戦略の意思決定に専念する必要があるため、業務や管理の意思決定は下部組織へ任せるべきと言えます。

権限委譲の原則があり、これはマニュアルに則った業務などのルーティーン作業は、部下へ権限委譲し、管理者は例外な業務処理に専念すべきという原則です。これによって、より作業効率を上げられるようになります。

もし、大企業の経営者が自ら顧客の営業先1件1件へ訪問していたり、カスタマーサポートの電話を受け付けていたりしては、本来遂行すべき経営戦略を立てることはできません。

日常業務の一例

ルーティンワークに追われると、創造的な仕事が後回しとなってしまうことも、グレシャムの法則に当てはめられます。

どの企業や組織にも、事務的な作業などのルーティンワークがあるでしょう。日常的に実施している業務は、どうしてもこのルーティンワークから先に作業してしまいがちです。

ところが、ルーティンワークをこなすために精一杯になると、新規事業の立ち上げや職場環境の改善といった、イノベーションを実現するような仕事が後回しになることもあります。

その結果、企業や組織の成長へとつなげていくことが難しくなってしまうでしょう。

人材育成の一例

人材育成においては、やる気のない、不正をはたらくような悪い人材が会社で権力を持ってしまうと、意欲的な人材が去ってしまう例があります。

例えば、業績を上げるため、チームの中に不正を働く社員がいると仮定した場合、周りの社員が「それでは自分も」と不正を働き、やがて常習化してしまいます。

一方で、そんな不正を働くことに対して、良く思わない社員もいるでしょう。そのような社員は職場を離れ、別の企業へ転職してしまいかねません。やる気があって地道に業務をこなす優秀な社員はいなくなり、不正を働くような社員ばかりが残ってしまう企業となってしまいます。

モチベーションについても同様で、やる気のないメンバーがチームにいると、その姿勢が周囲へ伝染してしまい、職場の士気を下げてしまう恐れがあります。モチベーションの高い人はその雰囲気に嫌気がさし、やはり職場を離れることもあるでしょう。

グレシャムの法則|ビジネスシーンでの対応策

これまで、ビジネスシーンにおいてグレシャムの法則に当てはまる、悪影響を及ぼすような具体的な事例について紹介してきました。もしそのような状況に陥ってしまった場合には、どのような対策を行うべきなのでしょうか。

【対応策】

     
  • 組織の分業体制マップを作成して可視化し、課題を洗い出し改善する
  • 不正が起こらないようコンプライアンス遵守を徹底させる仕組みづくり
  • 社員教育を充実させ、知識やスキルの向上を促してルーティンに陥らない思考力を養う
  • チームでのコミュニケーションを活発化させ、異なる視点や意見を共有させる
  • アイデアを募集する場や表彰制度を設け、イノベーションを創出できるよう社員の創造性やアイデアを評価する仕組み作り
  • 新規事業の失敗によるペナルティをなくし、チャレンジしたことを評価する

以上のように、経営者層や各チームのリーダーが柔軟な意識を持ち、社員をサポートしていく体制を整えることが重要です。

まとめ

グレシャムの法則は「悪貨は良貨を駆逐する」と表され、イギリスの財政家グレシャムが提唱したことが由来とされています。

ビジネスシーンの考え方として使用され、この法則に当てはまると経営判断に集中できない、優秀な社員が退職してしまうなど、企業にとって悪影響を及ぼす状態となります。

対応策としては、ルーティンワークに集中させない仕組みづくりを行い、新規プロジェクトにもリソースを使用すること、社員のモチベーションが低下しない職場の環境づくりなどが挙げられます。

PEAKSMEDIA編集チーム

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