
出光興産は2026年9月8日、米国に宇宙用CIGS太陽電池の開発ラボを開設したと発表した。同社初の海外拠点となる。カリフォルニア大学サンタバーバラ校が運営する産学官連携型のイノベーション拠点「OASIS」内に置き、衛星メーカーなどとの技術協議を通じて市場ニーズを把握しながら、試作・評価を進める。開発サイクルを短縮し、早期の事業化を目指す。
CIGS太陽電池の顧客接点を宇宙産業の集積地に置く
CIGS太陽電池とは、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる化合物半導体を発電層に用いる薄膜太陽電池である。
米国に拠点を置く理由は、市場の所在にある。米国には宇宙産業の主要プレイヤーや衛星メーカーが数多く拠点を構えており、宇宙用CIGS太陽電池の事業化を進めるうえで重要な市場となる。OASISは宇宙関連企業が集まる地域に位置し、顧客との技術協議を進めやすい立地だ。実験スペースやオフィス環境も整っている。
ラボが担う機能は4つある。顧客および宇宙関連企業との技術協議、市場ニーズの把握と日本の研究開発拠点へのフィードバック、試作・評価および信頼性実証、技術解析および顧客課題に応じた技術提案だ。現地で得た知見を日本の研究開発へ戻し、製品開発や量産技術開発にも活用する。
放射線耐性とレアメタル使用量の抑制が特徴
既存の宇宙用太陽電池には課題があった。強い放射線による劣化、高コスト、レアメタルの大量使用、製造に時間を要するため生産量が限られる点などだ。宇宙空間では地上と異なり、太陽からの高エネルギー粒子や宇宙線が直接降り注ぐため、材料の劣化が進みやすい。
同社が開発する宇宙用CIGS太陽電池は、高い放射線耐性による長寿命と、レアメタルの使用量を抑えられる点を特徴とする。独自の製造技術を活用することで、高い生産能力と価格競争力につながるとしている。
事業化に向けた国内の動きも進む。同社は2027年をめどに、量産技術を開発するベンチプラントの立ち上げを進めている。ベンチプラントは、研究室での試作と本格的な量産設備の中間にあたる小規模な生産設備を指す。稼働後は、市場環境や技術開発の進展を踏まえ、本格的な量産設備の導入も検討する。
2026年6月には、JAXAの「宇宙戦略基金」による補助金交付が決定しており、宇宙用CIGS太陽電池の量産技術開発を加速している。
出光興産は中期経営計画(2026年度から2030年度)で、電化・電動化/ICT融合領域を成長分野の一つに位置付け、その発展の鍵となるマテリアル・ソリューションの展開を進めている。宇宙産業への事業展開は、その一環にあたる。同社は、米国での開発ラボ開設と量産体制の構築を通じて早期の事業化を進め、持続的な宇宙利用を支えるエネルギーデバイスとして宇宙産業に貢献するとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000676.000023740.html
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