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自動車産業を大きく変えるCASEの意味とは|実現される世界と課題について解説!

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CASEは、100年に一度と言われる自動車産業の革命を象徴するキーワードであり、交通そのものをサービスと捉える「MaaS」とともに、自動車のあり方そのものに大きな影響を与える概念である。

今回は、CASEのコンセプトと、CASEによって実現される世界について、その実現に向けた課題を含めて掘り下げていきます。

自動車産業の未来に興味をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。

CASE(ケース)とは

CASE(読み方は「ケース」)は、2016年のパリモーターショーでメルセデス・ベンツ社により提唱されて以来、自動車産業全体の未来を語る概念として話題になっている、英語でモビリティの変革を象徴する4つの分野の頭文字を組み合わせた造語です。それぞれの意味は以下のとおりです。

Connected(コネクテッド)車の通信機能の技術
Autonomous(自動運転)自動で車を走らせる技術
Shared(シェアリング)必要な時だけ貸し借りする共同所有の考え方
Electric(電気自動車)ハイブリッドや電気自動車を増やそうという考え方

従来の自動車会社がただ自動車を生産・販売するだけだったのに比べ、今後はモビリティ自体をサービスと捉えて事業展開をしていくのが主流となるでしょう。自動車業界のみならず社会全体を変革する概念であり、今後の新しいクルマづくりの軸となるものです。

経済産業省もCASEの関連技術が社会実装フェーズに入りつつあることを踏まえ、2022年4月25日開催の「モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会」第4回会合にて、CASE実装加速に関する自動車政策の新しい方向性を示しています。

Connected(コネクテッド)

Cは「Connected」の頭文字です。通信機能を活用してさまざまな価値を生み出します。

たとえば、車内での映画や音楽などのエンタメ、交通事故時の自動通報、カーナビの地図データなどを社内で利用可能とします。ほかに、常時ネットワーク接続してデータのやり取りを行う必要のある自動運転にも不可欠な技術です。

国内外各社が車のコネクテッド化に取り組んでおり、通信機器メーカーや半導体メーカーなどとの提携も盛んな動きを見せています。今後、新しいサービスが続々と誕生することへの期待が高まる状況といえるでしょう。

国内の事例や動向を表にまとめましたのでご覧ださい。

自動車業界の取り組みトヨタのT-Connect日産&マイクロソフトのNissan ConnectマツダのG-BOOK ALPHABMWやアウディなどによる5Gコネクテッドカーのサービス開発
その他業界の取り組みソフトバンクによる通信プラットフォームの構築NTTやKDDIがトヨタと協業NTTドコモ&フランスのサプライヤーと協業したサービス展開GMOクラウドの「つながるクルマ」化を目指した技術展開

Autonomous(自動運転)

近年、目覚ましい技術革新を遂げている自動運転(Autonomous)は、以下の6区分でレベル分けされています。

  • 自動運転レベル0: 自動運転なし
  • 自動運転レベル1: 衝突被害軽減装置やACCなどの運転支援
  • 自動運転レベル2:  衝突被害軽減装置ACCなどの運転支援システムの組み合わせが可能
  • 自動運転レベル3: 条件月の自動運転。ドライバーの対応が必要となる場面がある
  • 自動運転レベル4: 特定条件下での完全自動運転
  • 自動運転レベル5: 完全自動運転

国内の自動運転への取り組み・事例について、表にまとめたのでご確認ください。

自動車業界の取り組みホンダがレベ3の技術を搭載した市販車を発表トヨタが開発したレベル4の技術を搭載した自動運転EV車「e-Palette(イーパレット)」が東京オリンピック・パラリンピック選手村で運用
その他業界の取り組みソフトバンクによるスタートアップやベンチャーへの投資

現在の自動運転技術

日本では、ホンダが2020年11月にレベル3の技術を搭載する車を発表しました。各国がレベル4の実証実験を行っており、日本でも東京オリンピック・パラリンピックの選手村ではレベル4相当の自動運転技術を有する小型電気バスが運行していました。

レベル4以降は人ではなく車主体の運転となることから、技術の進歩は新たなフェーズに入ったといえる一方、レベル5の実現は現時点の技術では難しいと考えられています。

自動運転の法整備

技術の進歩にともない、各国、車の自動化を実現するための法改正の必要性に迫られています。

2020年にWP29(自動車基準ん調和世界フォーラム)がレベル3に関する国際基準を策定したのを機に、各国が法律に反映する動きをはじめました。

日本では、2020年4月に道路交通法を改正し、レベル3相当の自動運転技術を持つ車の公道走行が可能となりました。欧州各国、米国なども、自動運転車の普及に対応できる法改正を進めています。

Shared(シェアリング)

CASEの中で「Shared」だけが、技術ではなくカーシェアリングやライドシェアリングといった所有方法に関する変化を指しています。

これまでは、車というと各家庭・各個人が所有するものでしたが、これからは「シェアの時代」になると見られています。ただし、日本ではライドシェアリングは原則法律で禁じられています。ただし、公共交通サービスの乏しい過疎地などで例外的に認められており、今後少子高齢化や過疎化への対策として広まるとの予想もあります。

