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【EVENT】なぜ事業創造に風土醸成が必要なのか| 東洋製罐グループHD×椿本チエインが語る挑戦を生む組織

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PEAKS MEDIAは2026年9月30日、公開インタビューイベント「PEAKS RELAY Interview」の第1回を大阪・梅田の「NORIBA10 umeda」で開いた。ゲストは東洋製罐グループホールディングスの竹内友里氏と椿本チエインの國松幸平氏。川崎重工の武井啓氏が共同モデレーターを務めた。テーマは「なぜ事業創造に風土醸成が必要なのか」で、人が自ら動き出す環境のつくり方を3人が語り合った。
2026年9月30日、NORIBA10 umeda(大阪・梅田)で開いた「PEAKS RELAY Interview」第1回

PEAKS MEDIAはこれまで、製造業で新規事業やイノベーションに取り組む人を取材してきた。取材の場には、記事に書ききれない話や、文章だけでは伝わらない人柄がある。PEAKS RELAY Interviewは、そうした実践者同士が企業を越えて出会い、経験や問いを持ち寄る場として始まった。答えを出すより、対話から生まれた問いを翌月の実践者へ引き継ぐ。名前の「RELAY」はその仕組みを指す。

Season 1のテーマは「『挑戦が生まれる環境』をつくる人」で、2026年9月から11月までの3回を予定する。第1回の主題を風土醸成に置いた理由について、進行役を務めたPEAKS MEDIAの加藤祐麻は次のように話した。

「新規事業と聞くと、どうしても事業そのものに目が向きます。ところが取材で事業の話を聞いているはずが、社内の話、そして組織や人の話に戻ってくることが非常に多いと感じていました」

ゲストの椿本チエイン・國松幸平氏(左)と、東洋製罐グループホールディングス・竹内友里氏(右)。國松氏は社内新事業提案制度「T-Startup」の運営や風土醸成に取り組み、竹内氏はイノベーション推進室でイノベーションが起こる組織づくりを進める。異なる立場から、人が挑戦できる環境について語り合った。
共同モデレーターの川崎重工業・武井啓氏(左)と、PEAKS MEDIA・加藤祐麻(右)。武井氏は「製造業イノベーターTrain」のメンバーとして、企画段階からテーマや登壇者の検討に参加。当日も製造業の新規事業に携わる実践者の視点から、対話に加わった。

なぜ事業創造に「風土」が必要なのか

議論の起点になったのは、竹内氏の経験だ。竹内氏は食品の研究、開発、知財の各部門を経て、2021年にスタートアップのRelicへ半年間のレンタル移籍を経験した。社外では、東洋製罐グループと一緒に新しい容器をつくりたいとの声を聞いた。社外に需要があり、社内に技術がある。それならうまくいくはずだった。

「欲しい人がいるのに出せない。いい研究者や開発者がいるのに開発ができない。社内に戻って、その状況に驚きました」

帰任後に社外のニーズを社内へ持ち込んでも、既存事業の売上規模と比較されるとメリットが見出しにくい。竹内氏はここでまず、新しい価値創造が始められる組織づくりをすると決めた。所属するイノベーション推進室(以下、「推進室」)は、イノベーションを自ら起こす部署ではない。グループには新規事業を担う部署が別にある。推進室のミッションは「イノベーションを起こす組織をつくる人を育てる」ことで、新規事業の本数や売り上げのKPIは持たない。竹内氏は組織の課題を肩こりにたとえる。

「肩こりは、もめばその場は楽になっても、翌日にはまた痛みます。全身の血流を良くし、運動や食事の習慣を変えなければ治りません。どこか一部門だけを変えようとしてもうまくいかない、と実感してきました」

推進室が2026年7月に社内公開した社長の対話型AI「AI社長」は、バージョン0.9のまま出した。完成させず、社員が関わる余地を残すためだ。ペットボトルを金型なしで膨らませる自社の「フリーブロー」技術は、スタートアップと組んで展示会で実演した。来場者の反応を見た自社の社員は自分たちの技術力や製品の可能性を見出すきっかけになり、展示で接点を持った企業が別の製品にも関心を示すことにつながった。

竹内氏は、一見事業に直結しない活動にも本気で手間をかけてきた。その積み重ねが、自社にとって新しい領域への挑戦にもつながったと振り返る。

そして、こうした取り組みを「資本の氷山モデル」を使って説明した。

水面の上に見えているのは、売り上げや利益、キャッシュフローといった財務的な価値。しかし、それは企業が持つ資本の一部にすぎない。水面下には、技術や知的財産、人材、人と人との関係性がある。さらに「らしさ」や社風、伝統といった、目には見えにくい資本も広がっている。新規事業ではどうしても売り上げや市場規模といった水面上の成果に目が向くことが多い。

一方、推進室が働きかけているのは、その成果を下から支える水面下の部分だ。技術を掘り起こし、人と人をつなぎ、社員が新しい価値観に触れる機会をつくる。すぐに数字には表れなくても、目に見えない資本を育てることが新しい挑戦につながると竹内氏は考えている。

