
EV(電気自動車)の電気システムが800V化する流れのなかで、バスバーなど高電圧が掛かる導体の絶縁被覆に求められる性能水準が上がっている。住友ベークライトは2026年4月1日、比較トラッキング指数(CTI)900Vを達成した高耐トラッキング性エポキシ樹脂粉体塗料を開発したと発表した。まもなくサンプル供試を開始する予定だ。
CTIは絶縁材料の表面で起きる放電(トラッキング現象)への耐性を示す指標で、数値が高いほど絶縁破壊しにくい。一般的なエポキシ樹脂粉体塗料のCTIは300〜600V程度にとどまるが、本開発品は900Vを達成した。EV向けには米国保険業者安全試験所(UL)の規格「UL2597」のSTT試験(表面トラッキング試験)に準拠して測定しており、実用水準としての裏付けを持つ。
開発の背景には、欧米を中心に広がる800V化の波がある。EVの航続距離延長と充電時間短縮を目的に、受電・給電の両側で高電圧化が加速しており、産業機械や洋上風力発電船、太陽光発電連携インバーター、大規模蓄電池システムでも1kV級の用途が拡大している。eVTOL(電動垂直離着陸機)や電動車両などの移動体でも同様の高電圧化が見込まれており、絶縁材料に求められる耐久基準が従来とは異なる次元に入りつつある。

本製品は無溶剤型の熱硬化型エポキシ樹脂をベースにした粉体塗料だ。溶剤を含む液状塗料と比べて環境負荷が低く、塗膜の形状安定性と生産性にも優れる。さらに熱可塑性をベースにした粉体塗料では導体と塗膜の間に十分な接着力が生じにくいのに対し、熱硬化型では被覆工程で導体と反応するため強固な接着力が得られ、長期使用での絶縁性低下リスクを低減できる。
CTI 900Vの達成により、導体間の沿面距離を短縮しても絶縁性を確保できるため、電気システムや部品の小型化・高効率化に寄与する。金型不要で様々な形状の導体表面に薄く絶縁塗装できる点も特長で、EVのバッテリーバスバーを主要ターゲットとしながら、ドローンや風力発電機のモーターに使われるバスリングなど幅広い用途への展開を視野に入れている。
高電圧化の波はEVにとどまらず、製造設備や社会インフラ全体に広がりつつある。パワーエレクトロニクスを扱う設計・調達担当にとって、従来品では対応しきれないCTI要件をクリアする材料の登場は、製品設計の自由度を広げる選択肢になる。住友ベークライトは今後、電動モビリティ以外の産業用高電圧用途への参入も見据えて開発を継続する方針だ。
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プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000121956.html


