
工場や電力設備などの重要インフラを標的にしたサイバー攻撃は世界的に増加しており、OT(Operational Technology)機器のセキュリティ強化は製造業の喫緊の課題となっている。日立製作所は2026年4月17日、OT機器の出荷前セキュリティ検査を、機密情報を外部に開示せず、通信帯域に制限がある環境(10〜100Mbps)でも効率的に実施できる技術を開発したと発表した。
OT機器の安全性確認には、疑似的な攻撃を繰り返して弱点を探るペネトレーションテストやファジングが有効だが、これまでは2つの壁があった。1つは機密情報の問題だ。外部機関に検査を委託する際、ソースコードなどの機密情報を開示しなければならないケースがあり、外部委託が進みにくかった。もう1つは通信帯域の制限だ。検査の進捗を示す「カバレッジビットマップ」の送受信が通信のボトルネックとなり、検査回数を十分に確保できない状況だった。
日立が開発した技術はこの2つを同時に解決する。第1の特長は、製品ごとに異なる接続方式を検査用ソフトウェアで共通化した「入出力インタフェース」の定義だ。OT機器メーカーはこの仕様に従ってプログラムを機器に導入するだけで、外部機関にソースコードを渡さずに検査を受けられる。第2の特長は、カバレッジビットマップの差分転送方式だ。変化した部分のみを送信し、変化がない場合は過去の類似データのIDだけを送ることで通信量を大幅に削減する。
実際の検証では、通信速度10〜100Mbpsの制限環境でOT機器のWebサーバを想定して評価した結果、検査ツール側の受信トラフィックを従来比で10分の1に削減し、精度を維持したまま検査の網羅性(カバレッジ)を10〜30%拡大できることを確認した。
本成果の一部はNEDO「経済安全保障重要技術育成プログラム」の委託事業として開発され、国際会議AINA-2026(2026年4月、ニュージーランド)でも発表済みだ。日立は今後、本技術を社内OT製品の出荷前検査に適用するとともに、OT機器ベンダーや検査事業者との実証を通じて、通信帯域が制限される環境でも使いやすい検査の標準化・省力化を推進する方針だ。製造業のスマートファクトリー化とOTセキュリティを両立させる実用的な技術として注目される。
製造業のDX担当者にとって、OT機器のセキュリティ確保は「どう外部に任せるか」という実務的な課題だ。機密情報の扱いや現地での通信制限が壁になるケースは国内外の工場で共通しており、検査の標準化が進めばサプライチェーン全体のレジリエンス向上にもつながる。
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プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000152541.html
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