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 バリュープロポジションとは|作製方法・注意点や過去の事例を解説

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ビジネスで成功するためには、企業が持つ独自の価値を顧客に効果的に伝えられることが求められます。バリュープロポジションは、顧客のニーズと競合他社にない独自性から自社の価値を生み出す考え方です。

当記事では、事業戦略を立案する経営層に向けて、バリュープロポジションの本質から作成のメリット、作成時の注意点について解説します。バリュープロポジションの事例も紹介していますので、自社独自の価値提供に役立ててください。

バリュープロポジションとは

バリュープロポジション(value proposition)とは、企業が顧客に提供する価値を意味します。「顧客にとって高いニーズで、さらに競合他社が提供していない独自の価値」を表します。

バリュープロポジションが明確であるほど、サービスの強みを訴えやすくなり、営業がプレゼンしやすく、かつ顧客に選ばれやすくなります。

バリュープロポジションキャンバスとの違い

「バリュープロポジション」と「バリュープロポジションキャンバス」は、使用する際の市場に違いがあります。

バリュープロポジションは、マーケティングや製品開発において、なぜ顧客に自社の製品やサービスが選ばれるべきかを明確にするために使用されます。すでに市場があり、競合相手が存在しているときに価値を表現します。

バリュープロポジションキャンバスは、事業全体の要素を俯瞰しながらバリュープロポジションを詳細に検討しビジネスモデルを立案するときに役立ちます。まだ市場が存在していない・市場が出来上がっていない・競合他社が明確ではないときに利用するフレームワークです。

バリュープロポジションを作成するメリット

バリュープロポジションを作成するメリットは、以下のとおりです。

【バリュープロポジションを作成するメリット】

     
  • 外部(クライアントや投資家)へ自社の価値を明確に提供できる
  • 顧客が望む価値・同業が提供する価値・自社が提供する価値の線引きが明確になる

バリュープロポジションを作成すると自社の価値を再認識でき、企業の成長や製品価値向上につながります。それぞれのメリットについて解説します。

外部(クライアントや投資家)へ自社の価値を明確に提供できる

バリュープロポジションを作成するメリットは、顧客の視点から競合他社が提供できていない独自の価値を見極め、自社の強みを明確に示せることです。競合には無い価値の明確化に繋がるため、結果的に外部(クライアントや投資家)への提供に繋げられます。

自社の強みを最大限に活用した的確なマーケティングを実行することは、現代のビジネス環境において重要なメリットと言えるでしょう。

顧客が望む価値・同業が提供する価値・自社が提供する価値の線引きが明確になる

バリュープロポジションを作成するプロセスは、顧客が望む価値、同業他社が提供している価値、自社が提供する価値に関する線引きを明確にします。

バリュープロポジションでは、顧客が本当に望んでいる価値や利益を理解し明示化するため、顧客視点から見た価値が明確になります。

また、競合他社が提供している価値を分析する流れで、市場全体のトレンドが把握でき、差別化ポイントや独自性が明確になります。そのため、同業が提供する価値と自社が提供する価値の線引きも明確になります。

バリュープロポジション作成時の注意点

バリューポジション作成時の注意点は、以下のとおりです。

【バリュープロポジション作成時の注意点】

     
  • 主観的な視点のもとで作成してしまう
  • 既存のデータに頼って現状にマッチしないものを作成してしまう
  • 自社のキャパシティを越えて制作してしまう

主観的な視点のもとで作成してしまう

バリューポジションを作成するときの注意点は、主観的な視点のもとで作成してしまうことです。

顧客が望んでいる価値は、「主観的に感じる価値」とは違うものであることを理解する必要があります。これまでに経験してきたことや「こうあるべきだ」という強い思いが、正確なバリュープロポジション野作成時に弊害になってしまいます。

主観的な視点でバリュープロポジションを作成してしまうと、顧客のニーズに焦点があてられなくなり、ビジネスとして使えないものになってしまいます。

既存の企業資産に頼って現状にマッチしないものを作成してしまう

企業は既存の資産に固執することで、現状にマッチしないバリュープロポジションを作成してしまうリスクがあります。

企業資産には顧客データベースや技術、営業網、マーケティングノウハウが含まれ、それらを活かすことばかりを考え「客が望んでいる価値」と合わない製品を作ってしまう可能性があります。特に成熟した企業ではこの傾向が見られ、企業資産にとらわれずに広い視点で考えることが重要です。

自社のキャパシティを越えて制作してしまう

顧客の望む価値を捉えつつ、幅広く対応しすぎると自社のケイパビリティ(企業が持つ組織的な能力)が追いつかなくなり、顧客への提供価値が行き渡りません。顧客のニーズの多様性に対応しようとすると、自社のキャパシティを踏まえず作成してしまうリスクがあります。

自社で対応できないニーズがあれば、完全に断念するか、他の方法で対処しなければなりません。顧客のニーズに応える一方で、提供できる価値を明確に見極めることが重要です。

