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データクレンジングはなぜ重要なのか?メリットと作業手順を解説

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企業の運営において、データの利用は欠かせないといっても過言ではありません。データ分析の精度を高めるには、正確なデータの利用が必要不可欠です。

正確性の高いデータ作成には、データクレンジングと呼ばれる作業が必要となります。この記事では、データクレンジングの概要とメリット、具体的な進め方について解説します。

データの正確性にお困りの企業担当者の方は、ぜひご一読いただき参考にしてください。

データクレンジングとは?

データクレンジングとは、機械学習(Machine Learning)やビジネスインテリジェンス(Business Inteligence)ツールで利用するデータの正確性を向上させ、分析や業務に利用できる品質に高めることです。

具体的には、誤記・未入力・重複などの不備を整え、正確なデータとして再構築します。

マーケティング戦略や経営判断などの意思決定に、経験則だけではなくデータを活用する機会が増えました。データを重視し積極的に活用する経営が注目される現代において、データクレンジングの重要性は非常に高いといえます。

データクレンジングはなぜ必要か

データクレンジングは、データを活用する上では欠かせない作業となります。同じ内容のデータでも、入力方法が異なっていれば同一データと判断されず、正確なデータ利用ができないためです。

     
  • 正しくないデータフィールド
  • 不完全なデータフィールド
  • 重複した情報
  • 無関係なデータ
  • 書式設定
  • 不足値
  • スペルミス

このような間違ったデータや重複したデータは「ダーティデータ」と呼ばれます。ダーティデータによって、誤った判断や予測がなされると、データ管理のコスト増につながります。

企業内のデータ管理が重要視される現在においては、データクレンジングによるクリーンで正確なデータ作成は大きな課題だといえるでしょう。

データクリーニングとの違い

データクレンジングと似た意味合いの言葉として「データクリーニング」があります。

データクレンジングとデータクリーニングは、ほぼ同じ意味合いと思って問題ありません。まれに、データ内の古い情報を更新・削除することのみを指して、データクリーニングと呼ぶことがあります。

名寄せとの違い

「名寄せ」もデータクレンジングと同じ意味合いでよく使われますが、厳密にいえば少し内容が異なります。

データクレンジングは、データ内の情報をきれいに整えることです。対して、名寄せは複数に分かれているデータを一つのデータに紐付けする作業を指しています。たとえば、部署ごとに取引口座のデータがある企業を一つにまとめる作業が名寄せで、データの誤りを修正する作業がデータクレンジングです。

データクレンジングを進める際、合わせて名寄せも実施するケースも見られますが、基本的に作業内容は異なっています。

データクレンジングのメリットとは

データクレンジングを実施することで、次のメリットが享受できます。

     
  • 意思決定スピードの向上
  • 業務の効率化
  • コストの削減

意思決定スピードの向上

データクレンジングで得られるメリットは、意思決定スピードの向上です。

分析や管理をおこなう上では、データ内容の正確性が求められます。いくら分析や管理の能力を高めたとしても、データが不正確だと信頼のおける結果は得られません。

データクレンジングによって整理されたデータを利用することで、データ不備の懸念がなくなり、分析スピードが大幅にアップします。

結果として意思決定の高速化につながり、社会情勢の変化にも対応出来る組織作りが可能となります。

業務の効率化

データクレンジングによって、業務の効率化が図れます。

データの一貫性や信頼性が低い場合、本来必要とされない無駄な業務が発生します。

たとえばいくつかの部署で同じデータを管理している場合、部署ごとで入力方法が異なっていたり、重複するデータを入力したりと、データを利用する際に非効率となっている可能性が否めません。

データクレンジングによって、データ利用の際には内容をチェックしなくても正確なデータの利用が可能となるため、修正やチェックにかかる無駄な時間やストレスがなくなり、業務の生産性向上が期待できます。

コストの削減

コスト削減もデータクレンジングで得られる大きなメリットです。

データに不備や重複が見つかった場合、データ修正や削除・再度のデータ抽出・データの再チェックなど、都度人件費がかかります。また、誤った情報をもとに営業活動を進めてしまうと、営業コストが無駄になることも考えられます。重複データの管理のため、サーバーの容量を圧迫している可能性も考えられるでしょう。

データクレンジングによって正しいデータ抽出が容易になり、誤った情報に基づいた業務がなくなると、結果として無駄な人件費や営業活動費もなくなります。

データクレンジングの具体的な進め方

データクレンジングを進めるには、具体的には次の手順を踏んで進めるとよいでしょう。

     
  • データフィールドの特定・データ収集
  • データ整形・不要データの排除
  • データの活用・プロセスの標準化

データフィールドの特定・データ収集

まず、複数で管理されている分散したデータを収集します。収集されたデータは、すべてが必要なものであるとは限りません。対象となるデータはどの部分なのか、特定してまとめることが大切です。

