
千葉大学大学院情報学研究院の関屋大雄教授と東京理科大学工学部電気工学科の朱聞起助教らの研究チームは2026年8月27日、電気自動車(EV)やデータセンターで使う高周波電源回路をAI・機械学習で自動設計する手法を開発したと発表した。1キロワット級、1メガヘルツのLLC共振型コンバータの試作回路で最高96.1%の電力変換効率を達成した。研究成果は2026年8月10日に学術誌「IEEE Transactions on Power Electronics」で早期公開された。
電気・磁気・熱を一体で扱うマルチフィジックス設計を自動化
マルチフィジックス設計とは、電気、磁気、熱など互いに影響する複数の物理現象を一体的に考慮して設計する方法である。研究チームは、電気回路だけを見るのではなく、半導体の電気・熱特性やコイル・トランスの磁気特性までを統合的に扱うこの設計手法を自動化した。
EVや太陽光発電、サーバーには、電圧を変換して電力を効率よく届ける電源回路が欠かせない。機器の小型化や省エネルギー化が進むなかで、電源回路にもより小さく高効率であることが求められている。高速動作させる高周波化は小型化に有効だが、動作を速くするほど半導体やコイルの損失が増え、高効率との両立が難しくなる。
高周波電源では、電気回路の動作、半導体の発熱、コイルやトランスの磁気的な損失が互いに強く影響し合う。加えて、効率を上げようとすると部品が大きくなりやすく、高効率と小型化の間にはトレードオフの関係がある。研究チームはこのトレードオフの関係にある要素を一つの数値モデルに統合し、複数の性能目標を同時に評価することで、目的に応じた設計を自動的に探索する手法を組み立てた。
磁性部品の体積を約41%削減、2年以内の実用化を目指す
開発した手法は、マルチフィジックスと複数の設計目標を同時に扱う多目的最適化を組み合わせたうえで、AI・機械学習による探索と最適化により、膨大な設計候補から目的に合う組み合わせを選び出す。代表的な電源回路であるLLC共振型コンバータで検証したところ、1キロワット級、1メガヘルツの試作回路で最高96.1%の電力変換効率に到達した。小型化を重視した設計では、高い効率を保ちながら磁性部品の体積を約41%削減できることを確認した。
この手法は単一の正解を求めるものではなく、用途や優先順位に応じた設計を提示する。「高効率」「広い入力電圧範囲での高効率」「高効率と小型化の両立」といった目的ごとに異なる最適設計を自動で探索する。探索変数として扱えるのは回路定数だけではない。半導体や磁性コア、巻線、放熱部品などの候補選択も含むため、部品選定まで含めた統合設計ができる。EV用充電器やサーバー電源など、高効率と小型化を同時に求められる分野への応用を見込む。
研究チームは今回の手法をLLC共振型コンバータ以外の電力変換回路や異なる設計条件にも展開する。電気、磁気、熱に加えてより詳細な物理モデルや実測データを統合してマルチフィジックス設計を高度化し、パワーエレクトロニクス回路のAI設計として2年以内の実用化を目指す。最適化で得られた多数の設計結果を蓄積し、将来のデータ駆動型設計の学習データとして活用することで、設計の高速化にもつなげる。本研究は文部科学省のINNOPEL事業とCOPELNIX事業の助成を受けて実施した。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001226.000015177.html
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