目に見えない「資本」が、挑戦を支えている

この図を見た國松氏も、自身が取り組む風土醸成との共通点を指摘した。

2004年に椿本チエインへ入社し、研究開発部門で自動車エンジン用タイミングチェーンシステムなどの開発に長く携わった。社外や他部署から自社を見る経験を経て、「技術をつくるだけでなく、事業をつくる力を身につけたい」と自ら手を挙げ、新規事業の領域へ。現在は社内新事業提案制度「T-Startup」を推進し、挑戦する社員を支える立場にいる。

氷山モデルの水面下にあるものを、國松氏はさらに「人の行動」から逆算して捉える。外から見えるのは、人の行動やその結果だ。しかし、その行動は日々の習慣から生まれ、習慣の背景には会社の仕組みや組織がある。さらにその奥には、一人ひとりの物の見方や価値観がある。

つまり、目に見える行動だけに働きかけても、人はなかなか変わらない。行動の下にある習慣、仕組み、価値観まで含めて考える必要がある。竹内氏が進めてきた取り組みも、こうした視点から見れば、社員の行動そのものではなく、その下にある仕組みや組織へ働きかけるものと重なる。

ここから話題は、「人はどうすれば動き出すのか」へと進んだ。

二人に共通するのは、社外に出たことで、それまでとは違う価値観に触れ、自社や自身の仕事を見る目が変わった経験だ。一方で、同じ経験を用意すれば、誰もが同じように変わるわけではない。

そこで、こんな問いが投げかけられた。

「手を挙げて外に出るのと、上司に言われて出るのとでは、感じ方がまったく違うと思います。外に出たときに感じる部分を、どうすれば感じやすくしてあげられるのでしょうか」(竹内氏)

返ってきたのは、「育てるのか、育つのか」という問いだった。

「自分がいいと思ったやり方を伝えても、それが本人にとっていいとは限りません。仕組みや組織を整え、習慣をつけるところまでそろえたら、あとは本人がやるかどうかを待つしかないと考えています」

この言葉を受けて、竹内氏にも思い当たる節があった。自身が大きく変わった経験から、社員に同じ環境を用意しても、誰もが同じように変わるわけではなかった。何に反応し、何をきっかけに動き出すかは人によって違う。だからこそ、組織を動かす側も、さまざまなきっかけを用意しながら試し続けるしかない。

二人の対話から浮かび上がった考えを、竹内氏はこんな言葉で表した。

「ここに石を置いてみる、あそこに木を植えてみる。環境を少しずつ変えながら、誰が何に反応するかを見守ることなのだと思います」

「やってはいけなくないこと」とは、何か

本人が動き出せる環境をつくるとして、その中で本人が「自分で決めて動いていい」と思える範囲を、どう広げていくのか。

國松氏が紹介したのは、「やってはいけなくないこと」という考え方だった。

既存事業では「やってはいけないこと」と「やっていいこと」の境界が比較的はっきりしている。一方、新規事業の仕事は、その間にある「やっていいのか、まだ分からないこと」の領域にあり、多くの人がそこで迷う。

「やってはいけなくないことは、やってみていいことです。犯罪のように本当にやってはいけないこと以外は、やってみなければ良しあしも、どんな波及を生むかも分かりません」(國松氏)

この言葉を聞いて、竹内氏は知財部門にいたころを振り返った。他部署の依頼に沿って調査や出願を進め、報告するのが仕事で、評価も依頼どおりにできたかで決まる。異動後の推進室では「これをやりなさい」と言われることがなく、自分で何をするかを考える必要があった。

「そのときは、やってみたいことがあっても、一歩を踏み出すのがとても怖かった。今、そのことを思い出しました」

一方で竹内氏は、上司が「やっていい」範囲を広げてくれていたことにも気づいたという。竹内氏の上司は、竹内氏の動きを細かく管理しなかった。

「ある意味で野放しにしてもらっていたから、私は『やっていい』を増やせたのだと気づかされました。また、今、私がAI社長や宇宙の取り組みを通じて、本業から離れても『ここまでやっていい』と社内に示しているのも、同じことだと思います」

「任せる」と「任される」の間にあるもの

ここで共同モデレーターの武井氏が、「任せる側」の視点を加えた。

「任せるのは上司も怖いと思います。でも、任される本人も怖い。自分で決めたことには責任がついて回ります」

その双方の怖さを越えて任せ合う土台になるのが、日々の仕事で積み重ねた信頼だ。武井氏は、社内で一見、本人の関心に基づいて自由に動いているように見える人も、実際には自分のやりたいことと会社にとっての価値を重ねながら行動していると話す。

「目指す方向性や目的など、大きなところを外さないという信頼関係があれば、何のためにやるのかをその場ですべて言葉にできなくても、『価値があると思っているからやるのでしょう』と通じ合えます。あうんの呼吸のようなものだと思います」

