
マイコン(MCU)よりも高い演算性能を必要とする産業機器では、Arm Cortex-AコアベースのMPU(マイクロプロセッサー)の採用が増えている。STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は2026年4月3日、自社のSTM32 MPUシリーズ向けに最適化したパワーマネジメントIC(PMIC)「STPMIC1L」および「STPMIC2L」を発表した。いずれも現在量産中で、MPUへの電力供給・監視・保護機能をシングルチップで提供する。
STPMIC1LはSTM32MP1xシリーズ(32ビット)向け、STPMIC2LはSTM32MP2xシリーズ(64ビット)向けにそれぞれ最適化されている。両製品ともDC-DC降圧コンバータと複数のLDO(低ドロップアウトレギュレーター)を内蔵し、外付けのDDR DRAMへの電力供給も担う。入力電圧範囲は2.8〜5.5Vで、低電圧ACアダプターやUSBポート、リチウムイオン・リチウムポリマーバッテリーからの給電設計を簡略化できる。
新製品が採用する適応型コンスタント・オンタイム(COT)方式は、ロードの変化に対して電圧をダイナミックに調整することで高速な過渡応答と高効率を両立する。安全・保護機能としては、プログラム可能な出力放電モード、選択可能な過電流保護(OCP)、電源レール監視機能などを備える。パワーアップ・パワーダウンのシーケンス制御もチップ側が担うため、基板設計の簡素化と部品点数の削減に寄与する。
対象用途として、POS端末やネットワークゲートウェイ、ホームオートメーションシステム、エッジ処理プラットフォーム、バーコードスキャナー、スマートメーターシステムなどが挙げられる。-40〜125℃の拡張温度定格により、産業用制御機器やスマートファクトリー機器といった過酷な環境にも対応する。STM32 MPUエコシステムが提供するオープンソースLinux「OpenSTLinux」でも包括的にサポートされている。
価格はSTPMIC1L(28ピン、4×4mm)が1,000個購入時に約1.34ドル(約200円)、STPMIC2L(40ピン、5×5mm)が約1.77ドル(約270円)だ。評価ボードも2種類提供され、専用GUIを通じてPMICの設定・監視・NVMパラメーター設定を手軽に行える体制が整っている。設計開発の初期フェーズでの迅速な評価を後押しする。
STM32マイコンとMPUの共存する製品ラインナップにおいて、電源設計の煩雑さは課題の一つだった。専用PMICによってその複雑さをチップ側に吸収し、基板面積・コスト・設計工数を同時に削減できる点は、限られたリソースで開発を進める製造業の設計担当にとって実質的なメリットになる。
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プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001542.000001337.html


