
堀場製作所は2026年8月18日、浸炭用アセチレン制御システム「FA-100」を発売した。アセチレン濃度のリアルタイム計測と供給量の制御を一体化したシステムで、同社調べでは国内初となる。一般的なガス浸炭と比べてCO2排出量を90%以上削減できる次世代技術「常圧スマート浸炭」の運用を支える。
浸炭工程のCO2排出量を90%以上削減する常圧スマート浸炭
浸炭とは、炭素を含むガス中で金属部品を加熱し、表面に炭素を浸透させたうえで急冷し、表面を硬化させる熱処理技術である。自動車や産業機械の金属部品の耐久性を高める用途で広く用いられている。
一般的なガス浸炭は850から950℃で処理し、安定した品質を得られる一方、エネルギー消費量とCO2排出量の多さが課題となっていた。これに対し、既存のガス浸炭炉を活用しつつ、従来の変成ガスに代えてアセチレンを用いる常圧スマート浸炭が開発された。変成ガスは、炭化水素系ガスなどを高温で反応・分解させ、浸炭に適した組成へ調整したガスを指す。
常圧スマート浸炭は、アセチレンガスと窒素ガスを用いて鋼部品に直接浸炭する処理技術だ。一般的なガス浸炭で必要な変成炉を使わず、火炎による変成ガスの生成工程を省略できるため、浸炭工程のCO2排出量を90%以上削減できる。削減率は、一般的なガス浸炭反応式から算出した堀場製作所の計算値で、使用方法や条件により効果は異なる。既存の浸炭炉をそのまま活用できるため、大規模な設備改造を伴わずに導入できる。なお、常圧スマート浸炭は高圧ガス工業の登録商標だ。

実用化には、炉内のアセチレン濃度や反応状態を高精度に把握し、安定的に制御する技術が課題となっていた。
計測と供給量制御を一体化した浸炭向けシステム
「FA-100」の特長は2点ある。第1に、アセチレン濃度の計測と供給量の制御を一体化した点だ。常圧スマート浸炭では、炉内のアセチレン濃度をリアルタイムで把握し、変化に応じて供給ガス量を細かく調整できるかどうかが浸炭の品質を左右する。同システムはこの管理を一つのシステムで担う。
炉内のガス分析には、同社独自の赤外ガス分析技術「IRLAM(アーラム)」を採用した。赤外レーザ吸収変調法を用いるもので、高温環境下でも高感度かつ高速にガス濃度を測定する。供給ガスの制御には、半導体事業を担う堀場エステックの主力製品であるガス流量制御機器「マスフローコントローラー」を組み合わせた。炉内のガス環境の変化に応じ、必要なアセチレン量を必要なタイミングで調整する。
第2に、主要な操作を集約し、運用負荷を軽減した点だ。主要操作を画面からワンタッチで実行でき、炉内へのアセチレン導入のオン・オフも、事前に登録したシーケンスに基づいて自動で切り替えられる。運転条件に応じた操作を標準化しやすくなり、立ち上げ時の調整や日々の運用負荷を軽減する。
本製品は、環境省の公募事業「常圧窒素アセチレンガス浸炭法の開発」における実証成果をもとに製品化した。同事業は高圧ガス工業と日本テクノが共同開発した技術で、堀場製作所はアセチレンガスの計測・制御において共同実施者として参画した。同社は今後も、製造プロセスの高度化と脱炭素化の両立に取り組むとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000058.000103757.html
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