その信頼は、日々の仕事への向き合い方から生まれる。武井氏自身も若手のころは、任された仕事に一つひとつ向き合うことで、周囲との信頼を築いてきたという。

一方、竹内氏は「一生懸命になるポイントは、人によって違うのではないか」と応じた。何に本気になれるかは人それぞれだからこそ、一人ひとりを見ながら任せ方や背中を押すタイミングを考える必要がある。対話は、そんな「任せ方」の違いにも広がっていった。

「風土が変わった」は、何で分かるのか

新規事業の件数や売り上げが出る前に、風土の変化はどこに表れるのか。最後に3人がそれぞれの見方を示した。

竹内氏が挙げたのは、社員の表情である。理想とする風土は、レンタル移籍先のスタートアップで見たものだ。

「若いメンバーがいきいきした表情で発言したり、冗談が出て、笑顔が見えるようになったり。単純なことですが、風土の変化はまずそんなところから表れると感じています」

國松氏が挙げたのは、価値観の新結合である。

「価値観の新結合を心地よく感じられる人が増えていく状態だと思います。他人の価値観を受け入れ、新しい価値観に出会えば喜べる。そうした人が増えれば、世の中に何かを届けたくなるマインドセットにつながるのではないでしょうか」

武井氏は、風土の変化を人の意識の変化として説明した。

「仕事とは本来、提供した価値に対して対価を得るものだと思います。一方で、費やした時間そのものが評価の基準になってしまうと、『どれだけ短時間で終えたか』ということに意識が向きがちです。『どれだけの価値を生み出せるか』という視点を持つことで行動が変わり、その積み重ねが組織の風土の変化にもつながるのではないでしょうか」

会場の参加者からは、風土を変えるとき最初にどこから手をつけるのかとの質問も出た。竹内氏の答えは、担当者層からの働きかけである。トップは失敗を許容し挑戦を促していても、その思いが現場まで届かないことがある。当時担当者層にいたメンバーがミドル層に上がり、時間はかかるものの、組織は少しずつ変わるという。國松氏は、トップの応援を前提に、中間層が自らの権限の範囲でどこまで自由を支えられるかが大事になると述べた。

NEXT RELAY:風土が先か、事業が先か

対話の終盤、國松氏が一つの問いを投げかけた。

「私は風土を変えようと取り組んでいますが、イノベーションが生まれていないと動き出せない人もたくさんいます。誰かの挑戦が形になるのを見て、自分たちにもできるかもしれないと動き出す人もいる。風土が先なのか、イノベーションが先なのか」

竹内氏も、同じ問いを抱えていると応じた。

挑戦しやすい風土があるから、新しい事業が生まれるのか。それとも、一つの挑戦が形になり、それを見た周囲が動くことで風土が変わっていくのか。

第1回の対話は、一つの答えには収まらなかった。約90分の公開インタビューで生まれたこの問いは、2026年10月30日に開く第2回へ引き継がれる。第2回には2人が登壇する。NTT西日本グループ 地域創生Coデザイン研究所の及部一堯氏と、川崎重工業 エネルギーソリューション&マリンカンパニーの大道義範氏だ。

PEAKS RELAY Interview #02

登壇者

及部 一堯(およべ かずたか)氏
NTT西日本グループ/地域創生Coデザイン研究所 戦略企画部 担当部長

大道 義範(だいどう よしのり)氏 
川崎重工業株式会社 エネルギーソリューション&マリンカンパニー 舶用推進ディビジョン 舶用推進企画部 事業戦略課 課長

関連情報

イベント告知ページ
PEAKS RELAY Interview#2|「挑戦が生まれる環境」をつくる人【NTT西日本グループ 地域創生Coデザイン研究所×川崎重工業】 | Peatix 

対話は、交流会へ

公開インタビューの後は、登壇者と参加者を交えた交流会を開いた。

PEAKS RELAY Interviewでは、登壇者の話を聞くだけでなく、異なる企業や立場で挑戦に向き合う人たちが出会い、それぞれの経験や課題を共有する時間も大切にしている。

終了後のアンケートでは、異業種との交流や多様な参加者との出会いに加え、和やかな雰囲気を評価する声も寄せられた。「懇親会で新たな出会いがあった」「新しいつながりも生まれた」「妙にアットホーム」といった感想もうれしいものだった。

製造業の変革に取り組む人たちは、それぞれの企業や組織のなかで、簡単には答えの出ない課題と向き合っている。だからこそ、企業の垣根を越えて経験や悩みを分かち合い、新しい視点や仲間に出会えることには意味があると思う。

PEAKS RELAY Interviewも、そんな人たちが気軽に集まり、次の一歩につながる何かを持ち帰れる場でありたい。製造業の未来をつくろうとする一人ひとりの挑戦に、少しでも力になれるよう、この場を育てていきたい。

会場のNORIBA10 umeda。多様な人やアイデアが交わり、新たな挑戦を後押しする大阪・梅田の共創拠点。「PEAKS RELAY Interview」も、企画段階から支援を受け、Season 1の会場として協力を得ている。

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この記事の編集者

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