
日立製作所は2026年7月16日、NVIDIAとの協業のもと、製造現場や社会インフラ運用の自律化に向けたマルチエージェント オーケストレーション技術を開発すると発表した。AIで社会インフラを革新するソリューション群「HMAX by Hitachi」のスケール化と進化を狙う。日立製品だけでなく、顧客の現場で稼働する既存設備や他メーカーの機器もベンダーフリーで連動させ、現場全体の最適化と自律化につなげる。
フィジカルAIは、現場の状況を認識・理解し、自律的な判断と物理的な動作につなげるAIを指す。高度なフィジカルAIには、多様なAIエージェントや異なるメーカーのロボット・設備をシームレスに接続し、統合的に制御することが欠かせず、ベンダーに依存しないオープンなソフトウェアが必要になる。一方で、企業独自の情報資産が流出しないよう、ソブリン性を担保したクローズドなLLM環境も求められる。ソブリン性は、データやAIを自社・自国の管理下に置く考え方だ。
両社は、この2つの要件の両立に取り組む。日立の社会インフラ知能基盤モデル「IWIM(Integrated World Infrastructure Model)」を知識・推論基盤として活用し、NVIDIA Agent ToolkitやNemoClaw/OpenShellセキュアランタイム、オープンソースのNemotronモデルと連携する。これにより、ミッションクリティカルな環境でも複数のAIエージェントを安全に統合制御する「マルチエージェント オーケストレーション プラットフォーム」の構築を目指す。IWIMは、日立が2025年11月に発表した知能基盤モデルで、長年蓄積してきたOT(制御・運用技術)の知見と物理現象の理解をもとに開発された。
制御を物理世界で安全に稼働させるため、IWIMとNVIDIAの世界基盤モデル「Cosmos」を接続し、デジタルツイン上に事前検証環境を構築する。世界基盤モデルは、物理法則を含む現実世界の振る舞いを学習したAIモデルだ。
具体的な技術検証は3点ある。第1に、IWIMとCosmosの接続により、現場の物理的制約や安全ルールを事前にシミュレーションし、AI特有のハルシネーションに起因する誤作動を抑える。第2に、NemoClawを活用し、統括エージェントと現場設備の間で自律的なエージェント間通信やタスク移譲を可能にしつつ、サンドボックス機能などで機密情報の流出を防ぐ。第3に、Nemotronのマルチモーダルモデルで現場・設備の状況をエッジ側でリアルタイムに分析し、制御バルブや四足歩行ロボット、小型カメラロボットなど制御則の異なる機器へ最適な制御を実行する検証を進める。
社会実装は、日立グループ独自の「Physical AI FDE(Forward Deployed Engineer)」が担う。米子会社GlobalLogicのデジタルエンジニアリング力と日立のOTノウハウを融合した専門家集団が顧客の現場に入り、ユースケース検討やソリューション構築を進める。両社はロボット・モビリティ・エネルギー・産業設備業界のパートナーとフィジカルAIエコシステムを形成する方針で、すでに産業用ロボット領域のグローバル企業を含む複数社と参画に向けた協議を始めている。
日立の德永俊昭執行役社長兼CEOは、フィジカルAIの真価は多様なAIやシステムを統合制御し、現場全体の自律化と最適化につなげる点にあるとし、実現にはオープンでセキュアかつデータ主権に配慮した基盤と、業界の垣根を超えた協創が欠かせないとコメントした。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000602.000067590.html
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