MOBILITY

軽自動車の歴史|小型車が誕生した背景や人気の理由を解説

SHAREこの記事をシェアする

軽自動車は、各自動車メーカーが工夫をしながら販売戦略を打ち出していることで、日本では今もなお高い人気を維持しています。

1949年に軽自動車が誕生してから現在にいたるまで、時代背景に合わせて何度も規格が改訂されてきました。その歴史は、人気の上昇や企業の撤退をくり返すなど大きな紆余曲折があり、現在の人気の裏では多様な課題を抱えています。

当記事では、軽自動車の歴史を知りたい方に向け、軽自動車の歴史や「軽廃止論」に立ち向かう自動車メーカーの動向について解説します。

軽自動車とは?

軽自動車とは、縦が3.4m以下・横幅が1.48m以下・高さが2.0m以下・排気量が660cc以下の三輪、および四輪の自動車のことです。

軽自動車は排気量が少なくボディサイズも小さいため、普通自動車よりも走行性能は劣ります。乗り心地も普通自動車の方が良いとされていますが、最近は軽自動車の性能も向上しており、加速やパワーにストレスを感じることはなくなりました。

軽自動車は、税金面で普通自動車よりも安価であり、高速道路料金が安く設定されている点も大きなメリットです。

軽自動車はコンパクトなため、日本の狭い道や駐車スペースで快適に利用できます。国内商用車の58%は軽自動車であり、軽自動車ユーザーの6割が女性であることも納得できます。排気量が少なく、道路の損傷度も一般車両の1/10と省資源・省エネルギーに貢献するモビリティです。

現在の軽自動車の規格

現在の軽自動車の規格は製造年月日によって違いますので、以下の表にまとめます。

製造年月日 排気量 高さ 長さ 改正年月日
1955年4月1日

1975年12月31日
360㏄以下 2m以下 1.3m以下 3m以下
1976年1月1日

1989年12月31日
550㏄以下 2m以下 1.4m以下 3.2m以下 昭和50年9月1日
道路運送車両法施行規則改正
(省令第34号)
1990年1月1日

1998年9月30日
660㏄以下 2m以下 1.4m以下 3.3m以下 平成元年2月10日
道路運送車両法施行規則改正
(省令第4号)
1998年10月1日
660㏄以下 2m以下 1.4m以下 3.4m以下 平成8年9月30日
道路運送車両法施行規則改正
(省令第53号)

軽自動車の歴史と規格の変遷

軽自動車の歴史と規格の変遷について解説します。

【軽自動車の歴史と規格の変遷】

     
  • 戦後すぐの法改正により軽自動車が誕生
  • 四輪軽自動車が登場した1955年
  • 1976年の規格改定により再び軽自動車人気に火がつく
  • 1990年の規格改定で安全性能の高い軽自動車が登場
  • 1998年に現行の規格に

1949年:軽自動車が誕生

1945年、終戦後の日本で自動車の生産が再開されました。復興への道を歩み始めましたが、当時はGHQの許可がないと自動車生産はできませんでした。1500台程度の製造が許可されていましたが、当時はトラック製造の延長線でしかなかったのです。

その後、1947年10月に自動車の製造制限が撤廃され、自動車の普及に向けて法律の改正を進めながら制度整備がされるようになりました。

軽自動車が誕生したのは1949年に法律が改正され、従来の小型自動車が「小型自動車」と「軽自動車」に分類されたことがきっかけです。

軽自動車は比較的容易に製造できることから、異業種を含めて多くの企業が軽自動車の製造にチャレンジし、自動車メーカーを目指しました。自動車メーカーを目指した各企業の中で、現在自動車メーカーとして現存しているのはスズキだけです。

1950年の法改正で「軽自動車」の対象が2輪車、3輪車にまで拡げられました。

1955年:四輪軽自動車が登場

1954年の法改正で、排気量は360ccを上限とするものに統一されました。この法改正以降、軽自動車は「排気量360cc、長さ3.0m以下、幅1.3m以下、高さ2.0m以下」と定義され、四輪軽自動車の製造が始まります。

1955年、二輪車事業で実績がある「スズキ」が四輪軽自動車業界に参入し、スズライトの販売を開始しました。続いて「スバル」がスバル360の販売を1958年に開始しています。その後、ダイハツやマツダ、ホンダなどの自動車メーカーが続々と参入し、軽自動車の黄金時代を築きました。

1970年代前半:軽自動車産業からの相次ぐ撤退

1970年代前半には、軽自動車産業から撤退する企業が増加しました。その理由は、1968年に軽四輪免許の廃止、1971年に自動車税開始、1973年に軽自動車の車検制度開始と、軽自動車購入の障壁となる制度が始まったことをきっかけとしています。

軽自動車の交通事故が増加し、安全性が問題視され始めたことも理由のひとつです。このような悪条件が続いたことで、軽自動車の販売台数が落ち込み、撤退する企業が増えたのです。

ホープ自動車や愛知機械工業などが軽自動車事業から撤退し、ホンダや東洋工業(現:マツダ)も一時的に軽自動車から撤退しました。

1976年:再び軽自動車人気に火がつく

軽自動車業界の落ち込みが続く中、1976年の1月に軽自動車の規格が改訂されました。全長3,200mm(200mmプラス)、全幅1,400mm(100mmプラス)、全高2,000mmとボディサイズが大きくなり、排気量が550cc(190ccプラス)とパワーも向上しました。

