
情報通信研究機構(NICT)、シャープ、三菱ケミカル、テックラボの4者は2026年6月17日、排熱デバイスの新設計により、NTN(非地上系ネットワーク)向け平面アンテナの47%の軽量化に成功したと発表した。重量を5.5kgから2.9kgへと軽くした。炭素繊維プリプレグとグラファイトシートを組み合わせた新規複合材料による「CFRP排熱デバイス」をアンテナに統合し、平面アンテナに必要な電気特性も確認した。さらに、モデムを含めた衛星通信ユーザー端末としての動作も確認している。
NTNは、衛星や高高度プラットフォームなどを用いる非地上系の通信ネットワークだ。山間部や海上、離島、被災地など、地上系の移動通信が難しい環境でも高速通信を可能にする。一方、NTN用の平面アンテナは、衛星やHAPS(成層圏に滞空する空中基地局)を追尾する機能が必要で発熱量が非常に大きくなるため、高い排熱性能(熱伝導性)が求められる。また、多様なモビリティへ搭載するには、平面アンテナの超小型化・軽量化が欠かせない。
従来、平面アンテナの排熱デバイスにはアルミが使われてきたが、重量と熱伝導性の両立が課題だった。今回、4者はそれぞれの技術を持ち寄り、この課題の解決に取り組んだ。NICTがアルミ製排熱デバイスの課題から軽量化のための設計指針を決定し、新規複合材料の構成およびデバイス構造の研究開発を担った。三菱ケミカルが複合材料を構成する炭素繊維プリプレグとグラファイトシートの材料開発を行い、テックラボが複合材料を用いた排熱デバイスの設計および成形技術を確立した。
これにより、材料の軽量性と高い熱伝導性を活かしたCFRP排熱デバイスを、排熱デバイス単体で1kg以下で製作できた。シャープがこのCFRP排熱デバイスを平面アンテナに統合し、47%の軽量化を実現した。アンテナ特性を評価した結果、送信パターンの差分が端末誤差の範囲であること、受信利得特性に差がないことを確認した。炭素繊維プリプレグは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたシート状の材料で、グラファイトシートは黒鉛を薄くシート状に加工した高熱伝導の材料だ。
本成果により、広く普及している産業用ドローンのペイロード範囲内に収まる軽さを達成した。そのまま搭載・動作が可能なユーザー端末を実現したことで、ドローンや車両など搭載可能なモビリティの範囲を大きく広げた。これにより、山地や被災地における通信回線の確保、各種モビリティの位置情報のリアルタイム送信、自動運転への利用などが見込まれる。
今後、4者は排熱性能と実装性のさらなる詳細評価を進めるとともに、端末構成・用途に応じた最適な排熱デバイス設計を検討する。モビリティ搭載を想定した超小型軽量の衛星通信ユーザー端末の実用化に向け、試作・実証を継続する方針だ。
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プレスリリース:https://corporate.jp.sharp/news/260617-a.html
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