
富士通や東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッドなど6社は2026年7月27日、電力と計算資源を融合する「ワット・ビット構想」に向け、次世代の分散型AI処理インフラの実証実験を始めると発表した。電力会社が持つ光ファイバーと、離れた2拠点に置いたGPUサーバを高速の光ネットワークで結び、電力の需給状況に応じてAIの処理拠点を柔軟に切り替える技術を検証する。AIの普及で増えるデータセンターの電力負荷を、需給調整に活用することを見据える。
本実証は、ノーチラス・テクノロジーズ、インターネットイニシアティブ(IIJ)、東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、富士通、1FINITYの6社が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の調査事業の一環として共同で取り組む。GPUサーバは、AIや機械学習の大規模な演算処理に使う高性能なサーバだ。
ワット・ビット構想は、電力(ワット)と計算資源(ビット)を組み合わせ、コンピュータリソースを分散して配置する考え方だ。AIの用途拡大に伴い、今後はGPUサーバの電力負荷の増加が見込まれる。増える負荷を、電力の需給が逼迫していない地域へ移すことで、電力設備を効率的に活用する「ワット・ビット連携」につなげることを目指す。
本実証では、東京電力パワーグリッドと中部電力パワーグリッドが持つ光ファイバーケーブルに、富士通と1FINITYが提供する通信装置を組み合わせ、「オールフォトニクスネットワーク(APN)」を構築する。APNは、情報の伝送で可能な限り光信号のまま処理する次世代の通信基盤だ。従来の通信網では、機器ごとに光信号と電気信号の変換を繰り返すが、APNは変換回数を減らすことで、低遅延・大容量・低消費電力の通信につなげる。両エリアに分散して置いたGPUサーバの稼働タイミングを制御し、電力需要の状況に応じた調整の可能性と、それらを一体で運用する低遅延分散処理技術の有効性を検証する。
具体的な舞台は、富士スピードウェイで開催されるフォーミュラカーレース「KYOJO CUP」の決勝レースだ。レース中の車載カメラとテレメトリーユニットから取得した4K映像と走行データをリアルタイムに収集し、APNを介して、両電力会社の供給エリアに分散配置したGPUサーバへ低遅延・広帯域で伝送する。これにより、伝送したデータを両エリアのどちらのGPUサーバでも処理できるようにする。テレメトリーユニットは、車両の速度やエンジン回転数、アクセル開度などの走行データを収集・送信する車載の計測装置だ。
技術面では、1FINITYが2026年10月に販売を予定する光NIC(光ネットワークインターフェースカード)を導入する。光NICを使うと、従来のサーバ間通信で必要だったスイッチやルータを介さず、100kmを超えて離れたサーバ間を光信号のまま直接つなげる。システムの中核となるデータベースには、NEDOの支援を受けて開発された国産の次世代高速リレーショナルデータベース「Tsurugi」を採用した。
本実証は、周波数の異なる(50Hz・60Hz)電力会社間で分散配置したGPUサーバを、一体的なAI処理環境として共同運用する取り組みだ。参加各社の調べでは、こうした共同運用は日本初の試みとなる。実証期間は2026年8月から2027年3月までを予定し、KYOJO CUP第3戦から始める。6社は、電力需給に余裕のある地域へAI処理の負荷を移し、電力設備を効率的に活用する仕組みの構築を進めるとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000593.000093942.html
《お知らせ》
PEAKS MEDIAのLinkedinページを開設しました。最新記事の概要をキャッチアップできます。
フォローはこちらから


