
富士フイルムと堀場製作所は2026年6月16日、バイオ医薬品製造の培養・精製工程におけるタンクや装置内の成分濃度を、連続的にリアルタイムで可視化する「インラインラマン高感度計測システム」を共同開発したと発表した。本システムを使用して抗体医薬品製造の精製工程を管理した場合、従来の紫外可視吸光光度法による管理と比較して抗体の収率が約10%向上することを、富士フイルムのモデル実験系で確認している。富士フイルムは2026年6月22日から25日に米国サンディエゴで開催される「BIO International Convention」に本システムを展示する。
バイオ医薬品は、タンパク質などの生体由来分子をもとにした医薬品で、抗体医薬品や細胞・遺伝子治療薬など多様なモダリティへと進展している。がんや免疫疾患などの幅広い疾患の治療に使われ、富士フイルムの推定では年率約9%で市場が成長している。製造過程では、培養液・精製液中の成分のわずかな条件変動が製品の品質や収率に大きく影響する。一方、製造途中の培養液や精製液をサンプリングして分析する従来のオフライン分析では、成分の変化をリアルタイムに分析することが難しかった。
両社が開発したシステムは、高感度ラマン分光装置と高集光効率シングルユースプローブ、独自の計測アルゴリズムを組み合わせたものだ。富士フイルムが写真・光学デバイス事業で培った光学設計技術およびバイオCDMO事業のバイオ医薬品製造の知見と、堀場製作所が持つラマン分光の技術を融合し、富士フイルム調べで業界最高感度を実現した。
ラマン分光は、光の散乱を利用して物質の構造や成分を明らかにする技術だ。これを製造プロセスに適用することで、試料を取り出すことなく、製造工程中の化学組成や反応状態を連続的に非破壊で分析できる。堀場製作所のラマン分光装置は、過酷な使用環境下での安定したモニタリングが求められる石油業界の精製工程で実績を持ち、長期稼働に耐える堅牢性を備える。温度上昇により生じる信号のゆらぎを最小化する独自のノイズ低減設計で高感度化を実現し、測定値のずれを自動的に校正する機能で高精度な連続計測を可能にする。これに富士フイルム独自の高集光効率プローブを組み合わせることで、従来は難しかった微弱信号の取得を実現した。
適用事例として示されたのが、抗体医薬品製造の精製工程における収率向上だ。従来の紫外可視吸光光度法による工程管理では、タンパク質の総量は分析できるものの、抗体と組成が類似した不純物を識別することが難しかった。本システムは、高いSN比のラマンスペクトルから抗体や不純物に由来する波数を計測アルゴリズムで抽出し、抗体と不純物の濃度を識別して連続的に計測する。これにより、不純物濃度を基準内に管理しつつ、抗体濃度が最大になるタイミングで抗体を回収でき、約10%の収率向上が確認された。
培養工程では、培養液中の複数のアミノ酸を識別して連続的に計測し、タンク内の成分の経時的変化を分析・可視化できる。両社は早期の実用化に向けて実装検証を進め、抗体医薬品をはじめとする高品質なバイオ医薬品の安定製造および製造コスト低減への貢献を目指すとしている。
関連情報
プレスリリース:https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/13668
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