
日立製作所は2026年7月24日、エンタープライズ向けのシステム構築(システムインテグレーション)の全工程にAIを適用する「Agentic AI Integration Platform」を開発したと発表した。外部環境分析や構想策定から、要件定義、設計、コーディング、テスト、運用までの各工程に、それぞれ最適なAIエージェントを組み込む。安全性を確保しながら生産性を高め、2027年度に工程全体で生産性30%向上を目指す。
システムインテグレーションは、複数のハードウェアやソフトウェアを組み合わせ、企業の業務システムとして構築することを指す。開発の背景には、熟練エンジニアの減少や、既存システムの複雑化・ブラックボックス化、事業環境の急速な変化への対応など、企業が抱えるシステム課題の増大がある。
本プラットフォームは、外部との連携によるフロンティアAIと、日立が培ってきたITおよびOT(制御・運用技術)双方のシステム構築の知見、子会社のGlobalLogicが持つAI技術を組み合わせられる。フロンティアAIは、最高水準の能力・規模・性能を持つ大規模AIモデルを指す。日立は自社でのLLM開発は行わず、外部連携を通じて最先端のAIモデルを柔軟に選べる環境を整えている。
中核を担うのが、FDE(Forward Deployed Engineer)と呼ぶ技術者チームだ。FDEチームが顧客の構想策定・開発・運用の現場に入り込み、本プラットフォームを使いながら伴走する。既存システムを新しい技術で刷新するモダナイゼーションの過程で、顧客固有の暗黙知を形式知化し、AIが読み取れる「企業コンテキスト」として蓄積する。さらに、AIエージェントが各工程を実行するたびに新たなノウハウを学習してこのコンテキストを自律的に更新し、システム構築の品質と生産性を継続的に高める。
本プラットフォームの提供価値は3点ある。1つ目は、AI開発の安全性向上とコスト最適化につなげるAI基盤だ。Anthropic、Google Cloud、OpenAIなど複数のフロンティアAIを柔軟に選べる基盤を整備し、セキュリティやコスト、信頼性を管理・統制する機能を備える。GlobalLogicの開発ツールとの連携環境では、AIの処理量に応じて生じるトークン利用料を最大54%削減できることも確認した。2つ目は、AIが読み取れるナレッジベースを起点とした自律的な進化だ。顧客の「企業コンテキスト」と、日立が基幹システムで培った知見を、AIが活用しやすい形で蓄積する。3つ目は、プラットフォームの高度化だ。高い信頼性が求められるOT領域への適用に向け、制御システム独自の仕様を前提としたコード生成基盤の社内試行を始めている。
日立は、自社を最初の適用先とする「カスタマーゼロ」の実績として、生産性向上の効果を確認している。要件定義でシステム画面の仕様を確定する作業で最大240倍、設計からテストの工程では自社パッケージ製品の機能拡張を対象とした試行で約200倍の生産性向上を確認した。いずれも社内の特定条件下での実証値で、効果はプロジェクトの規模や特性で異なる。日立のシステム開発におけるAI活用率は、すでに60%を超える水準にある。
日立は、約1万5000の顧客システムの導入実績と運用保守の経験を活かし、拡大するモダナイゼーション需要に本プラットフォームを適用する。今後は大規模なレガシーシステムを持つ金融・公共分野や、エネルギー・鉄道などの社会インフラへも広げ、次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi」の展開を加速するとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000605.000067590.html
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