
NanoFrontierは2026年8月17日、宮城県の2026年度「みやぎ環境関連研究開発等支援事業補助金」(開発着手型)に採択されたと発表した。補助事業を活用し、データセンター向けナノ粒子分散型高効率冷却液の開発に着手する。冷却水そのものの熱伝達性能を高めることで、データセンターの冷却電力の低減を目指す。
データセンター冷却の電力課題とナノ粒子の役割
ナノ粒子分散型冷却液とは、冷却水中にナノ粒子を分散させ、伝熱面近傍の熱の流れを妨げる層を攪乱することで熱伝達率を高める冷却液である。
冷却電力を左右するのは、熱を運ぶ冷却水の伝熱効率だ。伝熱面と冷却水の界面近傍には、熱が移動しにくい境膜(熱境界層)が形成され、これが熱抵抗となって熱伝達率を下げる。流速を上げれば境膜は薄くなるものの、ポンプ動力の増加を招き、エネルギー効率が悪化する。
NanoFrontierは、東北大学で30年以上にわたり研究開発されてきたナノ粒子生成・分散技術を基盤とし、冷却水中に分散させたナノ粒子が界面近傍の境膜を破壊・攪乱することで、流速を上げずに熱伝達率を向上させる方式を提案した。データセンターの冷却電力削減と、電力由来のCO2排出削減への貢献を掲げた事業計画が採択に至った。
本事業では、冷却水用途に適したナノ粒子の生成・分散技術の確立と、分散液の熱伝達性能・安定性の基礎評価に取り組む。得られたデータをもとに、実機を模擬した環境での性能評価につなげる。既存の冷却水系統であるチラーやCDU、空調機の冷水コイルなどの冷却水を置き換える形で導入できるため、設備の大規模な改修を伴わずに省エネルギー化に寄与できる点を特長に挙げる。環境負荷低減効果の定量的な評価は、本補助事業で取得する実験データに基づいて進める。
データセンター向け液冷市場の成長予測
開発の背景には、生成AIや大規模GPUクラスタの普及によるデータセンターの電力需要の急増がある。同社が引用したIEAの試算では、2030年の世界のデータセンター電力消費は945TWh/年に達し、2024年の415TWhの約2.3倍、世界の電力消費の約3%を占める見込みだ。冷却はその内訳のうち、施設によっては電力の30%超を占める主要な消費要因になるとしている。
市場面では、水冷(direct-to-chip)の普及を背景に、データセンター向け液冷市場は2026年の40.7億ドル(約6476億円)から2033年には276.5億ドル(約4兆4000億円)へ、年平均31.5%で成長するとの予測がある(MarketsandMarkets、2026年)。
NanoFrontierは2025年4月設立の東北大学発スタートアップで、仙台市の東北大学産学連携先端材料研究開発センター内に本社を置く。有機ナノ粒子化技術を用いた試薬品・機能性材料の研究開発や製造、製造受託、技術ライセンスの供与などを手掛けている。同社は、国内外のデータセンターへの普及を通じて脱炭素社会への貢献を目指すとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000163636.html
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