
リチウムイオン電池の性能は、電極材料を溶剤とともに混ぜ合わせた「スラリー」の品質に大きく左右される。このスラリーを製造する「混練工程」は、最適条件の設定に高度な専門知識と経験が必要で、製造プロセスの中でも属人化・難易度の高い工程の代表格だ。その壁をデータとAIで突破しようとする協業が動き出した。二軸連続式混練機で国内トップシェアを誇る栗本鐵工所と、解析・分析技術とAIソリューションを持つ日立ハイテクは2026年5月11日、混練プロセスの条件最適化に向けた協業を開始したと発表した。
混練機「KRCニーダ」の特長は、機内に組み込む複数のパドル形状の組み合わせで混練度合いを調整できる点にある。凝集しやすい原料も分散・均一化でき、ロットごとの品質ばらつきを抑えながら連続生産できる。しかし最適なパドル配列と運転条件の組み合わせは無数に存在し、これまでは熟練技術者の経験と勘に頼る部分が大きかった。
協業の技術的な核は2つだ。第1は「ナレッジ駆動型の条件提案」。特許・論文などの公知知識と栗本鐵工所の混練機マニュアル・パドル情報を日立独自の生成AIに入力し、最適な混練条件とプロセス制御条件を提案する。実機試作データが少ない段階でも、知識ベースで方向性を示せる点が特徴だ。第2は「プロセス・インフォマティクス(PI)による実験の最適化」。栗本鐵工所の混練機で製造したスラリーを日立ハイテクが画像観察・電池評価等で測定したデータに、AIとデータサイエンスを適用して電池性能を予測し、混練条件を絞り込む。試作回数の削減と量産立ち上げ時の歩留まり早期改善が期待される。
将来展望として、両社は「混練機×AI×保守」という新たなソリューション構築を目指す。混練機のトルク・温度などのインラインデータ、混練中の動画のリアルタイム解析、粘度・変動係数の常時監視データをAIで解析し、日立のデジタルツインを活用した予兆保全につなぐことで、均質なスラリーの連続製造と安定供給を目指す設計だ。さらに、混練プロセスで実証した手法を乾燥・焼成・粉砕などの関連プロセスへ横展開し、化学・電子材料・食品・医薬など隣接産業への適用も視野に入れる。
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プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000214.000049375.html
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