
住友ベークライトは2026年8月18日、東北大学との共同研究により、樹脂絶縁二層構造の3D SiC-MOSFETパワーモジュールを開発したと発表した。樹脂絶縁基板と銀セミシンタリング接合材の採用により、モジュールの反りを20µm以下に抑え、インバータ出力密度300kVA/Lに寄与する。同社によると、業界標準と比べてパワーユニットの体積を約2分の1にできる。
パワーモジュールの反りを20µm以下に抑える樹脂絶縁基板
パワーモジュールとは、電力の変換や制御を担う半導体素子を、絶縁基板や放熱部材とともに一つに封止した部品である。電気自動車(EV)のモータ駆動用インバータなどに用いられる。
第1の特長は、樹脂絶縁基板による反りの抑制だ。従来のセラミック絶縁基板に代えて樹脂絶縁基板を採用し、銅との線熱膨張のミスマッチを低減した。これによりパワーモジュールの反りを20µm以下に抑える。同社は樹脂絶縁基板とエポキシ封止樹脂の熱膨張特性や弾性率を最適化し、モジュールの反りを低減した。
第2の特長は、熱抵抗の低減と実装性の向上だ。反りを抑えることで、モジュールと冷却器の接合材であるサーマルインターフェイスマテリアル(TIM)を薄く塗れるようになり、熱抵抗を低減した。冷却器との接合の信頼性も確保する。
第3の特長は、新たに開発した低温・無加圧の銀セミシンタリング接合材だ。従来のはんだや焼結銀接合は高温・高圧を必要とするが、この接合材は低温・無加圧で接合でき、モジュールに加わる熱応力を抑えられる。高密着かつ低弾性率という特性を持ち、冷却器との接合層の厚みが100µm以下の薄層でも信頼性と耐久性を高める。

EVの小型化を支えるパワーモジュールの開発競争
開発の背景には、EVの性能向上と航続距離の延長に伴う車両の軽量化と動力システムの省スペース化がある。モータ駆動用インバータなどのパワーエレクトロニクス分野では、システムの高効率化と、パワーデバイスの発熱増加への対応が求められている。こうした状況から、インバータの小型化・薄型化と高出力密度化を両立する次世代パワーモジュールの研究開発が世界的に活発になっている。
住友ベークライトは、東北大学が推進する高出力密度インバータの構想に対し、独自の高機能樹脂製品群を組み合わせた。同社はモジュール設計の構想段階から参画し、材料メーカーの視点で構造を提案している。
本成果は、両者が2025年1月に設立した「次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所」の枠組みで得られた。同研究所は東北大学青葉山キャンパスに置かれ、パワーモジュール、パワー半導体、AI関連デバイスを対象に、材料開発から構造設計、プロセス開発、性能評価、社会実装までを研究領域とする。住友ベークライトの高機能樹脂材料技術と、東北大学のパワーデバイス設計・プロセス・評価の技術を組み合わせ、材料からシステムまでのバリューチェーン全体を対象とした研究開発に取り組んでいる。
開発した3Dパワーモジュールは、2026年6月9日から11日までドイツ・ニュルンベルクで開催されたパワーエレクトロニクスの国際展示会「PCIM Europe 2026」で発表した。同社は今後も、高機能樹脂材料の開発を通じて電動化社会の発展に貢献するとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000121956.html
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