
京都フュージョニアリング(KF)は2026年10月7日、大同特殊鋼とフュージョン(核融合)炉のブランケット構造材向けに、低放射化バナジウム合金の製造技術確立に向けた共同開発を始めたと発表した。両社はすでに累計200kgの高純度低放射化バナジウム合金の溶解と、鍛造材丸棒・板形状加工材の製造に成功している。現在は加工材製造までの一貫プロセスの確立に向けた検証を進めており、今後はブランケットモックアップの製作に移る。
バナジウム合金でブランケット構造材の選択肢を広げる
構造材には複数の候補がある。現在は低放射化フェライト鋼(RAFM)などの研究開発が進む。その中で低放射化バナジウム合金は、約700℃の高温環境での強度耐性と、液体リチウムやFLiBe(フッ化リチウムとフッ化ベリリウムの溶融塩)といった冷却材・トリチウム増殖材との適合性から、次世代の構造材として世界的に関心が集まっている。
課題は製造にあった。フュージョン用途に求められる極低不純物レベルの高純度バナジウム合金は、溶解・鍛造に高度な製造技術を要する。実用規模での製造事例は世界的にも限られていた。
KFはこれまで、核融合科学研究所(NIFS)の長坂琢也教授の研究グループとの共同研究を通じて、フュージョンエネルギープラント向け材料に求められる要求仕様や評価手法の知見を蓄積してきた。長坂教授は本分野の研究開発を長年牽引してきた研究者だ。今回、高度な金属材料製造技術を持つ大同特殊鋼と組むことで、研究レベルにとどまっていた高純度バナジウム合金の実用規模での製造へ踏み出す。
2027年にはブランケットモックアップの製作を開始
共同開発では、大同特殊鋼が特殊鋼や各種合金の開発・製造で培ってきた技術を基盤とする。これにKFが持つフュージョンエネルギープラントの設計および材料仕様策定の知見を組み合わせ、実用規模での製造プロセス確立を目指す。
具体的には、バナジウム合金による板材・丸棒などの加工材製造までの一貫プロセスを検証している。2026年8月現在、同プロセスを経た初期加工材が完成した。丸棒7.3kg、加工材2.6kgで、丸棒はΦ45×750L、加工材は220×250×7.8tの寸法となる。今後KFへ計約70kgを納品する予定だ。KFはこれらの材料を加工・接合し、2027年を目途にブランケットモックアップの製作を始める計画を掲げる。モックアップは、実機に近い形で作る試作模型を指す。
フュージョン炉の構造材には、バナジウム合金のほか、KFが独自に開発を進めるSiCf/SiC複合材料など複数のアプローチがある。今回の成果により、同社がブランケット開発で持つ技術的選択肢が一つ増える形となる。
KFは今後も、日本企業が持つ素材製作・加工技術と連携し、民間企業同士の協力によるフュージョンサプライチェーンと産業エコシステムの形成に取り組むとしている。
京都フュージョニアリングは2019年10月設立で、東京都大田区に本社を置く。大同特殊鋼は1916年の創業で、名古屋市東区に本社を構え、特殊鋼を中心とした高機能素材を自動車、産業機械、エネルギー、航空機、医療、デジタルデバイスなどへ提供している。同社は2026中期経営計画で、2050年カーボンニュートラルの達成を重点施策の一つに掲げ、クリーンエネルギー分野を重点ターゲットに位置付けている。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000061.000072520.html
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