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ロジック半導体とは?|半導体の用途・国内外のシェアを紹介します!

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ロジック半導体は、付加価値の高い半導体で論理演算や制御を行う半導体です。最新のデジタル機器に利用されており、今後も世界中で必要とされる半導体です。日本はロジック半導体の開発で遅れをとっており、今後の政府の対策が注目されています。

当記事では、ロジック半導体の概要から他の半導体のとの違い、日本がこれから取り組むべき技術革新ついて解説しています。

ロジック半導体とは

そもそも、半導体とは電気を通す金属などの「導体」と電気をほとんど通さない「絶縁体」との中間の性質を持つ物質や材料のことで、これまで半導体原料はゲルマニウムが主流でしたが、現在はシリコンが原料として一般的になっています。

このような半導体を材料に用いたトランジスタや集積回路(IC)も、一般的に「半導体」と呼ばれています。

ロジック半導体とは、情報の処理や論理演算・制御を行う半導体のことで、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に利用されています。集積回路を微細にしてトランジスタ(素子)の数を増やすことで計算能力を高めてきました。

その他の半導体との違い

半導体は、使用目的や特性に基づいて以下のような種類に分けられます。それぞれの半導体について解説します。

半導体の種類 用途 搭載される製品
ロジック半導体 デジタル回路や論理演算に利用する パソコン、スマートフォン、デジタルカメラ
メモリー半導体 記憶装置としてデータの保存やデータの取り出しに利用する パソコンの記憶装置(RAM、ROM)、フラッシュメモリ
アナログ半導体 電圧、電流、周波数などのアナログ信号を取り扱いに利用する センサー、音響機器、通信機器
パワー半導体 高電力や高電圧の取り扱い、電圧・電流の調整に利用する テレビ、エアコン、冷蔵庫

ロジック半導体は、その他の半導体と比べて付加価値の高い半導体です。集積化することで高度な演算を早く処理でき、微細化することで消費電力を抑制できます。

私たちの生活に欠かせない電子機器は日々発展しており、ロジック半導体が求められるシーンは今後も増えていくと予想されます。

世界・日本国内で見るロジック半導体のシェア

半導体のシェアについて、世界と日本を比較して解説します。

かつては日本が半導体のシェアトップだった

世界の半導体シェアの流れを見ると、1988年は日本が半導体のシェアのトップ(50.3%)でした。2位の米国が36.8%なので大きな差があったことが分かります。しかし、2019年のシェアは日本の半導体シェアはわずか10%にまで低下し、米国が50.7%でシェアトップになりました。

現在にかけて、国際情勢、コロナ感染症によるデジタル革命、カーボンニュートラルの策定などを経て、半導体の市場は拡大しているにもかかわらず、日本のシェア・存在感は年々減少しています。

日本のシェアが減少している理由の1つがデジタル産業化の遅れです。2000年代に入り、パソコンやスマートフォン、インターネットなど世界的にデジタル化が進む中、日本国内のデジタル投資が遅れだしました。

半導体の顧客になるデジタル市場・メーカーが低迷したことで、国内の半導体設計体制が整わずに海外からの輸入に頼ることになりました。

また、日本が自前主義を貫いたことでグローバルなアライアンスが築けませんでした。そのため、供給側はもとより、需要側のニーズが低下し、半導体市場は国際的に見て遅れをとるようになりました。

ロジック半導体のシェア

ロジック半導体を生産する工場を設立しようとすると、5000億円~1兆円程度の投資が必要になります。世界を見渡してみても、ロジック半導体を量産できる企業は限られており、日本には最先端のロジック半導体を生産できる工場がありません。

【ロジック半導体を生産できる企業例およびその動向】

     
  • 台湾:台湾積体電路製造(TSMC)
    • 米国アリゾナ州フェニックス北部で建設中の第1工場は、4ミリメートルプロセスの半導体ウエハーを製造する予定(生産開始は2024年を想定)
    • 米国アリゾナ州フェニックス北部で3ナノメートル(nm)プロセスの半導体ウエハーを製造する第2工場の建設を開始(生産開始は2026年を想定)
    • 欧州初となる工場をドイツに建設する方向で最終調整に入り、早ければ2024年に工場建設を開始予定
  • アメリカ:インテル
    2022年9月、初期投資200億ドル以上でオハイオ州に新たな最先端半導体製造工場の起工式を開催(2025年の稼働を予定)
  • 中国:中芯国際集成電路製造(SMIC)
    2023年12月期の投資額について前期並みの高水準を維持すると発表。習近平指導部の支援を受けて高水準の投資で生産能力の拡大を急ぐ

