
デンカは2026年5月18日、千葉工場(千葉県市原市)において低誘電有機絶縁樹脂「SNECTON®(スネクトン)」の専用製造プラントが竣工したと発表した。投資金額は約70億円。5G・AI・データセンター市場の拡大に対応した供給体制を整えた。
電子回路基板では、電気信号が伝送中に熱に変換されて失われる「伝送損失」が通信の高速・大容量化に伴って深刻な課題となっている。伝送損失を減らすには、誘電率(信号の速さに影響)と誘電正接(信号の減衰しやすさに影響)が低い絶縁材料が必要だ。従来、これを満たす代表格はフッ素樹脂だが、積層加工性や銅箔との密着性に課題があり、製造コストも高い。
スネクトンはデンカが独自の重合技術で開発した有機絶縁樹脂で、低誘電率・低誘電正接においてフッ素樹脂と同等以上の電気特性を実現しながら、フッ素樹脂の弱点だった積層加工性と銅箔密着性を両立した。耐熱性にも優れ、データセンターや通信機器向け基板の高信頼化と省エネルギー化に対応できる。デンカは2025年2月に本材料を上市し、今回の専用プラント竣工で安定供給体制を確立した。
スネクトンはデンカの経営計画「Mission 2030 フェーズ2」でICT&Energy領域の成長ドライバーと位置づけられている。約70億円という投資規模は、素材事業への大型コミットメントとなっており、5G・Beyond 5G・AIサーバー需要の継続的な成長を見込んだ先行投資だ。
半導体・電子部品の高性能化競争において、材料が性能の上限を決めるケースが増えている。フッ素樹脂の代替材料開発は世界中の素材メーカーが挑んでいる分野であり、積層加工性と誘電特性を両立するというスネクトンのアプローチは、次世代電子基板の設計選択肢を広げる新しい素材として注目される。
電子基板向け低誘電材料の市場規模は、5G通信網の拡大とAIサーバーの急増を背景に高成長が続いている。特にデータセンターに設置される高密度AIサーバーでは、信号の高速伝送と発熱抑制を両立するために、基板材料の誘電特性が直接的に処理性能と消費電力に影響する。スネクトンのような国産低誘電材料が専用プラントを構えた事実は、日本の化学素材メーカーが半導体・電子産業のサプライチェーン上で戦略的なポジションを確立しようとしている動きとして読み取れる。フッ素樹脂の大半を海外メーカーが供給してきた構図に一石を投じる可能性がある。
関連情報
プレスリリース:https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1403/20260518_snecton.pdf
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