消費者が軽自動車の動向に注目する中「スズキ・アルト」が発売され大ヒットとなります。これをきっかけとして、各自動車メーカーが新しい軽自動車の展開を始め、軽自動車の人気が復活したのです。

1990年:安全性能の高い軽自動車が登場

クルマの安全性を求める消費者の声にこたえる形で、新たな規格が1990年に改訂されました。全長が3,300mm(100mmプラス)、全幅1,400mm、全高2,000mm、排気量が660cc(110ccプラス)となりました。規格の変更により、軽自動車に電子制御式燃料噴射装置が搭載されたことで、安全性向上につながったのです。

またエンジンの排気量が660cc拡大されたことから、軽自動車の方向性が2つに分かれます。
1つ目が軽自動車のスポーツカーブームです。ホンダのビート、スズキのカプチーノ、マツダのオートザムAZ-1といった特徴的なツーシーターの登場が、軽自動車の販売数を押し上げました。

もう1つがハイトワゴンの登場です。ハイトワゴンとは車高の高いワゴン車のことで、スズキのワゴンRや、ダイハツのムーヴの登場により人気となりました。

ハイトワゴンの誕生が、その後の軽自動車の主流になるきっかけとなったのです。

1998年:現行の規格に

1998年、衝突安全性を高めるために、軽自動車のボディ制限が拡大しました。改定により全長3,400mm(100mmプラス)、全幅1,480mm(80mmプラス)、全高2,000mmと現行の規格となったのはこの頃です。

また、普通車と同様の安全衝突基準が取り入れられたことで、定員は4人以下、貨物積載量は350kg以下という規格も設けられました。高速道路の速度制限が80km/hから100km/hに引き上げられたことも、軽自動車の人気を後押ししています。

1998年以降は、自社開発から撤退しOEM※車を導入する自動車メーカーが増え、マツダがスズキから、日産がスズキから、スバルもディアスワゴン、プレオ、ステラをダイハツからOEM提供を受けることになりました。

※OEM(Original Equipment Manufacturing)車とは、他社が製造・開発したクルマを自社のブランドとして販売しているクルマを意味します。

人気の裏で広がる「軽廃止論」

軽自動車の人気が依然として高い中、裏では「軽廃止論」の動きが続いています。軽自動車が普及することで、複数のデメリットが存在しているためです。

主に軽自動車は、日本独自の規格であることからグローバル展開できず、国内のマーケットが対象になっています。さらに軽自動車の部品は、普通乗用車と共用できないものが多く専用で制作しなければなりません。

普通乗用車同様の安全性能や利便性が追及される中、競争に勝つために軽自動車の価格を落とすと利益が圧迫されてしまいます。専用の部品制作の製造コストは高まりますが、販売価格を急激に上げられないというジレンマが生じています。

国にとっては、軽自動車の割合が増えると税収が減ってしまうことがネックとなっています。

人気が高まっている軽自動車ですが、このような状況をかかえています。

今後の軽自動車と企業動向

今後の軽自動車に関する企業の動向について解説します。

【軽自動車の廃止論に立ち向かう企業の動向】

     
  • 大日本印刷株式会社・双日株式会社・株式会社ダイヘン
  • 三菱自動車工業株式会社
  • ダイハツ工業株式会社

大日本印刷株式会社・双日株式会社・株式会社ダイヘン

大日本印刷株式会社・双日株式会社・株式会社ダイヘンの3社は、ワイヤレス充電機能を搭載した商用電気自動車(EV)の実用化に向けて業務提携し、国内初となる登録の認可を軽自動車検査協会より取得しました。

環境問題の流れの中で、EV車の重要性はこれからも増していくでしょう。今回開発した電気自動車は、非接触でワイヤレス充電ができる技術です。充電ケーブルが不要でケーブルのトラブルからも解放されるEV車が普及すれば、軽自動車の販売にも大きな影響を及ぼすと期待されています。

三菱自動車工業株式会社

三菱自動車工業株式会社は、主要ミニバンのデリカシリーズから軽自動車「デリカミニ」の販売を発表しました。コロナ禍以降盛り上がりを見せるキャンプブームの波に乗り、アウトドア派の需要を見据えたSUV軽自動車です。

ダイハツ工業株式会社

ダイハツ工業株式会社は、2025年までに100万円台で購入できるEV軽自動車を投入すると発表しました。

EV車を低コストで製造するために重要な搭載電池は、トヨタ自動車の技術開発や調達の方針と歩調を合わせて調達していく予定です。モーターについては内製化を見据えており、EV車の課題である価格面の解消に動いています。

まとめ

軽自動車の歴史は、時代背景に合わせて規格が変化してきました。一般的に、普通自動車の方が快適性は高いと言われます。しかし、軽自動車も普通自動車と遜色のないスペックで成長を続けてきており、税制優遇や高速道路の料金軽減などからも人気が高くなっています。

軽廃止論が注目される中、各自動車メーカーは独自の戦略でマーケットの開拓を続けています。

PEAKSMEDIA編集チーム

PEAKS MEDIAは製造業の変革やオープンイノベーションを後押しする取材記事やお役立ち情報を発信するウェブサイトです。

際立った技術、素材、人、企業など多様な「 PEAKS 」を各企画で紹介し、改革を進める企業内イノベーターを1歩後押しする情報をお届けします​。

SHAREこの記事をシェアする

TAG