
CCS(二酸化炭素回収・貯留)技術の社会実装には、発電所や工場で回収したCO2を貯留地点まで安全に大量輸送する「液化CO2輸送船」が不可欠なインフラとなる。商船三井はサムスン重工業(韓国)と共同で、この液化CO2輸送船にウインドチャレンジャー(硬翼帆式風力推進装置)を3基搭載する新船型を開発し、2026年4月14日に日本海事協会(ClassNK)から基本設計承認(AiP)を取得した。液化CO2輸送船へのウインドチャレンジャー搭載は世界初だ。
本船型は全長約224m・全幅35.2m、貨物槽容積4万m³を備える。硬翼帆は最大高さ約49m(3段式)・幅約15mの繊維強化プラスチック製で、自動制御で伸縮・回転し、最適な角度で風力を推進力に変換する。3基搭載による燃料消費量とGHG排出量の削減が期待される。設計面では操船設備と居住区を船の前方にまとめて視界を確保しつつ3基搭載を可能にした。SHIおよびClassNKとのHAZID(ハザード識別スタディ)を通じ、風力推進装置付き液化CO2輸送船に特有のリスクも洗い出し済みだ。
今回の意義は、ウインドチャレンジャーの適用範囲がCCSバリューチェーンにまで広がった点だ。CO2の排出源から輸送・貯留に至る一連のプロセス全体でGHGを削減することが求められる中、輸送プロセス自体が排出源にならないよう風力推進を組み込む設計は、CCSの「脱炭素の整合性」を高める。
商船三井は4月20日にも石炭輸送船「黒滝山丸Ⅲ」へのウインドチャレンジャー既存船改造搭載を発表したばかりで、今回のAiP取得と合わせると、同装置の適用対象が石炭船・LNG船・液化CO2船と急速に広がっている。同社は2030年までに搭載船25隻、2035年までに80隻を計画しており、すでに8隻への搭載が決定している。
製造業にとって、CCSバリューチェーンへの参画はScope 3排出量削減の一手段として現実味を増している。排出源でのCO2回収・液化から輸送・貯留までのインフラが整備されるほど、製造業が自社の排出量をオフセットする選択肢が広がる。
なお本AiPの授与記念式典は2026年4月22日に東京ビッグサイトで開催された「Sea Japan 2026」のClassNKブースで行われた。AiPはあくまで概念設計段階の承認であり、実際の建造・就航には型式認証と発注が必要だが、液化CO2輸送の商用化フェーズが近づくなか、こうした船型の開発が着実に進んでいることは脱炭素サプライチェーンの基盤整備として注目に値する動向だ。
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プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000543.000092744.html
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