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熊本大学ら、数ミリ秒のパルス電流でチタン合金の靭性を最大30%向上 エネルギー消費も50%削減 Nature Communications掲載

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高密度パルス電流による「電子風力(非熱的効果)」が原子を動かし、短時間で相変態と組織微細化を誘起する模式図

金属材料の加工において、熱処理は合金の組織を制御する主要な手段だが、長時間・高エネルギーを要するうえ、望む組織への制御が難しいケースが残る課題だった。熊本大学先進マグネシウム国際研究センターの顧少杰助教らの研究グループは、わずか数ミリ秒の電流処理でチタン合金を大幅に強靭化する新手法を開発し、2026年4月13日付で国際学術誌「Nature Communications」に掲載された。

手法の核心は「高密度パルス電流(HDPEC)処理」だ。二相チタン合金にパルス電流を瞬時に流すことで、非平衡な原子拡散と相変態を誘発し、結晶組織の微細化および多相化を実現する。その結果、材料の靭性を最大30%向上させることに成功した。従来の熱処理が時間をかけて熱を介して原子を動かすのに対し、本手法はパルス電流中を流れる電子が原子を直接押し動かす「電子風力(非熱的効果)」を活用する点が特徴だ。

加工エネルギーの面でも顕著な成果がある。従来の熱処理と比較してエネルギー消費を50%以上削減できることを確認した。数ミリ秒という処理時間とエネルギー効率の高さは、製造工程への組み込み可能性を高める。

チタン合金は軽量かつ高強度・耐食性から航空機構造材や人工関節など高付加価値製品に広く使われているが、切削難易度の高さと処理コストが課題だった。今回の技術は「強度と靭性の両立」という素材設計上の難問を電流という新たな手段で突破したもので、航空・医療以外にもEV・ロボット・宇宙産業などチタン合金が使われる製造分野全般への展開が期待される。

研究グループは、本手法がチタンにとどまらず、アルミニウム合金やマグネシウム合金など他の金属材料への応用にも発展できると見ており、「電流を用いた金属材料組織制御」という新しい材料設計戦略の確立を目指している。製造業のR&D・新材料探索担当者にとって、素材の加工プロセス革新という観点から注目に値する研究成果だ。本研究は科学技術振興機構(JST)および日本学術振興会(JSPS)科研費の支援を受けて実施された。

また、同研究グループは、熊本大学、九州大学、名古屋大学、浙江大学(中国)の4大学・研究機関が参加するという点でも、国際的な産学連携の枠組みとして注目される。チタン合金分野は中国・欧米の材料メーカーとの競争が激しいなか、日本発の基礎研究が「加工プロセスの革新」という切り口でブレークスルーを生んだ意義は大きい。製造業における素材調達・新材料開発の視点からも動向を追う価値がある。


関連情報

プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000344.000124365.html

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