
コスモ石油・京都大学・アイ’エムセップ・住友重機械工業・SECカーボンの産学5者は2026年5月22日、溶融塩電解技術を用いたCO2由来固体炭素製造について、炭素年産数十kg規模のベンチスケール装置による検証を開始したと発表した。コスモエネルギーグループが京都大学・アイ’エムセップと進めてきた共同研究の成果を基盤に、装置設計から炭素材料評価・用途検討まで産業化を見据えた体制に拡充した。
本技術の最大の特長は「クリーン水素が不要」な点だ。CO2を固体炭素に変換するCCU(CO2回収・有効利用)技術の多くは、合成メタンやe-fuelなどCO2と水素の化学反応を介する。一方、溶融塩電解技術は高温の溶融塩(塩化物や炭酸塩)中に溶解したCO2を、電気エネルギーだけで直接固体炭素に還元できる。製造コストで最大の変動要因となるクリーン水素のコストを回避できるため、再生可能エネルギーと組み合わせた際の経済性が他のCCU技術より優位になりやすい。
生成される炭素材料(グラファイト・カーボンナノ材料等)は、リチウムイオン電池負極材・アルミニウム製錬用電極・次世代エネルギー関連分野で不可欠な素材だ。現在、高品質グラファイトの製造・供給は特定地域への集中が指摘されており、経済安全保障の観点で国産・多様化の需要が高まっている。CO2を原料とした国産炭素材料の製造が実用化されれば、脱炭素とサプライチェーンの安定化という二つの課題を同時に解決できる。
5者の役割分担は明確だ。コスモ石油が技術の事業化主導とCO2供給を担い、京都大学が溶融塩化学・電気化学の学術知見を提供する。アイ’エムセップが溶融塩電解技術の核心を担い、住友重機械がエネルギープラント・化学プロセス機器の知見を活かして装置設計・建設・運転評価を行う。SECカーボンが人造黒鉛電極製造の知見を活かして炭素材料の評価と材料化を担当する。サプライチェーン全体を一気通貫でカバーする産学連携の構成は、ラボスケールから社会実装への橋渡しを意識した設計だ。
溶融塩電解によるCO2固体炭素化は世界的にも研究フェーズにある技術で、ベンチスケールへの拡大は社会実装への重要な前進となる。CO2を「排出物」から「産業原料」へと転換するこのアプローチは、エネルギー産業の脱炭素化と素材産業の競争力強化を同時に目指す方向性として、今後の進展が注目される。
本取り組みにおけるベンチスケール装置(炭素年産数十kg規模)は、将来の商用スケールに向けたプロセス設計と材料評価のデータを蓄積するための第一段階だ。住友重機械のプラント設計力とSECカーボンの炭素材製造ノウハウが加わったことで、装置としての堅牢性と材料品質の両面から実用化への課題を体系的に洗い出す体制が整った。日本の化学・エネルギー企業が国産CCU技術を独自に育てようとする取り組みの一つとして、国際的な技術競争の中でどこまで差別化を確立できるかが問われる。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000311.000098598.html
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