
ロータス・サーマル・ソリューション(LTS)は2026年10月5日、液浸冷却環境下で熱界面材料(TIM)の接触熱抵抗を連続的かつ定量的に評価する技術を確立したと発表した。山陽小野田市立山口東京理科大学との共同研究による成果で、冷却液への曝露や温度・圧力によってTIMの熱性能が時間とともにどう変化するかをリアルタイムで把握できる。NEDOの「官民若手研究者発掘支援事業(若サポ事業)マッチングサポートフェーズ」に採択された。
液浸冷却で見えなかったTIMの熱性能を測る
液浸冷却とは、サーバーなどの発熱する機器を冷却液に直接浸して冷やす方式である。生成AIやHPC(高性能計算)の普及でCPU・GPUの高性能化・高発熱化が進む中、高い冷却性能と省エネルギー性を両立する次世代の冷却技術として開発が進む。
TIM(Thermal Interface Material)は、半導体素子とヒートスプレッダや冷却部材の間に挟む熱界面材料だ。部材同士の微細な隙間を埋め、熱の通り道を確保する役割を担う。
課題は、この材料が長期間にわたって冷却液や温度変化、熱負荷の影響を受ける点にある。TIMの状態が変われば、半導体素子から冷却部材への熱移動を妨げる接触熱抵抗も変化し、素子の温度上昇や冷却性能の低下につながる可能性がある。
ところが、液浸環境下でTIMを実際に使いながら接触熱抵抗の経時変化を連続的に測定することは難しかった。従来は試験の前後で状態を観察したり、重量の変化から推定したりする方法が多かった。液浸環境でのTIMの熱性能が時間とともにどう変わるのかを定量的に把握し、長期信頼性や寿命を予測する評価技術が求められていた。

熱流束と温度差から熱抵抗を連続的に算出
研究チームが開発したのは、液浸環境下における接触熱抵抗の「その場(in-situ)評価技術」だ。山陽小野田市立山口東京理科大学工学部機械工学科の結城光平講師と、LTSの井手拓哉代表取締役社長らが共同で取り組んだ。
仕組みは次のようになる。冷媒中に浸したTIMを介して模擬熱源と模擬冷却器を接合し、そこへ熱流束を与える。接合部の温度差と熱流束を測定することで、TIMを含む界面の熱抵抗を連続的に算出する。冷媒への曝露、温度、圧力といった条件を与えながら、熱抵抗の時間変化を追える。
特徴は、評価の対象を「実際に熱をどれだけ通しにくくなったか」という熱性能そのものに置いた点にある。これにより、冷却液への曝露や熱・機械的な負荷によって生じるTIMの膨潤、溶出、流動、界面状態の変化が、接触熱抵抗へ及ぼす影響を定量的に把握できる。得られた経時変化を解析することで、劣化メカニズムの解明や劣化速度の評価、寿命予測モデルの構築につながる。
今後の展開も示した。日本液浸コンソーシアムを通じて、実際の液浸冷却環境での実証と、評価条件・評価方法の標準化を進める。NEDOの支援のもとでは、TIMの劣化メカニズムの解明、劣化速度の定量化、寿命予測技術の確立に向けた研究開発に取り組む。
対象の広がりも視野に入れる。将来的にはTIMにとどまらず、ヒートスプレッダ、金属接合部、冷却部材など、半導体から冷媒までの熱輸送経路全体を対象とした熱信頼性評価技術へ発展させる。液浸冷却システムの設計・部材選定・長期運用を支える評価基盤の構築を目指す。
LTSは2016年1月設立で、大阪市北区に本社を置く。資本金は1億3360万円だ。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000163646.html
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