収集したデータから重要なデータを特定した段階で、それぞれのデータに相関関係があるかチェックします。これまで別の場所で管理されていたデータは関連性が薄い可能性があるため、やみくもにデータを取り込むと作業効率が低下する恐れも否めません。

自社のツールや業務プロセスなどをよく見直し、もっとも適していると思われるデータ形式を採用するといった、データの取捨選択が非常に重要となります。

データ整形・不要データの排除

必要なデータを集めた段階で、不要なデータを削除しデータを一つにまとめて整形します。表記の揺れや誤字脱字はこの時点で修正し、不要なデータが見つかれば排除します。採用するデータの基準設定については、データの利用目的を考えて決めるとよいでしょう。

【データ整形の基準例】

     
  • 誤字脱字の訂正
  • 英数字は半角に統一
  • 電話番号や郵便番号のハイフン・スペースの削除
  • 都道府県名の追加
  • 丁・番地の表記統一
  • 企業名の表記統一
  • データの最新化 など

上記の基準で整理されたデータをもとに名寄せを合わせて実行すると、データクレンジング後のデータ利用がスムーズになります。

データの活用・プロセスの標準化

データクレンジングで修正されたデータは、今後の利用方法に合わせて整理・分類し、必要なデータを検索・利用しやすい形で管理するようにします。

なお、データクレンジングは毎回違う方法で行うとデータに悪影響を与えかねないので、プロセスを標準化させる必要があります。データの品質を維持管理するためにデータ入力やデータ利用時のマニュアルを作成し、今後の利用に関してルール作りをして周知しましょう。

また、データクレンジング後も、データのバグや不具合など問題が発生していないか定期的な見直しを実施し、品質管理に努めることが求められます。

データクレンジングの課題と対策

データクレンジングをスムーズに進めるには、次の課題への対策が求められます。

     
  • ルールの明確化
  • ツールの活用

ルールの明確化

データクレンジングについてルールを明確化し、データ利用する従業員すべてに周知するようにします。

データクレンジングは、正確なデータを必要なときに取り出し安くするのも目的のひとつです。運用方法に基づいたデータクレンジングを実施しないと、あまり意味のない作業となる可能性も否めません。データ活用方法を社内で共有し、その運用にあった形で整理することが求められます。

また、データを追加する際のルールも決めておかないと、徐々にデータの精度が下がります。入力時のマニュアル作成や定期的なデータクレンジングなども合わせてルール化しておきましょう。

ツールの活用

データクレンジングには、できるだけツールを活用するとよいでしょう。

手作業でもデータクレンジングは可能ですが、データが大きければ時間がかかり、その分人件費も大きくなります。また、見落としや入力ミスなどのヒューマンエラーも生まれかねません。

データの処理に関しては、データを一括で変換できるツールを使うと手間が大幅に省けます。ただし、最終的には人の目でチェックし、ツールで修正しきれない部分をカバーするようにしましょう。

なお、ツールでは簡単に作業できるからといって必要でないデータを増やすと、データが大きくなり使いにくくなるため注意が必要です。

データクレンジングに利用できるツール5選

代表的なデータクレンジングツールを一覧にまとめました。それぞれのツールによって特徴が異なりますので、自社の運用にあわせたものを選ぶようにしましょう。

ツール名主な特徴
AWS Glue DataBrewアマゾンが提供するクラウドサービス。データクレンジングしたいデータを指定すると、グラフなど視覚的にわかりやすい形式で表示される。
Azure Data FactoryMicrosoftが提供すデータクレンジングツール。SaaSなどさまざまな場所にあるデータを取り込み、コードを使わずにクレンジングできる。
FORCAS株式会社ユーザベースが運営。さまざまな問題を含んだ既存の顧客リストから正しい企業を特定、さまざまな企業属性を付与してデータを整えてくれる。
uSonarユーソナー株式会社が運営。国内最大の820万件の法人データベースを持ち、受注につながるリストを自動作成してくれる。
Talent Data Preparationアメリカに本社を持つTalendが運営。データ使用の最速化を実現し、異常のあるデータを簡単に発見可能。無償トライアルも実施している。

まとめ

データクレンジングは、データの不備を修正して正確性を高める作業です。データの正確性が高まることで、管理や分析の精度が向上し、業務の効率化やコストの削減が図れます。

データクレンジングの目的は、データの有効活用にあります。どのような形でデータ利用するのか、ポイントをおさえたデータクレンジングが重要です。

企業においては、今後データ利用がますます進められると予想されます。データクレンジングを定期的に実施し、データの正確さを保つことが求められるでしょう。

PEAKSMEDIA編集チーム

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