アストロスケールは2026年9月1日、大型のスペースデブリ除去に挑む「ADRAS-J2」ミッションについて、欧州のロケット打上げ事業者Isar Aerospaceと打上げ契約を締結したと発表した。同社によると、本格的なデブリ除去ミッションは世界初となる。ADRAS-J2は2027年度に、ノルウェーのアンドーヤ宇宙センターの専用打上げ施設から、Isar Aerospaceのロケット「Spectrum」で打ち上げる予定だ。
スペースデブリ除去機を2027年度に打上げ
スペースデブリとは、運用を終えた人工衛星やロケットの一部など、地球周回軌道上に残された不要な人工物である。半世紀以上にわたる宇宙活動で増加を続け、運用中の衛星との衝突リスクが問題となっている。
ADRAS-J2は、JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)のフェーズIIとして開発・実施する。長期間軌道上に存在する大型デブリに接近し、捕獲したうえで軌道離脱させることで、除去を実証する。対象は日本のロケット上段で、全長約11m、直径約4m、重量約3トンに及ぶ。
打上げを担うSpectrumは、Isar Aerospaceが独自に設計・製造する小型・中型衛星向けの軌道投入ロケットだ。低軌道へ最大1トンのペイロードを投入する能力を持ち、ミッション固有の軌道要件にも対応する。アストロスケールは、高精度な軌道投入が求められるADRAS-J2のような複雑なミッションで有効だとしている。Isar Aerospaceは、ADRAS-J2の打上げ前にも複数の打上げを予定する。
ADRAS-Jで実証した接近技術を発展
ADRAS-J2は、CRD2のフェーズIとして2024年に実施したADRAS-Jミッションの後続にあたる。ADRAS-Jでは、実際のデブリに対して遠距離からの接近、近距離での撮影、50mの距離を維持しながらの周回観測、15mという極近傍までの接近、衝突回避機能の有効性の実証などに成功した。対象物へ安全かつ精密に接近する技術は、軌道上サービスに欠かせない要素となる。
ADRAS-J2で捕獲・除去する対象は、ADRAS-Jで接近と撮影に成功したデブリと同じ機体だ。ADRAS-Jでは、捕獲箇所として想定する衛星分離部(PAF)の撮影と状態把握にも成功し、大きな損傷が見られないことを確認している。PAFは、ロケットと衛星をつなぐ台座を指す。
アストロスケールは、ADRAS-Jで得た知見をもとに接近技術を成熟させており、現在は打上げに向けて衛星の組立製造を進めている。
Isar Aerospaceは2018年設立の欧州の宇宙企業で、ドイツ・ミュンヘン近郊に本社を置く。衛星を軌道へ運ぶロケットの開発、製造、試験をほぼ自社で一貫して手掛け、5カ国の拠点で400名を超える従業員を擁する。
アストロスケールは2013年設立で、故障機や物体の観測・点検、衛星の寿命延長、修理・アップグレード、運用終了時のデブリ化防止のための除去、既存デブリの除去といった軌道上サービスを提供している。2021年3月以降、ELSA-dやADRAS-Jのミッションで、ランデブー・近傍運用(RPO)技術を軌道上で実証してきた。日本の本社・研究開発拠点に加え、英国、米国、フランス、イスラエルで事業を展開する。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000108.000067481.html
ADRAS-J2ミッションページ(アストロスケール):https://www.astroscale.com/ja/missions/adras-j2
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