
電動車(xEV)や再生可能エネルギー、データセンターの電源など、カーボンニュートラルの実現に向けた省エネ化を左右するパワー半導体の分野で、大きな節目が訪れた。NEDOのグリーンイノベーション基金事業「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトにおいて、ロームが取り組んでいた「8インチ次世代SiC(炭化ケイ素)MOSFETの開発」が、当初計画より2年前倒しで技術目標を達成した。2026年4月2日にNEDOが発表した。
本事業は2022年度にスタートし、最終年度を2027年度と設定していたが、ロームは2025年度での達成に成功した。今回の成果の核心は2つある。1つ目は、8インチSiCデバイス製造ラインの構築だ。SiCはシリコンに比べて高温プロセスを要し製造難易度が高い材料で、8インチウエハへの大口径化にはエピタキシャル成長技術(基板上に高品質な薄膜結晶を成長させる技術)の最適化や多岐にわたるプロセス課題の克服が必要だった。ロームはこれらを解決し、福岡県筑後市のローム・デバイスマニュファクチャリング筑後工場の専用棟に8インチSiCデバイス製造ラインを構築した。
2つ目は性能実証だ。この製造ラインで作った8インチSiC MOSFETをロームの内製モジュールに搭載し、インバータの実使用条件で評価したところ、従来のシリコンIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)デバイスと比べて電力変換器の電力損失を50%以上低減できることを確認した。これは事業目標として掲げていた数値をそのまま達成したことを意味する。

SiCパワー半導体はEVや産業機器の電力変換効率の改善において鍵を握る材料だ。シリコンと同等のコストで供給できる体制の確立が普及の前提条件となっており、8インチ化による大口径ウエハへの移行はそのコスト低減戦略の中心に位置している。ロームは今後も低コスト化と電力損失低減に向けた研究開発を継続するとしており、2025年度での事業終了後は社会実装の加速フェーズに移行する。製造業の電力変換システムを設計・調達する担当者にとって、供給体制の整った8インチSiCパワー半導体という選択肢が現実味を帯びてきた。
今回の前倒し達成は、市場を見据えた研究開発戦略の成果でもある。SiCパワー半導体の世界需要は中国メーカーの台頭も含めて競争が激化しており、競争力のある技術を早期に確立することに強い必要性を感じていたとNEDOは説明している。研究開発の段階から社会実装を見据えた開発推進が、前倒し達成につながった。ロームはウエハ製造からデバイス製造・パッケージングまでを自社グループ内で一貫して行う垂直統合型の生産体制を強みとしており、今回の8インチSiC製造ラインの確立はその体制をさらに強化するものになる。
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プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000261.000135644.html