バリュープロポジションの作成方法

バリュープロポジションを作成するときは、バリュープロポジションの優先順位を明確にし、顧客の望む価値を中心に考える必要があります。

バリュープロポジションを作るには、次の優先順位を守って考えていくことが重要です。

     
  • 顧客が望む価値
  • 自社が提供できる価値
  • 競合他社が提供できない価値

顧客の望む価値を把握するためには、顧客へのインタビューや観察、営業同席、共同作業、データ分析、アンケートなど様々なアプローチがあります。これらを網羅的に行い、価値を見出すことが重要です。

自社が提供できる価値は「顧客が必要不可欠にしている価値」と「顧客があればなお良い価値」に分けて考えます。これによって、自社のキャパシティを超えてしまうことを防げます。

自社の価値と競合他社の価値を検討するときは、3C分析やSTP分析が効果的です。3C「Company(企業)、Customer(顧客)、Competitor(競合他社)」分析とは、企業が市場において競争力を確立するために、自社の状況や環境を理解する手法の一つです。

STP分析とは、市場セグメンテーション、ターゲット設定、ポジショニングの3つのプロセスを組み合わせたマーケティング戦略です。

バリュープロポジションキャンバスの作成方法

バリュープロポジションキャンバスの作成では、顧客を特定し、そのニーズに対する製品やサービスを明確化します。次に、顧客のニーズと自社の提供価値の密接な結びつきを確立します。

バリュープロポジションキャンバスは、顧客が実現したいことに基づいて、自社商品・サービスの価値を以下の順番で記載していきます。

【顧客セグメント】

     
  • 顧客が実現したいこと:顧客は何を実現したいか・抱えているタスクをどう解決したいか
  • ゲイン(顧客のメリット・恩恵):顧客にとってのメリットは何か
  • ペイン(顧客の障害・リスク):顧客が抱える課題やリスクは何か

顧客セグメントの考察では、顧客が仕事や私生活で実現したいことを特定し、機能的、社会的、個人的、サポート的な側面を理解します。

次に、顧客の利得を考え、必要不可欠なものから想定外のものまでを洗い出します。これに加えて、顧客が抱える課題や悩みも同様に洗い出していきます。

【顧客への提供価値】

     
  • 製品・サービス:製品やサービスが提供していることは何か
  • ゲインクリエーター:顧客への利得を与えるものは何か
  • ペインリリーバー:顧客の悩みや障害を取り除くものは何か

顧客への提供価値を考えるプロセスでは、自社の製品とサービスを詳細に洗い出します。

次に、ゲインクリエーターで顧客の利得(顧客が今よりも良い状態になること)を考えます。

ペインリリーバーでは、顧客の障害となっているものを取り除くものが何かを検討します。顧客セグメントと分けて考えることで、自社目線に偏らず、顧客への提供価値を洗い出せます。

バリュープロポジションキャンバスは、市場がまだ確立されていない状態で、顧客の価値を見出し、提供価値を検討する際に活用します。

バリュープロポジションの事例

バリュープロポジションの事例として、「ユニクロ」と「iPhone」を紹介します。

ユニクロ

ユニクロは、1997年ごろから製造型小売業 (SPA)の体制を構築し「低価格・高品質商品」の展開を目指して「最安値宣言」をしていました。「スーパーバリュー戦略」は業界の差別化ポジションとなり、競合優位を築きました。

しかし、スーパーバリュー戦略は継続が難しく、徐々に品質強調への「高価値戦略」への転換が始まります。ユニクロは、業界相場で「中価値戦略」に位置し、高品質の競合優位があるものの、価格が上昇した結果「プレミアム戦略」へのシフトが見られ、若者離れが懸念されるようになりました。

その後のユニクロは、幅広い層に向けたベーシックな衣料品で差別化を実現します。「これでいい」の割り切りと、少品種大量生産による低価格で長いリードタイムを強みにします。機能性商品の開発も強みで、ヒートテックやシルキードライなどが大ヒットしました。

ユニクロは手ごろな価格帯で商品を提供しており、幅広い消費者が購入できるようにしています。低価格で耐久性がある機能性商品を消費者に提供しています。

 iPhone

Apple社のiPhoneは「スマートフォンは単なる機能の集合体ではない」というコンセプトを持っています。

iPhoneのデザインは非常に洗練され、スタイリッシュなフォルムが特徴であり、常にスマートフォンのデザインのトレンドを牽引しています。スマートフォンとしての機能が使えることだけでなく、細部にわたる注意深い配慮がiPhoneのバリュープロポジションを構成しています。

また、複雑なセキュリティシステムもiPhone独自のバリュープロポジションです。これまで専門家以外では理解が難しかったセキュリティの概念を非常に分かりやすく提供し、誰もが手軽にセキュリティに関する安心感を得られるようになりました。

まとめ

バリュープロポジションとは、顧客のニーズが高く、競合他社が提供できていない独自の価値を表します。バリュープロポジションを作成するメリットは、外部への価値提供と自社の価値再認識であり、主観的な作成や既存データへの固執、自社キャパシティの過剰対応に注意が必要です。

これからの競争社会を勝ち抜くためには、バリュープロポジションの取り組み事例を参考にしたうえで、自社独自の価値提供が求められます。

PEAKSMEDIA編集チーム

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