国内の事例や動向については、以下の表をご覧ください。

自動車業界の取り組みトヨタがタクシー配車アプリを提供する「Japan Taxi」とタクシー配車サービスを共同開発
その他業界の取り組みソフトバンク、ディディ、ウーバーによるタクシー配車アプリの提供DeNAがAIを活用したタクシー配車アプリを展開

Electric(電気自動車)

電気自動車(EV車)への注目は年々高まっています。特に、環境保護意識の高い欧州では顕著で、ノルウェーでは2025年以降、電気自動車またはハイブリッド車以外の車両販売を禁止、フランスでは2040年までにガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止する方針です。欧州以外でも、自動車メーカーの多くがEV開発・実用化に向けて動いています。

電動化の目的である化石燃料消費量の削減による環境対策、CO2排出量削減への取り組みの重要性から、電気自動車への注目は引き続き高まっていくと見られています。

国内の事例や動向については、以下の表をご覧ください。

自動車業界の取り組みトヨタは2050年にガソリン車0を目指す日産が軽EV車をはじめ、続々と新型EV車を発表ホンダがEVバイク普及へ取り組む
その他業界の取り組みパナソニックが新電池の開発ソニーがホンダと共同でEV事業のため「ソニー・ホンダモビリティ」を設立

CASEによって実現される世界

CASEの実装化が進めば、以下のような世界が実現できると期待されています。

【CASEによって実現される世界】

  • CO2の削減
  • 交通事故の低減
  • 交通弱者の救済
  • MaaS

それぞれ詳しく見ていきましょう。

CO2の削減

環境対策として期待されているのが、CO2の削減です。

CO2排出に起因する気候変動問題は地球規模の課題であり、各国がパリ協定で採択された長期目標達成に向けて取り組んでいます。

CASEの「E:Electric」でガソリン車やディーゼル車の代わりに電気自動車が普及すれば、当然CO2排出量は大幅に削減できます。年々高まる温暖化や異常気象などの環境問題への対策として、実現が期待されている分野です。

東京オリンピック・パラリンピック選手村で運用された「e-Plalette」も、走行時のCO2排出がない電気自動車で、また、クラス4の自動運転車でもあることから、注目を集めました。

交通事故の低減

交通事故は、その9割がヒューマンエラーによって引き起こされていると言われています。そこで、自動運転が普及すれば人的なミスによる事故を減らすことができると期待されています。また、機械に任せることから、危険運転や信号無視などの故意や悪質な違反行為の防止も期待されています。

各自動車メーカーは、交通事故削減や交通事故死亡者ゼロの達成を掲げて自動運転技術の開発に取り組んでいます。人が介入しない運転技術の実現により、交通事故件数を大幅に削減するという目標の実現に期待が寄せられているのです。

交通弱者の救済

東京オリンピック・パラリンピックに導入されたトヨタの「e-Palette」のような自動運転車が普及すれば、交通弱者の救済につながると期待されています。

たとえば、公共交通機関が十分でない過疎地域で車の運転ができない高齢者の移動手段として、自動運転のシャトルの開発がすすんでいます。また、タクシーのように出発地と目的地を利用者ごとにカスタマイズしたサービスも、オンデマンドで呼び出した自動運転車で提供できれば、バスなどの公共交通機関と同程度の負担での利用が可能となり、交通弱者の救済につながると見られています。

MaaS

CASEが実現した未来には、移動自体をサービスと捉えるMaaSの実現も見据えられています。

Maasは、複数の移動手段をシームレスにつなぐ次世代の交通サービスとして注目を浴びています。従来はバスや新幹線、レンタカーなどはそれぞれ個別に探して予約する必要がありましたが、MaaSではすべて一元管理し、一括で検索・予約・決済が可能となります。

移動の利便性を向上させることで、自家用車に頼らない移動を実現し、その結果として、都市部の渋滞解消や高齢者・車を持たない過疎地域住人などの交通弱者救済が期待されています。

CASE実装化の課題

CASE実装化に向けて各業界が積極的に取り組んでいますが、依然実現には時間がかかる見込みです。特に、自動運転のレベル5に達するには、技術はもちろん交通インフラの整備などクリアしなければならない問題があり、容易には突破できないと見られています。

CASE実装化には、現在以下の課題があります。

【CASE実装化の課題】

  • 新しい事業モデルの構築
  • 新しい制度の設計
  • インフラ構築
  • さまざまな分野のサービスとの協力
  • 実装する地域の人々の理解

このように、まずは受け入れ体制を整えることから始める必要があると見られています。また、実装化へ向けた動きを加速させるためにも、協力の輪を広げていく努力も必要でしょう。

まとめ

本記事では、CASEは自動車業界の変革の要となる3つの技術「Connected」「Autonomous」「Electric」と所有形態の変化を表す「Shared」であること、100年に1度と言われる自動車業界の大変革を表す言葉として注目されていることを説明してきました。

CO2の削減や交通事故の低減などが期待されており、自動車業界にとどまらずIT業界なども協力して実現を目指しています。

実装化にはまだ時間がかかると見られていますが、未来へ向けた自動車業界の変革への取り組みから今後も目を離せません。

PEAKSMEDIA編集チーム

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