
東レリサーチセンター(TRC)は2026年8月25日、光通信に使う半導体材料やシリコンフォトニクス関連材料を対象に、近赤外光の発光特性をナノメートルスケールで評価する受託分析サービスを開始した。従来の可視光領域に加えて900〜1600ナノメートルの近赤外領域に対応し、光通信波長帯の1300ナノメートル帯と1550ナノメートル帯を含む発光解析ができる。
発光位置と微細構造を同一試料で対応付け
シリコンフォトニクスとは、半導体製造技術を用いてシリコン基板上に光信号を伝送、制御する微細な光回路を形成する技術である。高速・大容量通信と低消費電力化を支える基盤技術として、データセンターや光通信分野で採用が広がっている。
生成AIの普及とデータセンターの増設に伴い、大容量の情報を高速かつ低消費電力で伝送する技術への需要が高まっている。その中核を担う光通信デバイスでは発光性能の向上や品質確保が課題となるが、デバイス内部の発光は数十から数百ナノメートルという微小な領域で生じるため、発光状態を詳しく調べることは容易ではない。発光効率の低下や発光波長のずれ、不良発生の原因を突き止めるには、発光特性だけでなく材料の構造や元素組成との関係まで解析する必要がある。
TRCはこれまで、走査透過型電子顕微鏡(STEM)とカソードルミネッセンス(CL)法を組み合わせたSTEM-CL法で、主に可視光領域の発光解析を担ってきた。今回、近赤外用のInGaAs検出器と液体ヘリウムなどを用いるクライオ(低温)測定機能を導入し、光通信波長帯を含む近赤外領域まで検出波長範囲を広げた。STEM観察とCL分析の組み合わせにより、発光位置と微細構造を同一試料の同一領域で対応付けて解析でき、元素分析と組み合わせれば発光特性の起源となる構造や組成を特定できる。
レーザーダイオードで機能層ごとの発光を分離

分析事例として2件を公開した。市販の近赤外用レーザーダイオードの断面を対象にした解析では、発光層で1200ナノメートル付近に明瞭な発光ピークを確認し、レーザー発振に関わる活性層由来の発光と推察した。一方、発光層の周囲に配置された光閉じ込め層では970ナノメートル付近に異なる発光ピークを観測した。デバイス内部の各機能層からの発光をナノメートルレベルで空間的に分離して検出できることを示す結果となる。
シリコン結晶を対象とした評価では、低温測定によって室温では検出が難しい微弱な近赤外発光を観測した。液体ヘリウムによる冷却条件下で、1160ナノメートル付近のSiバンド端発光(TO線)に加え、1300ナノメートル付近と1400ナノメートル付近の転位関連発光(D3線、D2線)を確認した。シリコン材料中の結晶欠陥や構造変化を評価する手段となる。
想定する活用場面は、光デバイスの性能向上、発光波長のばらつき要因の解析、発光不良や性能低下の原因究明、シリコンフォトニクス材料の評価、品質向上および信頼性向上などである。TRCは今後、光通信デバイスやシリコンフォトニクス、次世代半導体材料分野に向けた分析サービスを拡充し、STEM-CL法をはじめとする先端分析技術を組み合わせた総合解析を高度化する。同社は1978年6月設立で、資本金は2億5000万円である。
関連情報
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000172881.html
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