
EV・風力発電・データセンター・宇宙産業に欠かせないレアアース磁石。その製造装置市場で世界シェア7割以上を誇るアルバックが、中国一極集中のサプライチェーンを見直し、日本国内での生産体制を新たに整備する。アルバックは2026年5月1日、レアアース磁石向け連続式真空溶解炉の国内生産体制を構築すると発表した。欧米を中心とした磁石メーカーからの受注が前期比約3倍に拡大する見通しで、2026年9月に国内拠点を立ち上げ、年間最大12台の生産能力を確保する。
連続式真空溶解炉は、ネオジム磁石などのレアアース磁石製造において合金組織を形成する溶解・鋳造工程を担う。この工程の品質が最終的な磁石の性能を左右するため、装置の精度と安定性が製品の競争力に直結する。アルバックは累計400台以上の真空溶解炉を納入し、真空溶解・焼結・時効など主要工程の連続式真空炉において世界シェア7割以上(同社調べ)を維持してきた世界でも希有な装置メーカーだ。
受注拡大の背景には、脱炭素化とAI普及による世界的なレアアース磁石需要の増加と、中国依存を見直す欧米の「ニアショアリング(生産の地域分散)」加速がある。欧米の新規磁石メーカーは、中国拠点のみからの供給では地政学リスクが高いとして、地域分散した供給体制を求める声を強めていた。アルバックは従来の中国子会社拠点を維持しつつ、日本拠点を加えた「二極供給体制」を確立することで、この需要に応える。
アルバックが目指す次のステップは装置単体の提供にとどまらない。新規参入磁石メーカーが増えるなか、量産ライン全体の立ち上げ支援・最適化を担う「磁石量産技術の統合エンジニアリング企業」への転換を掲げる。装置メーカーが工程全体のインテグレーターへと進化する戦略は、製造業の新規事業・設備投資担当者にとって参考になるモデルだ。
レアアース磁石の安定調達は、EV化を進める自動車・二輪メーカーや、モーター・発電機を製造する電機メーカーにとって直接的な経営課題だ。国内に装置製造拠点が増えることは、国産供給網の構築に向けた製造業のサプライチェーン戦略の選択肢を広げる。
1952年の創立以来70年以上にわたって真空技術を磨いてきたアルバックにとって、今回の国内生産体制の構築は「技術の日本回帰」とも読める。装置の設計・製造ノウハウが国内に残り続けることは、安全保障・経済安全保障の文脈でも意義が大きい。中国の地経学リスクを受けて欧米が積極的に脱中国サプライチェーンを構築する動きが続く中、日本の装置メーカーが国内生産能力を高めることは、グローバルなサプライチェーン再編の受け皿として日本が機能する可能性を示している。
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プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000151150.html
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