
NTTは2026年10月15日、分散型量子コンピュータの設計指針となる新しい計算法を開発したと発表した。チップ間の量子操作の成功確率の限界を、従来法と比べて10倍以上高い精度で、100倍以上速く計算できる。立命館大学理工学部の大坂博幸教授との共同研究による成果で、論文はLetters in Mathematical Physicsに掲載された。
代数幾何で探索空間を分解し成功確率の限界を計算する
分散型アーキテクチャとは、複数のチップをつないで1つの大きなコンピュータのように動かす構成である。量子コンピュータを大規模化するには、複数の量子チップを量子もつれでつないで連携させるこの構成が重要になる。一方で、チップ間の処理に使う量子もつれはノイズで質が低下し、量子操作が失敗しやすくなる。ノイズを含む量子もつれを使った場合に量子操作をどこまで高い確率で成功させられるのかを評価することが課題だった。
今回の手法は、無数にある量子操作の構成の仕方を代数幾何にもとづいて分類し、効率的に探索する。代数幾何は、数式で表される図形や空間の性質を調べる数学分野である。技術のポイントは2点ある。一つは代数幾何によって探索空間を小さな要素に分解したこと、もう一つは分解した各要素を段階的に近似精度を高めながら個別に探索したことである。
適用の範囲は、光量子方式を含む多様な方式と量子操作、チップ構成、ノイズの種類に及ぶ。理論面では、チップをまたぐ幅広い量子操作について、成功確率を100%にするには最高品質の量子もつれが必要であることを示した。従来は一部のゲートでのみ知られていた結果を、より広い操作へ拡張したことになる。

実デバイスでの検証と量子もつれの品質評価への応用
NTTは研究全体の統括と理論構築、計算プログラムの作成、結果の分析と検証を担った。大坂教授は数学的な基盤を支援し、提案手法の理論的な正しさを確認した。
今後は、理論上の最適な手順を実デバイスで検証する。光量子コンピュータの量子もつれの品質評価への応用も目指す。
論文名は「Optimizing entanglement manipulation via algebraic-geometric decompositions and semi-definite programming hierarchies」で、DOIは10.1007/s11005-026-02138-9である。
本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)のムーンショット型研究開発事業ムーンショット目標6の支援を受けた。研究開発プロジェクトは「誤り耐性型量子コンピュータにおける理論・ソフトウェアの研究開発」で、プログラムディレクターは大阪大学の北川勝浩氏、プロジェクトマネージャーは東京大学の小芦雅斗氏が務める。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000181531.html
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