
VIEは2026年5月29日から7月5日まで、京都・東福寺で特別夜間拝観イベント「ZEN NIGHT 東福寺」を開催している。日本経済新聞社との共催で、脳科学に基づく音楽「ニューロミュージック」や光の演出を通じて没入型のナイトアート体験を提供する取り組みだ。このイベントで、通天橋へ向かう回廊の音響演出に、パナソニックの新技術「Sound Gradient」が採用されている。
Sound Gradientは、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションと、音響制御技術を持つスタートアップのシーイヤー(Cear)が共同開発したスピーカーだ。音の指向性を高度にコントロールし、物理的な壁を設けずに、一つの空間に複数の音場を共存させる点を特徴とする。2025年11月の放送機器展示会「Inter BEE 2025」で技術発表された。今回の東福寺では、青もみじに彩られた回廊で「見えない音の境界」を越えていく演出に応用され、空間ごとに異なる音の体験を生み出している。
この技術が生まれた背景には、パナソニックの音響技術の蓄積がある。同社は長年、テレビやオーディオ機器をはじめとする家電・エンターテインメント領域で音響技術を積み重ねてきた。Sound Gradientは、こうした音響技術の蓄積を基盤としながら、スタートアップが持つ音場制御の知見と組み合わせることで、家庭用機器とは異なる「空間演出」という新たな用途へと展開した事例といえる。家電という既存事業で磨いた要素技術を切り出し、社外との共創を通じて新しい市場に応用する——大企業が持つ技術資産の活用方法の一つを示している。
パナソニックはスタートアップとの連携を組織的に進めている。米国シリコンバレーを拠点とするコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「Conductive Ventures」に加え、国内では「くらしビジョナリーファンド」を通じてスタートアップへの出資・共創を推進している。同社はモノを提供することで人々のくらしを豊かにしてきた歴史を持ち、スタートアップへの支援と共創を通じて、より豊かなくらしの実現を目指すとしている。
会場では、Sound Gradientのほか、VIEが開発する脳をととのえる音楽を各所に配置し、回廊を巡りながらアート・インスタレーションを鑑賞する構成となっている。国内最古・最大級とされる禅堂では、脳波計を装着して自分の脳状態をリアルタイムに音と映像で可視化する体験型瞑想空間も用意されている。「ZEN NIGHT」は2024年の京都・建仁寺、2025年の鎌倉・建長寺での開催で累計約5万人が来場しており、来場者の約3割が海外からの訪問者だ。禅という日本の文化資産に、スタートアップと大企業の技術を掛け合わせ、新しい体験価値を生み出す試みとなっている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000083.000067474.html
《お知らせ》
PEAKS MEDIAのLinkedinページを開設しました。最新記事の概要をキャッチアップできます。
フォローはこちらから


