
NTTドコモビジネス、東芝、NECの3社は2026年6月30日、東名阪の三大都市圏を結ぶ約600kmの広域量子暗号通信ネットワークの構築を開始すると発表した。総務省と情報通信研究機構(NICT)が進める量子鍵配送の社会実装に向けた取り組みの一環で、3社によると国内初の規模となる。構築後に量子鍵配送の実証実験を行い、医療や金融、電力業界などでの社会実装を見据えた検証を進める。
量子鍵配送(QKD)は、量子力学の原理を使い、通信相手の間で暗号鍵を安全に共有する技術だ。計算能力に依存する従来の暗号とは異なり、理論上、盗聴を検知でき、鍵の複製を防ぐ機能を持つ。さらに、量子鍵配送と「ワンタイムパッド」と呼ぶ暗号方式を組み合わせることで、情報理論的に安全な量子暗号通信が実現する。
開発の背景には、暗号技術を取り巻く環境の変化がある。AIの進展やデータ活用が進む中で、重要データを組織や地域を横断して活用するニーズが高まる一方、量子コンピューターの発展により、安全性がコンピューターの性能に依存する既存の暗号技術は、暗号強度の低下が懸念されている。特に、現在の通信を盗聴・保存し、将来の量子コンピューターで解読する「Harvest Now, Decrypt Later(HNDL)」と呼ぶリスクへの対応は、国家安全保障や経済安全保障の観点から重要な課題となっている。
NICTはこれまで、東京圏に構築・運用してきた量子鍵配送ネットワークのテストベッド「Tokyo QKD Network」を活用した技術実証を実施してきた。今回の実証では、この取り組みを東名阪へ大幅に拡張し、国内最大の広域量子暗号通信ネットワークを整備する。長距離環境での量子暗号通信の性能や安定性、安全性に加え、実運用を見据えた運用のしやすさを検証する。
実証では、量子セキュアクラウドの技術も活用する。これは、量子鍵配送ネットワーク上に、データを複数に分割して分散保管する秘密分散の仕組みを使った分散ストレージなどを構築し、機密性の高いデータの安全な伝送・保管・利活用を実現する技術だ。秘密分散では、一定数未満のデータが漏れても元のデータの情報は得られない情報理論的安全性を持つ。
各社の役割として、NTTドコモビジネスが実証全体の統括とネットワークなどの提供を担い、東芝とNECがそれぞれ量子鍵配送装置の提供とネットワーク構築、技術検証を担う。3社に加え、エクシオグループなど5社とも連携して進める。さまざまな業界のユーザーが参画し、機密性の高いデータの広域流通や組織横断的なデータ連携の実現可能性を検証する。
3社は今後、総務省が掲げる2030年の量子鍵配送ネットワークの社会実装に向け、参画するユーザーなどとともに検討・検証を進めるとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001382.000078149.html
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