
DUNLOP(住友ゴム工業)と富士通は2026年6月3日、タイヤの性能をAIで高精度かつ短時間に予測する技術「AIサロゲートモデル」を共同開発し、タイヤ構造解析の実証実験で解析時間を従来の約45分から約5分へと約90%短縮したと発表した。約60万要素(メッシュ)規模の解析を実現している。両社は本成果をもとにタイヤ設計の開発支援ツールの開発を進め、DUNLOPにおいて2027年4月の実用開始を目指す。
ものづくり現場では、製品や構造物の挙動をシミュレーションして性能や安全性を評価するCAE(Computer Aided Engineering)解析が、製品の高性能化・複雑化に伴い多大な解析時間を費やしている。タイヤ設計ではCAE解析手法の一つであるFEM(有限要素法)解析が用いられる。メッシュを細かくして要素数を増やすと精度は向上するが、計算時間や開発コストが増加するため、精度と計算負荷のバランスが求められる。加えて解析には専門知識が必要で、熟練技術者の確保も課題となっていた。
両社はこの課題に対し、過去から蓄積されてきたFEM解析結果を学習データとして、FEMの基礎方程式の解を高速に予測する技術「AIサロゲートモデル」を開発した。グラフ構造データ(メッシュ等)を直接扱えるグラフニューラルネットワーク(GNN)のアルゴリズムをベースとしており、DUNLOPのタイヤ設計のノウハウや実設計データと富士通のAI技術を組み合わせている。
実証実験では、タイヤの路面接地時における接地形状や接地圧分布など、変形挙動や接地特性の評価を対象とした。その結果、従来FEM解析で約45分を要していた解析を約5分での近似解析で実現し、FEM解析と比較してタイヤと路面の接地形状を平均87.7%の精度で予測した。これにより、従来は複数の設計プロセスを経て決められていたタイヤの構造や材料の仕様を、より少ないプロセスで短時間に決定できるようになる。
本技術は、富士通が開発するArmベースの次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」での動作を前提に設計されている。両社は本技術をベースに「FUJITSU-MONAKA」検証機での実証を2026年12月までに開始し、推論速度・精度および電力効率の最適化を目指す。さらにタイヤ構造解析の適用範囲を拡大し、専門知識がなくても設計者が直接利用できる設計開発支援ツールとしての開発を進める。
富士通は本取り組みをもとに、自動車産業をはじめとする製造業における大規模FEM解析への横展開を推進し、「FUJITSU-MONAKA」とGNNを組み合わせたAI推論プラットフォームの開発と、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」上での提供を計画している。DUNLOPは長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」のもと、独自のゴム・解析技術力をさらに進化させるとしている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000576.000093942.html
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