
TOPPANと東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)は2026年7月1日、寄付研究部門「量子ドットイノベーションラボ(TOPPAN)」を開設した。TOPPANの寄付により設置するもので、期間は2026年7月1日から2031年6月30日までの5年間だ。量子ドットをはじめとするナノ材料の基盤研究と、この分野を担う研究者の育成を進める。
量子ドットは、数~数十nmの大きさの半導体ナノ粒子で、粒子のサイズによって光る色などの性質を制御できる。現在、次世代ディスプレイや量子ドットレーザー、高感度センサーなどへの市場展開が進んでいる。次世代の高性能なフォトニクス素子やデバイスに向けて、低コストで製造できるコロイダル量子ドットなどの重要性が増している。フォトニクスは、光を使って情報を伝えたり処理したりする技術分野を指す。
本寄付研究部門では、東京大学が蓄積してきたエピタキシャル量子ドットとコロイダル量子ドットに関する学術的な知見や量子光計測技術と、TOPPANが持つコロイダル量子ドットを中心としたナノ粒子合成技術や応用開発力を組み合わせる。量子ドットをはじめとするナノ材料やナノ構造の実現技術・応用に関する基盤研究を進める。
量子ドットには2つの種類がある。エピタキシャル量子ドットは、半導体結晶の基板上に原子層のレベルで材料を成長させる際、材料間の格子間隔の違いで生じるひずみにより、結晶表面に自己形成される数~数十nmの半導体ナノ構造だ。高い結晶品質と優れた光学特性を持ち、高性能レーザーや、量子情報通信で重要な単一光子を発生する素子に使われる。コロイダル量子ドットは、液体の中で化学反応させて作る半導体ナノ粒子で、2023年のノーベル化学賞の受賞対象になった。インクのように塗布や印刷ができるため、低コスト・大面積のデバイス製造が可能で、次世代ディスプレイや太陽電池などへの活用が見込まれている。
一方、量子ドットの活用に向けては、精密な評価手法の確立や、高品質な合成・塗布プロセスの基盤技術化などが求められている。加えて、環境規制に対応した材料の高品質化や、表面配位子の制御による欠陥の抑制、大気中での安定性の確保など、解決すべき課題も多い。
研究体制として、東京大学では、荒川泰彦特任教授がエピタキシャル量子ドット、立間徹教授がコロイダル量子ドットの分野で、半導体ナノ構造の結晶成長やプロセス技術、応用技術の研究を進めてきた。本寄付研究部門では、これらの学術的な蓄積に加え、小関泰之教授の量子光計測技術なども活用し、量子ドットの物性制御や新たな量子フォトニクス素子の研究、光電子融合技術の開拓に取り組む。TOPPANは、量産性や低コストに優れたコロイダル量子ドットを中心としたナノ粒子合成とディスプレイなどへの応用開発を進めてきた。両者は5年間で、量子ドットに関する科学技術の体系的な理解を深めるとともに、産業応用に資する基盤研究を進め、コロイダルナノ材料を基盤とした新たな産業領域の創出に貢献するとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001922.000033034.html
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