ロジック半導体に関する日本政府の方針

ロジック半導体は、デジタル社会を支える基盤として今後も重要度は増していきます。半導体事業の遅れを取り戻すため、日本政府は必要な半導体工場の新設・改修を国家事業として主体的に進めようとしています。

日本政府は、ロジック半導体のシェアNo.1であるTSMCの工場を熊本県に誘致することを決定し、2024年の稼働を目指しています。TSMCが熊本県を選んだのは、熊本の地理的な強みがありました。半導体の製造には大量の水が必要になります。

熊本は市民の水道水の100%が地下水でまかなわれているほど水資源が豊富です。台湾から近いことも熊本を選んだ理由の1つです。また、九州は「シリコンアイランド」と呼ばれた歴史があり、半導体の材料や製造装置の開発で協力できる企業が多い点も強みです。

日本は次世代半導体として「2nm」プロセスの半導体の制作に力をいれています。ロジック半導体を微細化すると性能が向上します。2nmプロセスの半導体の開発に成功したIBMによると、2020年の7nmプロセスと比較して45%以上も演算能力が向上し、さらに消費電力は75%削減される効果があるとされています。

日本企業が合同出資で設立した新会社「ラピダス」は、2nmプロセスの半導体開発に成功したIBMと協力して、2027年に2nmの量産を目指しています。ただし、2nmプロセスの半導体製造意外にも研究すべき課題は多くあります。

現在は、2nmプロセスが物理的な限界とされており、さらに微小化できないか研究が続いています。また2D(平面)ではなく3D(立体)に配置することで集積度を上げる研究も進んでいます。素材を変えて性能を上げる実験も繰り返されており、ロジック半導体の競争はこれからも激化していくと考えられます。

ロジック半導体が増加すると、様々な場面で便利になります。たとえば、スマートフォンの処理速度が速くなり省力化されてバッテリーの寿命が延びます。医療業界では、高度な機器やロボットで人の命を救う機会が増え、自動運転の技術にも高速演算の半導体は活躍するといえます。

さまざまな機器が省エネで稼働するようになると、CO2の排出量低減につながります。

今後の国内産業基盤の強化に関する構想

国内の半導体シェアを拡大するために、日本政府が取り組む対応策について解説します。

まず、最新の半導体開発技術の共同開発と半導体工場の国内への建設です。日本の製造装置・素材産業の強みを活かしつつ産総研・大学・研究機関と協力して共同開発を開始します。さらに、海外の半導体工場を誘致することで、ロジック半導体を微細化する技術を学びます。そして国内に建設する最新技術の半導体工場を基盤として、海外の技術と専門家の知見を活かした共同開発に取り組んでいきます。

また、デジタル投資を加速させることで国内の需要を促します。たとえば、5Gの通信インフラや自動運転・スマートシティに投資することで、ユーザー企業や通信キャリア・ベンダーと協力をしながらロジック半導体の設計を強化できます。デジタル投資によって消費電力も大幅に増加することが考えられます。

省エネ化のコアとなる次世代パワー半導体の技術開発を進めていきます。パワー半導体の分野では、省エネ化・高性能化に向けた研修が激化しており、省エネ化・グリーン化をいち早く達成することが競争力の源泉になります。

日本企業が取り組むべきこと

政府の今後の対策や取り組みに対して、日本企業が取り組むべきことは何でしょうか。

政府の方針や対策を正しく理解することが大切です。投資している分野を把握し、共同開発や需要促進のビジネスモデルが世界との競争力強化につながります。半導体のサプライチェーンの中に自社が入り込むことで、半導体の技術革新が生まれやすくなり、政府の対策の一助となることができます。

国内にデジタルインフラを整備し、DX・GXの推進をすることで増大するデータ量の記憶や大量データを効率的・高速・省電力で処理できるようになり、ロジック半導体分野の成長につながります。

また、次世代半導体の設計と製造に関わるプロフェッショナルなグローバル人材を、地域内の産業、学術界、政府機関などと連携しながら、地域独自の特性に合わせたアプローチで育成する必要があります。

グローバル人材の育成によって新たな製品やサービスの創出へつながり、さらなるイノベーションを実現します。それにより、半導体分野のさらなる成長へとつながるような「循環」する仕組みづくりを目指します。その実現のためには、循環するスピードと技術の発展が鍵となります。

まとめ

ロジック半導体の事業においては、日本は大きく出遅れていました。しかし、日本にもTSMCの工場が誘致され、今後日本の半導体動向がどうなるかますます注目されるところです。また、ラピダスが世界最高水準の設計部隊、設備メーカー、材料メーカーと協調し、新たなビジネススキームを構築することに期待されます。

PEAKSMEDIA編集チーム

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