
東レは2026年7月9日、従来比で同等以上の画像精度を確保しつつ、X線照射量を8%低減できる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のX線透過部材を開発したと発表した。独自の多孔質体を用いたサンドイッチ構造により、検出量子効率(DQE)を従来のCFRP比で約6%向上させた。マンモグラフィなどの撮影台やカセッテといったX線検査装置への展開を見据え、実用化に向けた検討を進める。
X線検査は、人体を透過したX線を検出し、内部構造を画像として可視化する技術で、病気の早期発見に役立つ。一方、医療被ばくのリスクを伴うため、照射量を増やさずにノイズの少ない鮮明な診断画像を得る技術が求められている。国内では、医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)が中心となり、被ばく線量やリスク評価に関するデータを収集し、患者の放射線量を最適化する指標として診断参考レベル(DRL)を公表している。
X線検査装置の受光部には、軽量でX線透過性に優れたCFRP製の保護部材が使われている。照射量を増やさずに鮮明な画像を得るには、この保護部材のX線透過性のさらなる向上が欠かせない。透過性を高める手法として、CFRPのスキンと多孔質体のコアからなる低密度なサンドイッチ構造体が有効とされ、検査装置への適用が検討されてきた。ただし、多孔質体の密度ばらつきや保護部材の形状に起因して、透過X線の強度分布にムラが生じ、診断画像にノイズが発生する可能性があるといった課題があり、照射量の低減と診断精度の向上の両立が求められていた。
東レは、独自の多孔質体「CFRF」を用いたサンドイッチ構造体において、緻密な複合化設計を確立した。これにより、低密度と高剛性を両立するとともに、形状によらず密度のばらつきを抑えた。CFRFは、炭素繊維の短繊維が三次元のネットワークを形成し、繊維同士をバインダー樹脂が接着することで、内部に空隙を持つ構造とした東レ独自の多孔質材料だ。軽量でありながら剛性に優れる。
このサンドイッチ構造体を適用した保護部材について、東京都立大学健康福祉学部放射線学科の根岸徹准教授が臨床条件下で評価した。その結果、検出量子効率(DQE)が従来のCFRPに対して約6%向上することを確認した。DQEは、X線が効率的に画像形成に活用されていることを示す指標で、保護部材のX線透過性が高いほど値が向上する。DQEの向上により、X線照射量を8%低減しても、同等以上の鮮明な診断画像を取得できる。
マンモグラフィなどの撮影台やカセッテといった検査装置に本部材を用いることで、医療被ばくのリスクを抑えつつ、診断精度の向上につなげる。東レは、長期経営ビジョン「TORAY VISION 2050」において、事業活動を通じてすべての人が健やかに心地よく暮らす世界への貢献を掲げている。同社は、先端材料・革新技術の開発を通じて、人が豊かに暮らせる社会の実現に取り組むとしている。
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プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000163456.html
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