NEWS

東大ら、深海で5カ月以内に分解する生分解性プラスチックを開発

  • COVER
  • NEWS
  • 東大ら、深海で5カ月以内に分解する生分解性プラスチックを開発
PEAKSMEDIAでは、製造業のイノベーターの皆様に向けて、各社が発信する注目のプレスリリースを転載・紹介しています。
技術革新や新サービス、オープンイノベーションへの取り組みなど、未来を切り拓くヒントとなる情報を厳選してお届けします。
図1 酵素内包生分解性プラスチックと深海分解(出典:NEDO)

NEDOは2026年10月22日、東京大学と海洋研究開発機構、群馬大学が、深海をはじめとする分解微生物が極めて少ない海洋環境でも生分解が大幅に速く進む「酵素内包生分解性プラスチック」を開発したと発表した。岸壁では1カ月以内、水深757m付近の深海でも5カ月以内に完全に分解した。研究成果は2026年10月21日に国際総合科学誌「Nature」のオンライン版に掲載された。

分解酵素を熱混練で埋め込み分解速度を約30倍に

作製では、生分解性プラスチックに自然由来の分解酵素を、それぞれのプラスチックの熱軟化点以上で熱混練する。使った酵素は、糸状菌の一種から得られるHiCクチナーゼと、南極酵母の一種から得られるCaLBリパーゼである。酵素を添加しても元のプラスチックと同等の強度や柔軟性を保ち、さまざまな製品への熱成形加工にも対応する。

分解の実測値では、岸壁で1カ月以内、水深757m付近の深海で5カ月以内に完全に分解した。分解速度は酵素を内包していない場合と比べて約30倍だった。低温かつ高水圧の深海の条件は、水温4℃、水圧7.6MPa、すなわち大気圧の約75倍にあたる。そこでもプラスチック内に包埋された酵素は変性や失活を起こさず、分解活性を維持した。

図2 深海、岸壁に設置した酵素未内包および酵素内包生分解性プラスチックの重量減少率(出典:NEDO)

水に触れたときだけ分解が始まるスイッチ機能

生分解開始スイッチ機能とは、使用中は通常のプラスチックと同じように使え、環境中に流出した際にpHや温度、塩濃度、水圧などの外部環境の変化や、摩耗や破壊といった物理的作用によって分解が始まる機能である。開発した材料に埋め込まれた酵素は、水のない環境では分解活性を発現しない。乾いた環境で製品として使っている間は分解がほとんど進まず、環境中に流出した後に物理的な崩壊や表面摩耗で酵素に水が触れると分解が始まる。

この材料から作製した直径数十マイクロメートルのマイクロビーズも、さまざまな海洋環境下で速やかに分解した。マイクロプラスチックは大きさ5mm以下の微細なプラスチック片で、断片化によって生じる汚染の低減につながる結果である。

生分解性プラスチックの社会実装に向けた長期耐久性と安全性の検証

背景にあるのは、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出している可能性があるという報告(Science 347, 768, 2015年)である。そのほとんどは山や川、湖、海のいずれの環境でも300年以上分解しないプラスチックとされる。

本事業では2024年に、さまざまな生分解性プラスチックが水深757mから5552mの深海底で微生物により生分解されることを明らかにしている(Nature Communications, 15, 568, 2024年)。ただし一部の生分解性プラスチックは深海での生分解速度が非常に遅く、完全な分解には速いものでも数年かかることが同時に判明した。

NEDOは今後、実際の使用環境における長期耐久性や安全性の検証、多様な生分解性プラスチック素材への適用拡大、酵素内包プロセスの効率化とコスト低減、スケールアップを進める。
事業名は、ムーンショット型研究開発事業「生分解開始スイッチ機能を有する海洋分解性プラスチックの研究開発」で、事業期間は2020年度から2029年度までを予定する。


関連情報

プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000322.000135644.html
NEDO「ムーンショット型研究開発事業」:https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100161.html

論文DOI(Nature オンライン版、2026年10月21日掲載)
10.1038/s41586-026-11192-1

《お知らせ》
PEAKS MEDIAのLinkedinページを開設しました。最新記事の概要をキャッチアップできます。
フォローはこちらから

この記事の編集者

PEAKSMEDIA_ニュース配信チーム

PEAKSMEDIAは、「製造業イノベーション」をテーマに松尾産業株式会社が運営するWebメディアです。

製造業をもっと面白くする——そんな技術や素材、アイデア、先進的な取り組みに関するニュースリリースを転載し、情報発信を行っています。

掲載をご希望のニュースがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

SHAREこの記事をシェアする

  • facebook
  • X
  • LinkedIn