
NEDOは2026年5月20日、退役した航空機から炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を回収し、再び航空機に活用するまでの一連のサプライチェーンを構築する「次世代航空機向け静脈産業構築事業」に着手すると発表した。2026年度予算は5.4億円で、東海国立大学機構・一般財団法人ファインセラミックスセンター・SUBARU・ジャムコ・JAXAが実施予定先として採択されており、2026〜2030年度の5年間で技術開発と実証を進める。
CFRPは航空機の機体構造材として広く使われており、鋼材比で40〜50%の軽量化をもたらし燃費向上とCO2削減に貢献してきた。一方で、航空機には運用寿命があり、2030〜2045年頃にかけて多くの機体が退役すると見込まれる。問題はその処理だ。CFRPは樹脂と炭素繊維が複合された素材で、従来は廃棄または焼却処分が主流だったが、炭素繊維のリサイクル材を使えばバージン(新品)材と比べて製造時のCO2排出量を大幅に削減できることが近年明らかになった。
本事業で取り組む技術は3段階に分かれる。第1に、退役航空機からCFRPを効率的に回収するための解体・切断技術。機体の解体を自動化・省人化できれば大量処理の道が開く。第2に、環境負荷を抑えたCFの回収・再生技術。樹脂成分を分解して炭素繊維を取り出す工程をどこまで品質を保ちつつ行えるかが核心だ。第3に、再生した炭素繊維を成形・加工して実際に使える形にする基材化プロセス。さらに再生材の特性評価を行い、航空機の二次構造部品や内装部品への適用に向けたテスト機での実証まで行う計画だ。
航空機に一度使った高品質な炭素繊維を回収し、再び航空機に使う「クローズドループのリサイクル」が成立すれば、炭素繊維製造の環境負荷を根本から下げられる。SUBARUやジャムコという航空機メーカー・部品メーカーが参画する体制は、材料の回収から再利用先の航空機製造まで一気通貫で動脈・静脈の両産業が連携する実践的な構図だ。CFRPの製造・加工を担う複合材産業全体の脱炭素化戦略に直接影響を与える取り組みとして、航空・防衛・宇宙・産業機械向けの複合材市場に携わる企業が参照する価値がある。
国内でも東レ・東邦テナックス(帝人グループ)・三菱ケミカルなど世界シェアの大きい炭素繊維メーカーが複数存在し、日本は炭素繊維生産において高い国際競争力を持つ。この強みを活かして「炭素繊維の回収・再生・再利用」の静脈産業を航空分野で立ち上げられれば、他のCFRP活用産業(自動車・スポーツ・建設)へも横展開できる静脈産業モデルのテンプレートになりえる。NEDOが2026年度に5.4億円を投じて着手するこの事業は、日本の素材産業が「つくる」だけでなく「循環させる」競争力をどう確立するかという問いへの一つの答えだ。
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プレスリリース:https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101933.html
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