
三菱電機は2026年8月31日、マイクで収音した混合音から音源の種類を指定して目的の音を分離、抽出する処理を単一のAIモデルで担う「タスク汎用音源分離技術」を開発したと発表した。米国現地法人のMitsubishi Electric Research Laboratories(MERL)との共同開発による。2027年度中のフィジカルAIへの実装を目指す。
プロンプトで指定した音だけを抜き出す
タスク汎用音源分離技術とは、複数話者の声を分ける「音声分離」、音声とノイズを分ける「音声強調」、異なる機械音を分ける「機械音分離」といった複数の音源分離タスクを、単一のAIモデルで処理する技術である。
製造現場や公共空間では、機械音や人の声が周囲のノイズに埋もれ、AIによる異常検知や音声操作、現場状況の把握が難しくなる場面がある。従来は分離対象や用途ごとに個別の音源分離モデルを開発する必要があり、現場ごとに異なる音環境や利用目的に柔軟に対応できないことが課題だった。
開発した技術では、分離したい音の種類や数をプロンプトで指定する手法を新たに採用した。会話や機械の稼働音、環境音、音楽などが混在する中から、現場の状況に応じて必要な音声や機械の異常音、アラーム音を抽出できる。音声、環境音、音楽を対象とする主要な音源分離タスクを、用途ごとの個別モデルではなく一つのモデルで実行する。
エッジデバイスへの実装を想定、音をトークン化してLLMに直接入力
実装面では2つの技術で制約を緩めた。1つは演算量を削減する高速化技術で、エッジデバイスやロボット、監視システム、設備機器など計算リソースに制約のある機器への実装ができる。工場やオフィスビル、公共施設といった現場への導入を想定する。もう1つはマイクの本数に依存せず単一のAIモデルで音源分離する技術で、多様な入力デバイスに対応する。

分離、抽出した音は、異常検知や音声認識、音声操作、現場記録といったAIシステムの推論に使う。推論精度が上がることで複雑な現場理解につながり、フィジカルAIを導入したシステムの信頼性向上に寄与する。
加えて、音源の種類に応じて符号化するコーデック技術も開発した。プロンプトで指定した音源ごとに分離された圧縮表現を推定するもので、音をトークン化して大規模言語モデルへ直接入力できる。AIエージェントの状況理解や判断に聴覚機能を付与する用途を見込む。
一連の技術は国際会議のICASSP 2025、WASPAA 2025、ICASSP 2026にそれぞれ採録されている。今後は2027年度中のフィジカルAIへの実装とその他の製品への適用を目指し、さらなる高速化と高精度化を進めるとともに、工場やオフィスビル、公共施設などで実証を進める。同社のデジタル基盤「Serendie」と連携させ、現場の音を起点としたデータ活用も促す。
本技術は幕張メッセで2026年10月13日から16日まで開かれる「CEATEC 2026」に出展する。工場の機械音や楽器の音、複数人の声を同時に収音して分離、抽出するデモンストレーションを通じ、音声認識や異常音診断への活用を示す。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000441.000120285.html
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